ウクライナ:親露派の占拠、小都市にも拡大

毎日新聞 2014年04月12日 23時40分(最終更新 04月13日 04時16分)

親露派に襲撃された検察庁舎を警備する治安部隊。12日早朝、約40人がなだれ込み、内部のドアや家具が破壊された=ウクライナ東部ドネツクで2014年4月12日午前10時35分、真野森作撮影
親露派に襲撃された検察庁舎を警備する治安部隊。12日早朝、約40人がなだれ込み、内部のドアや家具が破壊された=ウクライナ東部ドネツクで2014年4月12日午前10時35分、真野森作撮影

 【ドネツク(ウクライナ東部)真野森作】ウクライナ東部で親露派が行政機関を占拠する活動が中心都市にとどまらず小都市にも拡大している。ドネツク州では12日、武装集団が州都ドネツクを含め計5都市で警察庁舎などを占拠。治安機関が反政権側に寝返る事例も出始めており、11日にドネツク入りし妥協案を示したヤツェニュク首相ら新政権側の統制力がウクライナ東部で失われてきていることを露呈した形だ。

 州政府庁舎の占拠が続くドネツク市では12日午後、中心部の内務省・警察の州本部庁舎前に親露派の活動家や住民1000人近くがロシアや旧ソ連の国旗を持って集結。警察や特殊治安部隊に対し、自分たちの側に付くように呼び掛けた結果、警察側が建物の明け渡しに応じ、活動家らが庁舎を占拠した。

 現場に駆けつけた治安部隊の精鋭「ベルクト」の指揮官が「キエフの現政権の指示には従わないと決めた。市民に対峙(たいじ)することはない」と宣言すると、親露派の住民からは「ウラー(万歳!)」と歓声が上がった。

 タス通信によると、建物を取り囲んだ勢力には、2月の政変で退役したとみられるベルクトの元構成員50人近くも参加していたという。治安部隊が寝返ったとの報道を受け、新政権のトゥルチノフ大統領代行は州の治安対策責任者の解任を発表した。ドネツクでは同日早朝、検察庁舎も親露派の活動家により襲撃された。

 ドネツク州北部のスラビャンスクでも12日朝、5人程度の武装した迷彩服姿の男たちが空に向けて威嚇射撃をした後、警察庁舎を襲撃し、占拠した。ロイター通信によると、武装集団は拳銃400丁と自動小銃20丁を強奪したという。治安機関「保安庁」の庁舎も約20人の武装勢力に占拠されたと報じられている。

 新政権のアバコフ内相はフェイスブックでスラビャンスクの事態に対し「テロリストと反政権活動家にどんな違いがあるのか。厳重に対処する」と表明。既に特殊部隊を派遣したという。

 タス通信によると、ドネツク州内のクラスヌイリマン、クラスノアルメイスク、ドルシコフカでも、親露派とみられる武装集団が行政や警察の庁舎を占拠したという。

 ロイター通信によると、ウクライナのデシツァ外相は12日、スラビャンスクで警察署などが占拠されたことにロシア工作員が関わっているとみて、ロシアのラブロフ外相に対し、挑発的な行動をやめるよう電話で要請した。

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