経済的独立を目指して

経済的独立なくして真の自由は得られない

人はいったん所有したものに法外な価値を感じる

ある生産活動を中止することによって生ずる回収不能の投資費用のことを「サンクコスト」といいます。
大型プロジェクトのリーダーや経営者の中には、事業継続が得策じゃないことが見えてきても、サンクコストが諦めきれずに事業を継続させ、損失を雪だるま式に増大させてしまうことがしばしばあります。
一定の投資をして所有したものに過剰な価値を認めてしまう心理作用を「所有効果」といいます。それが、人を損失の泥沼に転落させる正体です。
マーケットにおける相場の変動に対抗して、買い増し、売り増しをして損失を回復しようとすることや、損を平均化すること、暴落した株をいつまでも売ることが出来ずに損失を増やしていく悪循環も所有効果のなせる業なのです。
行動経済学研究の第一人者であるリチャード・セイラーは、コーネル大学経済学部の学生を対象にした実験でこの奇妙な心理を実証しています。
セイラーは、校章の描かれた特殊なマグカップを学生たちの半分に配り、オークションを開いて、マグカップを売る学生がどれほどの値を要求するか、それを買う学生がどれほどの値をつけるかを観察しました。
実験の結果、売る側の考える下限価格は平均5.25ドル、買う側の考える上限価格は2.75ドルだったそうです。
この実験結果が物語ることは、人はいったん所有したものに法外な価値を感じてしまうということです。
こうした心理に呪縛されているかぎり合理的な経済活動などできるはずもありません。
前述した赤字事業を継続してしまったり、暴落した株をいつまでも売ることが出来ずに損失を増やしていくなど、行動しないことによる損失を生み続けることになるのです。
このやっかいな心理の根底にあるのは、損失に対する過敏な嫌悪です。「損して得取れ」とはよくいったものですが、それを頭では分かっていても、目の前の損失を恐れるあまりに損を拡大させてしまうのが人間の悲しい性なのです。