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小保方会見「8つの疑問」――米国の科学者が知りたかったこと

大西睦子
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涙交じりだったが、後半は笑みがこぼれる場面も (C)時事

 理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(理研CDB)の小保方晴子・研究ユニットリーダーの会見が、4月9日に行われました。この「STAP細胞」論文の整合性には、日本国内だけではなく、世界中の科学のコミュニティーや米国民が、大きな関心を抱いています。

 この会見については、騒動の発端となった論文を掲載した雑誌『Nature』も取り上げました。

Acid-bath stem cell scientist apologizes and appeals,Nature,Apr.09

 

 同誌は、小保方氏が、以下2つの理由のために記者会見を開いたと示しています。1つ目は「間違いに対する謝罪」、2つ目は「STAP細胞があることの証明」ということです。さらにもう1つ、小保方氏は「不正確さは、悪意があったわけではない」ことも主張しています。

 この会見に対して、米国の多くの研究者は、「この会見は、感情的ではあるが、全く科学的ではなく、私たちが抱く疑問に何の答えもないので、かえって悪い印象を与える」と感じています。以下が、彼らの知りたかった疑問です。

 

(1)もし正しい画像を持っているなら、いつ私たちは見ることができるのか。

(2)『Nature』に投稿する前に、誰が最終的に承認をしたのか。

(3) 200回以上も実験に成功しているなら、その結果はいつ見ることができるのか。

(4)経験のある共著者が、論文の撤回を主張しているが、なぜ小保方氏は、彼らの主張を聞かないのか。あるいは、なぜ小保方氏は、彼らに事実を証明しないのか。

(5)博士論文のコピーペーストは事実か。

(6) どうしてハーバード大学は、小保方氏の結果をサポートしないのか。

(7) STAP細胞があるのなら、いつあなたは証明するのか。

(8)ほとんどの実験は、その過程が結果に大きく影響する。なぜ、あなたの場合、結果がそれまでのデータに影響されないのか。

 

 結局、小保方氏の会見では、この8つの疑問のいずれにも明確な回答がありませんでした。米国の科学者たちは激しく失望しています。

 

MITの研究者も再現できず

 また、今回の会見で、小保方氏は論文を撤回しないと主張していますが、私の知る限り、米国の幹細胞の研究者らは、不正の見つかったこの論文は撤回せざるを得ないと述べています。4月2日付の米紙『ボストン・グローブ』にはその議論が掲載されています。

Fraud alleged in findings on stem cells,The Boston Globe,Apr.02

 

 この記事の中で、世界トップクラスの研究所である『MITホワイトヘッド研究所』の幹細胞の科学者ルドルフ•イェーニッシュ教授は、「とても残念だ。科学の世界にとって悪い意味をもたらします」と述べ、さらに、「この論文は発表された直後は、とても興奮しました。ところが発表後すぐに、科学者の間でこの論文に疑いが浮上しました。最初は、STAP細胞作製方法の簡単さと、この研究に関与した経験のある日本の研究者への敬意から、この論文に興味を抱いたのだが」と述べています。

 そこで、イェーニッシュ教授の研究室の研究者らは、すぐに同じ方法で幹細胞を作製しようとしましたが、彼らは幹細胞を得ることができませんでした。さらに最近、この論文に問題が生じた後、論文の主要共著者の1人で、論文の撤回に終始反対しているハーバード大学のバカンティ教授らがインターネットに掲載した方法も試してみましたが、やはり幹細胞は得られませんでした。

 小保方氏の2時間半に及ぶ会見は終了しましたが、残念ながら、この会見では科学的なエビデンスはまったく得られず、科学のコミュニティーや米国民の疑問点は何も解決しませんでした。むしろ、この研究結果の信頼を得ることは、さらに厳しい状況になったと思います。



大西睦子

執筆者:大西睦子

内科医師、米国ボストン在住、医学博士。1970年、愛知県生まれ。東京女子医科大学卒業後、同血液内科入局。国立がんセンター、東京大学医学部附属病院血液・腫瘍内科にて造血幹細胞移植の臨床研究に従事。2007年4月からボストンのダナ・ファーバー癌研究所に留学し、2008年4月からハーバード大学にて食事や遺伝子と病気に関する基礎研究に従事。

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