全国各地の鮮魚を、ITを駆使して飲食店に販売するベンチャー企業「八面六臂」が目指すのは「鮮魚流通のアマゾン」。独自アプリを開発して産地と飲食店との間の流通コストを削減、売り手都合だった鮮魚流通を買い手都合に変えて、契約飲食店を急速に増やしている。しかし「鮮魚改革は序章」。松田雅也社長が描く「その次の形」を聞いた。
(聞き手は坂巻正伸)
八面六臂とは、どんな会社ですか。
松田:全国各地で獲れた鮮魚を、独自のITと物流のシステムを使って飲食店に販売・納品しています。アマゾン・ドット・コムの鮮魚版のようなサービスを標榜しています。
鮮魚流通のアマゾンに
これまでの鮮魚流通との違いは?
松田:従来の鮮魚の発注は、その多くがファクスや電話で行われていました。扱える品数は自ずと限られ、情報の更新も円滑には行かなかった。対して弊社は「八面六臂アプリ」という鮮魚取引専用のシステムを開発してそれをiPadに組み込み、契約飲食店に無償貸与しています。これにより、数千種類の食材を適宜、情報更新しながら提供できる。契約した飲食店が翌日必要な商品をアプリ上で選ぶと、我々が契約先の漁師や市場から商品を調達して届けます。2011年にサービスの提供を始め、現在500店以上の飲食店と契約しており、2014年中には1000店突破を見込んでいます。
情報化が遅れた業態にITを持ち込んだわけですね。
松田:魚を生で食べられる状態で全国から集荷・取引する鮮魚市場の仕組みは既にあって、これは優れたシステムです。そもそも、かつては魚が生食可能な状態で届くことがすごかった。そんな中では「今日は時化で魚が獲れなかった」と言えば「それじゃ仕方ないね」となる。「たくさん獲れなかったから高くなる」のも仕方がないとされてきた。つまり、売り手都合で取引が成り立っていました。しかし、商売の基本は買い手都合。それに対応できていない業態だったわけです。そして鮮魚流通は、漁師から産地市場、築地市場、卸業者を経て飲食店に届くまでの工程が長く、無駄なコストがかさんでいた。そこをITによって効率化できれば、大きなビジネスチャンスがあると考えました。