NPDI広島宣言:「核禁止」示さず失望 被爆者ら
毎日新聞 2014年04月12日 22時49分(最終更新 04月12日 23時24分)
広島市で12日閉幕した軍縮・不拡散イニシアチブ(NPDI)外相会合。各国外相は会合に先立ち、原爆資料館を訪れて被爆者の実体験に耳を傾け、広島宣言で各国首脳に被爆地訪問を呼び掛けた。一方で、被爆者からは宣言で「核兵器禁止条約」への具体的道筋が示されなかったことに対する不満や失望の声が相次いだ。
会合終了後の共同記者会見で、トルコのダウトオール外相は「ここで見聞きしたことは一生忘れない」と述べ、国連安保理常任理事国など大国の対応こそが必要と指摘。ドイツのシュタインマイヤー外相も「広島、長崎の大惨事は二度と起こってはならないという信念を与えてくれた」と語った。また、外務省関係者によると、会合では壊滅状態から復興し、美しい街となった広島への評価も聞かれたという。
これに対し、広島に集まった被爆者団体や反核・平和団体のメンバーらも会合終了後、広島市内で記者会見。日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)の田中熙巳事務局長(81)は、国連などでこれまで4回出された核兵器の非人道性を批判する声明への賛同国が増えていることに言及。このような国際世論の流れを受けて、「日本政府が(被爆地の)広島開催で積極的姿勢を示すかと期待したが裏切られた」と批判。「被爆者は本当に早く核兵器をなくしてほしいと思っている。そのための交渉を早くすべきだ」と述べた。
8歳の時、爆心地から約2.8キロの自宅で被爆した広島市東区の岡田恵美子さん(77)は「外相が広島に来て、被爆者の証言に耳を傾けてくれたことは良かった」と評価しつつも、「岸田文雄外相は地元出身で広島の痛みや苦しみが分かっているはず。本音で核兵器が国際法上違法なものだと声に出してほしかった」と話した。【高橋咲子、加藤小夜、石川裕士】