宮崎亮
2014年4月13日08時45分
覚醒剤などの違法薬物の取引をめぐり、捜査当局と密売人のいたちごっこが続く大阪市西成区のあいりん地区で、タクシーを利用した密売が横行している。こうした薬物犯罪に歯止めをかけようと、大阪府警と大阪府、大阪市が5年計画の対策に乗り出した。
■あいりん地区、簡易宿へ迎車年300回
「デリバリー」(配達)
捜査当局の内部でこう呼ばれる手口がある。依頼人の指定場所まで赴き、直接やり取りする密売手法だ。
かつてあいりん地区付近の大通りでは密売人が10メートルおきに立っていると言われた。しかし、取り締まりの強化でデリバリーのような巧妙な手法に移行。その一つが簡易宿泊所を拠点にタクシーを利用する手口だ。
「とにかく何度も行く先を変えるんですわ」。元タクシー運転手の男性(53)は取材にこう証言する。
「なにわ筋の店へ行ってくれ」。男は乗り込むなりそう言い、到着すると「場所変えて」。捜査当局の尾行を恐れているのか、これを3~4回繰り返した末、あるファミリーレストランに着いた。すると女性がタクシーに乗り込み、男と小声で20秒ほどやりとりし、すぐに車で立ち去った。
男は問わず語りにこう言った。「あの女、名古屋からシャブ(覚醒剤)買いに来たんや」
薬物汚染はタクシー運転手をも巻き込む。密売人を客として乗せたがために覚醒剤に手を染め、近畿厚生局麻薬取締部に逮捕された運転手(64)もいる。
こうした状況を踏まえ、あるタクシー会社が2013年の配車記録を調べたところ、特定の簡易宿泊所の固定電話から年間約300件の配車依頼があった。同一の名前を名乗る一方で複数の携帯電話を使い分け、短時間に何度も配車を依頼するケースもあった。
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朝日新聞社会部
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