改正少年法:被害者遺族…厳罰化評価の声、更生願う声

毎日新聞 2014年04月11日 19時46分

 罪を犯した少年に科す刑の上限を引き上げる改正少年法が11日、成立した。刑が軽すぎると訴えてきた被害者遺族からは「一歩前進」と評価する声が上がる。一方で、非行少年の立ち直り支援に携わる関係者は、「厳罰化」が進むことを警戒している。【伊藤一郎、和田武士】

 2008年11月、千葉県成田市の澤田容之(やすゆき)さん(60)と妻美代子さん(57)の次男智章さん(当時24歳)は、当時19歳の少年に殺害された。少年は確執があった父を困らせようと、面識のない智章さんを故意に軽トラックではねたが、澤田さん夫妻は少年審判前、家裁調査官から少年に有利な事情ばかり尋ねられた。

 審判で検察官送致が決まった少年は殺人罪などで起訴されたが、法廷で暴言を吐くなどして繰り返し退廷を命じられた。判決は当時の上限にあたる懲役5年以上10年以下の不定期刑。被害者参加制度を利用し遺族として求刑した無期懲役には程遠く、刑事裁判に不信感を抱いた。

 今回の改正で不定期刑の上限は「10年以上15年以下」となる。容之さんはこれを評価しつつ「息子は戻らないのに加害者は刑期を終えれば幸せな結婚もできる」と悔しさをにじませる。11日に参院本会議場で改正法成立を見届けた美代子さんは「刑を重くしても加害者が更生しなければ意味がない」と、矯正教育の充実を訴えた。

 非行少年の立ち直り支援に取り組む東大阪市の牧師、野田詠氏(えいじ)さん(38)は改正に疑問を感じる。元暴走族幹部で、10代の頃は少年鑑別所や少年院に入った。兄が差し入れた聖書を読んだことがきっかけで立ち直った。自身の経験も踏まえ「一概に長期収容がいいとは思えない」という。

 支援していた少年が「少年院でいい先生は1人だけだった」と口にしたこともあった。「少年院などの教官や教育内容の一層の質の向上が必要だ」と指摘する。

 今後は窃盗などの比較的軽い罪に問われた少年にも国選弁護人が付き添うようになる。一方で検察官が立ち会える事件も同様に拡大される。

 少年法には「審判は丁寧に和やかに行う」との規定がある。「ほとんどの事件に検察官が乗り出せるようになってしまった」。裁判官時代から多くの少年事件に関わってきた多田元(はじめ)弁護士は「検察官が立ち会った時、少年が自由に言い分を話せるだろうか」と首をひねった。

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