ゴルフ場最大手、なぜ7割を売却?淘汰時代迎える“斜陽”業界、激化する生き残り競争
ゴルフ場運営最大手のアコーディア・ゴルフ(以下、アコーディア)は3月28日、「保有ゴルフ場の70%近い90コースをファンドに売却し、そのファンドから売却後のゴルフ場運営を受託する」と発表、ゴルフ業界で大きな話題になっている。それもそのはず、同社はトップの資金流用疑惑に端を発した委任状争奪戦、敵対的TOB(株式公開買い付け)、旧村上ファンドこと旧M&Aコンサルティングの流れをくむレノ・グループの介入など、経営権をめぐる派手な泥仕合で業界を騒がせていたからだ。「Thinkstock」より
発表文は本文と補足資料を合わせて60ページに及ぶ長いものだが、ポイントは同社が新しく打ち出した事業スキームにある。概要は次の通りだ。
保有ゴルフ場133コースのうち90コースを、同社が別途設立するSPC(特定目的会社)に売却し、SPCはこれをファンドの「ビジネス・トラスト」に売却する。同社はその売却代金をSPCから受領する一方、SPCから売却ゴルフ場の運営を受託する。8月上旬をめどに、1117億円以上でゴルフ場90コースの売却を開始する。並行して、同社は当スキームのパートナーになる大和証券グループから、新株予約権付きローンにより200億円を借り入れる。それらの売却代金と借入金を、ビジネス・トラストの25%超出資、900億円前後の銀行借入金返済、自社株式TOB(株式公開買い付け)などに充てる。
事業スキームの仕組みは複雑だが、同社は「肥大化した資産を切り離し、運営に特化した新しいビジネスモデルを導入するのが目的。同時に資産を圧縮することにより、株主価値の向上を図る」と説明している。
しかし業界内では「あの泥仕合で高収益保持を約束づけられた同社の苦肉の策」との見方が多い。
●経営権めぐる混乱
今回のスキーム策定に至る経緯を振り返ると、その発端はある告発だった。
12年4月17日、アコーディア専務(当時)の秋本一郎氏は都内で記者会見し、同社社長(当時、その後辞任)の竹生道巨氏が「数千万円の会社資金を私的に流用したとの通報を『ある取引先』から受けた」と、トップの疑惑を訴えた。その9日後、秋本氏と同社株主のオリンピアを筆頭とする8株主が、「6月の定時株主総会で秋本氏ら8名を取締役に選任する株主提案をした」と発表、暗に竹生社長の辞任を要求した。
オリンピアはパチンコ機大手メーカー・平和の子会社で、平和はゴルフ場運営業界2位のPGMホールディングス(以下、PGM)の親会社でもあり、オリンピアが仕掛けた株主提案はPGMの意を戴した策謀だったことがのちに明らかになる。
すると翌日、アコーディアは「ある取引先」とはオリンピアだったことと、かねてよりPGMから買収を打診されていたことを明らかにし、記者会見で「オリンピアの提案はPGMによる買収工作の一環」との見解を示した。PGMの神田有宏社長はアコーディアの元役員で、ライバルのPGM社長に就任後はアコーディアの買収工作に専念しているといわれていた。
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