地球温暖化の要因となっているCO2(二酸化炭素)。中でも、私たちの家庭から排出されるCO2量は年々増加傾向にあり、そのうち、通勤・通学・買い物・旅行といった「移動」に伴う排出量が4分の1を占めています(1世帯当たりの割合)。こうした状況において、普段から利用している様々な移動手段を工夫してCO2排出量を削減しようという取組「スマートムーブ」が全国各地に広がっています。CO2を減らすだけでなく、体を動かすことで健康や快適さにもつながる「スマートムーブ」。皆さんも始めてみませんか。
我が国におけるCO2排出量のうち、家庭部門からの排出量はこの20年間で6割近くも増加しています(グラフ(1)参照)。
中でも「自動車」からの排出量は、1世帯当たりで見ると「照明・家電製品など」に次いで2番目に多く、全体の4分の1を占めています(グラフ(2)参照)。そのため、この自動車という「移動」手段を見直すことは、CO2排出抑制・地球温暖化防止に大きな意味があるのです。
グラフ(1):家庭部門の年間CO2排出量推移 |
グラフ(2):家庭からの二酸化炭素排出量(世帯当たり・用途別内訳) |
(出典:独立行政法人国立環境研究所「2012年度(平成24年度)の温室効果ガス排出量(速報値)[PDF]」) | (出典:温室効果ガスインベントリオフィス/全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト資料をもとに作成) |
(画像:環境省)
そこで環境省では、CO2排出の少ない移動にチャレンジしてもらうため、「移動」を「エコに」を合言葉に、エコで賢い移動方法を選択するライフスタイルを「smart move(スマートムーブ)」と名付け、その取組を推奨しています。
「スマートムーブ」が推進する5つの取組
- 公共交通機関の利用
- 自転車、徒歩での移動
- 自動車の利用を工夫
- 長距離移動の工夫
- 移動・交通におけるCO2削減の取組に参加
(画像:政府インターネットテレビより引用)
「スマートムーブ」の実践はCO2排出の抑制だけでなく、自身の健康づくりにも効果的です。さらに、これまでとは違う移動方法によって、街中のちょっとした自然や新しいお店・道など、今まで気付かなかった様々な楽しみが発見できるかもしれません。
メリット1 環境にいい
1km移動する際の1人あたりのCO2排出量は、移動手段によって異なります(グラフ参照)。CO2の排出など環境への負荷を考慮して、例えば、公共交通機関が発達している地域では公共交通機関や徒歩の積極的な利用、そうでない地域では自動車の利用方法を工夫するなど、様々な手段から最適な移動方法を見つけてみませんか。
メリット2 カラダにいい
普段の生活、または旅行先での移動手段を徒歩や自転車に替えれば、自身の健康づくりにつながるだけでなく、自動車での移動では気付かないような景色や、仲間と一緒に運動を楽しむ、といった新たな発見ができるかもしれません。
メリット3 快適・便利
渋滞に巻き込まれる、空いている駐車場を探す、などによって予想以上に時間がかかることもある自動車に比べて、公共交通機関での移動は目的地への到着時間が計算しやすく、予定がたてやすいという利点があります。
また、近距離移動の際も、公共交通機関や自転車などのほうが意外に早くて快適だったりして、これまで気付かなかった便利さに気付いたりすることも。
身近な取組として、まずは毎日の通勤や通学、買い物などのちょっとした外出方法を見直してみませんか。マイカーをお持ちの方は、少しの移動距離でも利用するケースがあるかもしれません。特に、電車やバスなどの運行が少ない地域では不可欠な移動手段となっているケースもありますが、自動車の過度な利用はCO2排出の増加だけでなく、体を動かす機会が減って運動不足に陥ってしまうおそれもあります。そこで、「スマートムーブ」では次の5つの具体的取組を推奨しています。
(1)電車やバスなどの公共交通機関を利用
通勤や通学、旅行やちょっとした外出において、電車やバスなどの利用を心がけてみましょう。駅の階段の上り下りや駅までの徒歩移動などは適度な運動にもなります。さらに、日本の公共交通機関は世界に誇れるほど運行時間がほぼ正確なため計画がたてやすいという利便性もあります。
また、最近ではハイブリッドバス(※1)やLRT(※2)、太陽光エネルギーなどを活用した車両など環境負荷が少ない公共交通を導入するなどの取組が全国各地で広がっています。
※1:複数の動力源を組み合わせ、それぞれの利点を活かして駆動することにより、低燃費と低排出ガスを実現する自動車。エンジンの効率低下を招く要因と不足する走行性能をモーターで代替もしくは補助して走行するとともに、減速、制動時の回生エネルギーを回収し、駆動用エネルギーとして再利用することで、低燃費と低排出ガスの実現を図る。
詳しくはこちら
環境省「低公害車ガイドブック2013」
