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小保方さんマウス偽装か 深まる疑惑

 新たな万能細胞とされた「STAP細胞」の存在自体が揺らぐ事態が発覚した。論文の共著者で山梨大教授の若山照彦氏(46)が過去に、理化学研究所(理研)の小保方(おぼかた)晴子・研究ユニットリーダー(30)に「STAP幹細胞」の作製を頼んだところ、依頼したものとは違うマウスから作った細胞を渡されていたことが25日、理研への取材で分かった。渡されたものは別の万能細胞「ES細胞」だった可能性も疑われる。

 小保方さんの疑惑が、また深まった。理研によると、若山氏は論文の発表前、マウスの系統に関係なくSTAP細胞を作れるかを調べるため「129」と呼ばれる系統のマウスを小保方さんに提供し、STAP幹細胞の作製を依頼。小保方さんはSTAP幹細胞ができたとし、後日2つの細胞の塊を若山氏に渡した。

 しかし、一連の問題発覚後、若山氏がこの細胞の遺伝子を調べたところ「B6」「F1」という別系統のマウス細胞だったことが分かった。若山氏は「この細胞は論文には含まれていない」としながらも、論文に掲載した細胞についても不信感を強めているという。

 若山氏から報告を受けた理研・再生科学総合研究センターの竹市雅俊センター長は「詳細な検証を若山氏と協力して進める」とコメントした。

 小保方さんの疑惑は晴れるどころか、日を追うごとに増している。これまでに、(1)STAP細胞が胎盤に変化できることを示した画像が、別の実験の画像に酷似している(2)電気泳動像に不自然な挿入部分が見える(3)実験方法の説明で、他の論文から盗用の疑い(4)STAP細胞を用いた画像に取り違えがあり、小保方さんの博士論文に掲載された画像と似ている(5)早大に提出した博士論文に、米国立衛生研究所(NIH)のホームページに掲載された文書と、ほぼ同一の記述が約20ページあった、という疑いが向けられている。

 そして今回の疑惑。129とB6は万能性を持つ胚性幹細胞(ES細胞)を作製するのによく使われる系統だが、問題の細胞がES細胞かどうかは分かっていない。

 一方、論文共著者の米ハーバード大のチャールズ・バカンティ教授はSTAP細胞の独自の作製法を今月20日に所属する米ブリンガム・アンド・ウィメンズ病院の研究室のホームページに公開した。

 若山氏は、保存しているSTAP幹細胞を第三者機関に送り、詳細な分析を依頼している。

 ◆STAP細胞 理化学研究所などのチームが1月末に発表した新たな万能細胞。論文は、マウスの体細胞を弱酸性の溶液に浸して刺激を与え、培養すると作製できたとする内容。だが論文の画像や記述に不自然な点があるとの指摘が相次いだ。小保方氏らが開発したとされるSTAP細胞は、さまざまな種類の細胞に変化する「多能性」を持つが、増殖する能力はほとんどない。STAP細胞の培養方法を工夫し、増殖能力を持たせたのがSTAP幹細胞だが、胎盤になる能力は失うという。STAP幹細胞は、受精卵(胚)をもとに作製する胚性幹細胞(ES細胞)と極めて近い性質という。

 ◆ES細胞 さまざまな細胞へ分化、増殖する能力を持つ万能細胞の1つ。1981年にマウスのES細胞確立が報告され、98年にヒトES細胞が樹立された。受精卵の初期段階である胚盤胞に由来、胚性幹細胞と呼ばれる。再生医療に役立つとして研究されている。

 [2014年3月26日9時31分 紙面から]

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