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「人は五感で感じないと感動しない」:アマナグループ CEO 進藤博信に訊く、ヴィジュアル・コミュニケーションの未来

六本木AXISビルの3階に、ギャラリー、ブックストア、カフェを併設した「IMA CONCEPT STORE(イマ コンセプト ストア)」がオープンしておよそ1カ月。ここは、広告やエディトリアルの世界ではその名を知らぬ者はいない写真ビジネス界の巨人「アマナ」が運営する、アートフォトの複合スペースである。多くの人が高性能カメラの付いたスマートフォンを持ち、Instagramやtumblerといった写真系SNSを使って気軽にイメージをシェアし合うこの時代に、果たしてアマナは、アートフォトにどのような存在意義を見いだしたのか。これからのヴィジュアル・コミュニケーション、そしてメディア・ブランディング……21世紀のヴィジュアル・ソリューション企業の目指す先を、CEO進藤博信に訊いた。

 
 
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TEXT BY TOMONARI COTANI
TOP IMAGE BY HIROMI FUJITA(fungus)

──IMA CONCEPT STOREは、写真専門誌『IMA』を核とする“IMAブランド”の世界観を体現する場だと理解しています。

そうですね。

──このIMAブランド自体は、アマナにとってどのような意味をもつ存在なのでしょうか?

IMAについての話をする前に、ひとつ、例を挙げてみたいと思います。

新人研修でアマナグループのヴィジョンを説明するときに、ぼくはいつも2枚の三輪車の写真を見せるんです。1枚は写真家のウィリアム・エグルストンが撮影したもの(写真下左)で、オークションで2,200万円の値段がついた写真。もう1枚はアマナイメージズの写真(写真下右)で、価格は3万円程度です。この2枚を何の説明もせずに見せて、「どっちの写真を部屋に飾りたい?」って訊くと、およそ80%の人が「後者を飾りたい」と言うんです。

──2,200万円の写真より、3万円の写真が選ばれるわけですか!

この違いは何だろうって思いますよね。みんながいいっていう写真が3万円で、片や、パッと見でいいとは思われない写真が2,200万円。なぜこんなことが起こるかというと、それは、いま風に言うと「コンテンツがコンテクスト化されている」からだとぼくは考えています。

──エグルストンの「三輪車」の場合、ニューヨーク近代美術館(MoMA)で最初に開催されたカラー写真の展覧会の、図録の表紙を飾った写真という歴史的な文脈がありますし、彼のほかの作品も、マーケットプライスが高騰しているという背景がありますね。

そういったコンテクストは人がつくり出していくもので、この先アマナは、コンテンツばかりではなく、コンテクストをつくり出していく仕事をもっと担うべきだと思っているんです。

アマナという会社を、ぼくは「ヴィジュアル・コミュニケーションの達人たちの集まり」だと捉えています。現在は、スマホから大きなデジタルディスプレイまでを対象に、コンテンツを提供する「達人集団」であることがアマナの存在価値となっているわけですが、今後は単品のコンテンツだけではなく、仕組み全体、つまりはコンテクスト化によるソリューションを提供していく達人集団になりたいと考えています。

──アマナが、コンテンツからコンテクストへと向かっていることは理解できました。では、そこにIMAブランドはどう絡んでいくのでしょうか?

われわれはヴィジュアルでコミュニケーションを図るわけですから、見る人の五感に訴えかけ、感動してもらう表現や仕組みを常に考えていかなければなりません。そのためのひとつの取り組みとして、アートフォトについてもっと知らなければならないと判断したんです。それが雑誌『IMA』の創刊につながり、コンセプトストアのオープンにまで発展しました。

──なぜアートフォトなんでしょう?

最近のコマーシャルフォトはつくり込みが過剰になり、どんどんつまらないものになっています。いわば、工業製品になってしまったと言えるでしょう。それでもちょっと前には、ドキュメンタリーという考え方が流行りましたけど、そのドキュメンタリーにしたって、「都合のいいドキュメンタリー」をつくらなければいけないから、どんどん修正して、結局はドキュメンタリーではなくなってしまいました。

そういった「キレイな写真」に、消費者は反応しなくなっています。心に引っかからない、要するにノイズがないわけです。フィルムの時代は、いかにノイズを排除して、100点満点の写真をつくるかっていうことに心血を注いだわけですが、デジタルの時代になってフィルター1枚でキレイな写真ができるようになったいま、感動してもらうためには、逆にノイズをいかに載せるかということが、ひとつのポイントになってきたのかなと思うんです。

その点アートフォトは、元々ノイズを孕んでいる表現だと言えるでしょう。そういったアートフォトがもつノイズ性に、まずはファッション業界が反応しました。次に反応するのは広告業界に違いないと、判断したんです。アーティストがクライアントにこびることなく撮った写真が、広告写真としてものすごく効果を生み出すような流れが遠からず来るはずだと。

──そして、さまざまな方向からアートフォト界との接点を得るための依り代として、IMAブランドが立ち上がったわけですね。

来たるべきそのときに向けて人脈を培い、人材を育て、マーケットを温めていく。その一方で、提案可能なソリューションを具体的につくり出すノウハウを、蓄積していく……。そんな、アマナグループの次なる一歩の実験プラットフォームとしてIMAは生まれ、機能しているんです。よく、「CSRの一環?」とか「社長の道楽なんでしょ?」と思われがちですが(笑)、実に戦略的な理由で、IMAブランドは動き始めたんです。

左は、エグルストンがMoMAで個展を開催した際に作成された図録。右は、アマナが所有するストックフォト。(c)SEED9/Masterfile/amanaimages

 
 
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