※2:LRT:Light Rail Transit(次世代型路面電車システム)の略。低床の路面電車などを活用した新しい交通システムのことで、乗降時の段差解消によるバリアフリー化や、交通渋滞の緩和・排ガスの抑制効果が期待されている。
詳しくはこちら
国土交通省「LRT(次世代型路面電車システム)の導入支援」
(2)徒歩、自転車での移動
最近は、「健康や環境にいい」「快適・便利」「かっこいい」移動手段として、自転車の人気が高まっています。
特に、渋滞が起こりやすい都市中心部や最寄り駅までの移動や乗換えの駅間の移動の際に、徒歩や自転車を積極的に活用すれば、利便性向上につながる場合もあります。
(3)自動車の使い方を工夫
「エコドライブ」の実践や、エコカーの積極的な活用など、CO2の排出を減らすための自動車の使い方の工夫があります。
- エコドライブの心がけ
環境省では自動車運転の際、ふんわりアクセルやアイドリングストップなどの「エコドライブ」の普及促進を図るために「エコドライバープロジェクト」を進めており、その実践方法として環境にやさしい「エコドライブ10のすすめ」を紹介しています。
- エコカーの利用
最近では、ハイブリッド車や電気自動車をはじめとする様々な種類のエコカーが登場しています。エコカーへの乗換えによってCO2排出の大幅削減が可能であるほか、従来のガソリン車と比べて燃費効率も高いことから、ランニングコストが節約できるのも魅力です。
なお、エコカーの利用方法には、マイカーとして購入以外にも、カーシェアリングやレンタカーといったサービスがあります。
(4)長距離移動の工夫
旅行や出張、帰省などの長距離移動においても、エコ旅行、エコ出張などCO2削減する方法がたくさんあります。例えば、目的地への移動には新幹線や特急電車などを活用、旅行先での移動手段は自転車やバス、電車を利用する観光ツアーの選択、といったことなどです。ほかにも最近では、飛行機の利用時に排出されるCO2を、別の手段で埋め合わせる「カーボンオフセット」という考え方も登場しています。
(5)移動・交通におけるCO2削減の取組に参加
近隣の人と同じ車をシェアして必要な時だけ使う「カーシェアリング」や、街中を共用の自転車でスムーズに移動できる「コミュニティサイクル」といった取組に参加する方法もあります。
*(1)~(5)のイラストはすべて環境省
人にもやさしい自転車に! 交通ルール&マナーを守ろう
自転車は手軽な乗り物である一方、路上や歩道での違法駐輪や、猛スピードでの歩道走行といった交通マナーの悪さが指摘されており、自転車利用者が加害者となる交通事故も増加しています。道路交通法では自転車は「車両」扱いとなっており、決められた下記の交通ルールを守って、人にやさしい運転を心がけましょう。
自転車安全利用5則
(1)自転車は、車道が原則、歩道は例外
(2)車道は左側を通行
(3)歩道は歩行者優先で、車道寄りを徐行
(4)安全ルールを守る(飲酒運転・二人乗り・併進禁止、信号の遵守など)
(5)子どもはヘルメットを着用
地域の特性に合った様々な形態の「スマートムーブ」が全国各地で実践されています。そのうちの一部をご紹介します。
事例(1)京都府京都市「歩くまち・京都」
平成22年1月に「歩くまち・京都」憲章を制定した同市では、「人が主役の魅力あるまちづくり」を推進。人と公共交通優先の「歩いて楽しいまち」の実現に向け、公共交通ネットワークの整備や、快適な歩行空間の拡大・充実といった様々な取組を実施しています。
事例(2)和歌山県和歌山市「城まちeco観光レンタサイクル」
同市では新しい公共交通システム「コミュニティサイクル(※)」として、自転車(電動アシスト自転車・普通自転車・スポーツタイプ 計110台)をレンタルして市内観光地を巡ることができる「城まち eco 観光レンタサイクル」を実施中です。自転車は市内12か所にある貸し出しポイントで借りて、別のポイントで返却することができます。この取組は平成22年7月からスタートしており、今では延べ貸出台数が年間8,000台を超えています(平成25年4月~26年1月までの10か月間の累計)。
※借りた場所だけでなく、別の場所でも返却ができる、環境にやさしく健康にも良い自転車を使った新しい公共交通システム。コミュニティサイクルは全国各地で普及が進んでいるほか、パリやバルセロナといった海外の都市でも導入済。
(写真・イラスト:和歌山県和歌山市)
事例(3)神奈川県鎌倉市「パーク&ライド/パーク&レールライド」
市内の交通渋滞緩和を図るため、江ノ島電鉄株式会社では、マイカーを駅周辺の駐車場に停めて(Park)、電車やバスへの乗り換え(Ride)を促す取組を平成13年4月から行っており、今では沿線4か所において、一部時期を除いて毎日実施中です(平成26年2月現在)。年間の利用車数は約1万5千台(平成24年度)で、4年前に比べて約3割も増え、着実に地域住民や観光客の間で定着してきています。
(写真:江ノ島電鉄株式会社)
