松井知事:大阪地下鉄を上場の意向、6000億円超-民営化で経済再生
4月14日(ブルームバーグ):大阪府の松井一郎知事は、6000億円以上の事業価値を持つ大阪市営地下鉄の民営化策として、株式を上場させる意向を明らかにした。民間投資を促して経済活性化を図るとともに、上場で得た資金を債務削減にも振り向ける。地盤沈下する大阪経済を立て直し、東京都を追い上げる戦略の一環だ。
松井知事はブルームバーグとの8日のインタビューで、市営地下鉄民営化について、橋下徹大阪市長とともに「任期中のあと1年9カ月の間で形を作りたい」と発言。地下鉄を株式会社化した上で上場させる考えを明らかにした。民間への株式売却案も検討するという。両氏は、府と市の二重行政解消に向けて、大阪都構想を進めている。
両氏の属する大阪維新の会はマニフェストで、公共交通の民営化のほか、国が解禁を検討するカジノ誘致や規制緩和で国内外から企業や投資家、観光客を呼び込む方針を打ち出している。大阪経済をプラス成長に引き上げ、民営化で得た資金を元手に公的債務の一段の削減にも踏み込む構えだ。一連の経済改革の一環として、市は昨年5月に地下鉄事業民営化基本プランを策定、具体化に動き出した。
同知事は、公共サービスの民営化を加速する背景について「ストックを売却すれば、新たな路線にも投資できる」とし、売却益を交通インフラの再整備などに充てる考えを示した。現状では約1時間かかる中心部と新関西国際空港間を38分まで短縮できる「なにわ筋線」を含め、4新線建設(総事業規模5500億円)などインフラ投資を検討している。
日本地下鉄協会によると、完全民営化を目指す東京メトロと並び、大阪市営地下鉄の民営化は2例目となり、市交通局の試算では事業価値は6000億円強。年間輸送人員は8億5974万人で、東京メトロの約3分の1の規模だ(同協会調べ)。
地方選の争点にも地下鉄民営化には市議会の3分の2の同意が必要だが、大阪市議会事務局によると、全86議席のうち、与党・大阪維新の会は32議席と半分に満たない。松井知事は、野党は「市場経済について非常に理解が低い」とし、同意が得られない場合は、来年の「統一地方選挙の争点になる」と述べた。
同知事は、民営化すればサービスの向上や運賃値下げさえも可能だと主張。選挙を経て議会勢力が変わり、「民意を無視することはできなくなるだろう」と、民営化実現に自信を見せた。
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更新日時: 2014/04/14 00:01 JST