経済
常連客「さみしい」従業員「寝耳に水」 さいか屋川崎閉店で
川崎駅前の老舗百貨店「さいか屋川崎店」(川崎市川崎区)が来年5月末での営業終了を発表した。駅前のランドマーク的存在なため、「老舗がなくなるのは大変ショック」「今後のまちづくりに大きな影響がある」などと驚きの声や、駅東口の「地盤沈下」を心配する声が相次いだ。
「私たち世代にデパートは憧れの存在だった。さいか屋での買い物に慣れていたから、さみしい」
川崎市幸区の女性会社員(66)は悲しげな表情だった。同店はこの日も通常通りに営業。通い続けて40年という川崎区の70歳代女性は、「川崎(駅前)では、ここしかデパートがないから残念。西口の大型ショッピングセンター? 行かないわよ」と話した。
従業員やテナント関係者も「寝耳に水」。同店で働く女性は「お店がなくなるってことですか。本当ですか」と、驚きを隠さなかった。特売日には1日3千人近い集客があるという鮮魚店の男性スタッフも、「噂はあったし、いつか(閉店と)言われるだろうなとは思っていた。川崎店がなくなるのは、会社的にも厳しい」と厳しい表情だった。
行政、経済関係者も残念がる。川崎市の福田紀彦市長は「市民が長く慣れ親しんだ百貨店が閉店すると聞き、大変残念。関係者と相談しながら対応していく」とコメント。市は2005年に川崎駅周辺総合整備計画を策定したが、同店に関しては「具体的に何も位置付けがされていない」(市まちづくり局企画課)と営業終了は“想定外”。本年度から2年かけて同計画を改訂する予定だが、同課は「良好なまちづくりのため、関係者と相談しながら、位置付けを考えていきたい」とした。
川崎商工会議所の山田長満会頭は「半世紀を超え、まちづくりに果たしてきた役割は大きく、地域の振興発展と商業界をけん引されてきたことを考えると大変残念」とコメント。近隣アーケード街の川崎銀柳街商業協同組合の星野雄一事務局長は「西口にお客さんが取られている中で、それが加速するのではないか」と東口の地盤沈下を懸念。「次に何ができるかによって、人の流れや客層も変わるので、どうなるか心配だし、注目している」と話した。
◇社長「事業継続」に意欲
川崎店の営業終了について、さいか屋の岡本洋三社長(51)は10日夜、神奈川新聞社の取材に対し、「断腸の思い。川崎市には昭和31年からお世話になり、市民にもご愛顧いただき、育ててもらった。何がしかの形で事業を続けたい」と述べた。
岡本社長によると、店舗の定期建物賃貸借契約期間は来年5月末までの5年間。店舗所有者に対し契約の延長を申し入れてきたが、9日に期間通りの契約で満了したいとの書面が届き、急きょ営業終了を発表することになったという。
岡本社長は「高度成長に入る前に横須賀から川崎に出てきた。当社にとってはかなり勝負を懸けたプロジェクトだったが、川崎市民に支えてもらった」と振り返り、「単店ベースでは営業利益が出てきたタイミングだったのですが」と無念さを口にした。
今後について、「サテライト店になるか外商事務所になるのか分からないが、何が何でも川崎市、お客さまに恩返しをする」と話した。
【神奈川新聞】