最近では公共交通機関や自転車・徒歩だけでなく、次世代型の乗り物を利用した「スマートムーブ」も実践されています。
事例(1)茨城県つくば市「セグウェイシティツアーinつくば」
操作しやすく、排気ガスも出さない環境にやさしい新しい移動手段として、テーマパークや公園、大型商業施設などで導入されている電動立ち乗り2輪車「セグウェイ」。日本ではまだ公道での利用はできませんが、「モビリティロボット実験特区」の認定を受けている同市では、セグウェイの公道走行を可能とする実証実験を平成24年から実施しています。その一環として、市内の街並みや名所を散策できるセグウェイシティツアーを実施中です(実証実験を経て、平成26年4月から本格運用)。
(写真:茨城県つくば市)
- 詳しくはこちら
セグウェイシティツアーinつくば
事例(2)神奈川県横浜市「チョイモビ ヨコハマ」
同市には、日産自動車株式会社との協働によって、国内初となる、超小型電気自動車を「ちょこっと借りて、さくっと好きな場所で返せる“ワンウェイ型カーシェアリング”」の実証実験「チョイモビ ヨコハマ」を平成25年10月から実施中です(1年間)。横浜駅・みなとみらい・関内を中心とした70箇所のカーステーションに、計100台の超小型電気自動車「日産ニューモビリティコンセプト」が配備されています(設置箇所・台数は予定)。ちなみに、日本でガソリン車の代わりに電気自動車を導入すると、CO2排出量を約半分に削減できるといわれています(※)。
※出典:国立環境研究所[PDF]
(写真:横浜市記者発表資料より)
事例(3)富山県富山市「富山ライトレール」
同市では平成18年4月に、日本で初めて次世代型路面電車システム(LRT)(前述)が本格的に導入されました(車両愛称は「ポートラム」)。公共交通の沿線に居住・商業・業務などの都市の諸機能を集積させて、自動車がなくても安心して生活できる「コンパクトシティ」の構築を目指しています。利用客数は年間延べ200万人近くまで達しており(※平成24年)、今では市民にとって欠かせない“足”になっています。
※出典:富山ライトレール株式会社「平成24年度事業報告」
(写真:富山ライトレール)
今回ご紹介した事例は一部であり、お住まいの地域でも「スマートムーブ」が実施されているかもしれません。これを機にぜひ、身近な取組を知ってみてはいかがでしょう。
環境省が行った調査によると、既に実践している、または今後実践したい「スマートムーブ」の取組としては、主に「できるだけ徒歩や自転車を利用」「エコドライブの実践」「公共交通機関の利用」の順にあげられています。
地球環境にやさしいだけでなく健康的な生活にもつながる「スマートムーブ」、早速始めてみませんか。
エコドライブ10のすすめ
(1)ふんわりアクセル「eスタート」
発進するときは、穏やかにアクセルを踏んで発進を。目安はブレーキから足を離してから最初の5秒で、時速20km程度になるように(10%程度の燃費改善効果)。
(2)車間距離にゆとりをもって、加速・減速の少ない運転~
車間距離を保って、一定速度での走行を(ムダな加速・減速によって、市街地では2%程度、郊外では6%程度も燃費悪化)。
(3)減速時は早めにアクセルを離そう
交差点などで停止することに気付いたら、早めにアクセルから足を離してエンジンブレーキの作動を(2%程度の燃費改善効果)。
(4)エアコンの使用は適切に
エアコンは車内を冷却・除湿する機能のため、暖房使用時にはエアコンスイッチをOFFに(車内の温度設定を外気と同じ25℃設定の場合、エアコンスイッチがONだと12%程度も燃費が悪化)。
(5)ムダなアイドリングはやめよう
待ち合わせや荷物の積み下ろしなどで駐停車※する際は、アイドリングストップを(10分間のアイドリング(エアコンOFF時)で、130cc程度の燃料消費)。
※交差点では事故の危険もあるため注意しましょう。
(6)渋滞を避け、余裕をもって出発しよう
外出時には渋滞・交通規制などの情報や、地図・カーナビなどで行き先やルートを事前に確認して、時間に余裕をもって出発を(1時間のドライブで道に迷い、10分間余計に走行すると17%程度も燃費悪化)。
(7)タイヤの空気圧から始める点検・整備
タイヤの空気圧チェックを習慣づけ(適正値より空気圧が不足すると、市街地で2%程度、郊外で4%程度の燃費悪化)
(8)不要な荷物はおろそう
運ぶ必要のない荷物は車から降ろすこと(100kgの荷物を載せて走行すると、3%程度の燃費悪化)。
(9)走行の妨げとなる駐車はやめよう
交差点付近などの交通の妨げになる場所での迷惑駐車は、渋滞の原因になるので止めること。
(10)自分の燃費を把握しよう
日々のマイカーの燃費を把握すれば、エコドライブ効果を実感できる。
(資料:環境省「エコドライブ10のすすめ」/イラスト:環境省)
<取材協力:環境省 文責:政府広報オンライン>
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