エネ計画閣議決定:「原発事故忘れたのか」被害者怒りの声

毎日新聞 2014年04月11日 12時15分(最終更新 04月11日 16時58分)

エネルギー基本計画の閣議決定を受け、首相官邸に向かって抗議する人たち=東京都千代田区で2014年4月11日午前8時41分、丸山博撮影
エネルギー基本計画の閣議決定を受け、首相官邸に向かって抗議する人たち=東京都千代田区で2014年4月11日午前8時41分、丸山博撮影

 原発再稼働を推し進めようとするエネルギー基本計画が11日、閣議決定された。東京電力福島第1原発事故を引き起こした東日本大震災から、ちょうど3年1カ月。事故で放射性物質を浴びた地域は広範囲に及んでおり、後遺症に苦しむ住民は「政府は私たちを忘れたのか」と怒りの声を上げた。

 原発事故で平均的な空間放射線量が毎時0.23マイクロシーベルト以上となり、国の財政支援で自治体が除染にあたる「汚染状況重点調査地域」は最大で8県(岩手、宮城、福島、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉)の104市町村に上った。

 福島第1原発から100キロ以上離れた栃木県鹿沼市のシイタケ農家で、出荷制限を受けている岩本文雄さん(72)は「原発事故によって人生を狂わされた」と語気を強める。昨年、四国からシイタケの原木を取り寄せて生産を再開したが、卸先は既に他の農家と取引している。今後、再開できても消費者に届く保証はない。「原発のコストは、私たちのような被害も含めたら決して安くない」と話した。

 群馬県沼田市の主婦、奈良英子さん(49)は原発事故後、3人の息子たちの健康への影響が心配になり、放射能関連の書籍を買い込んで必死に勉強した。小中学校に校庭の除染を申し入れると「風評被害をあおる」と言われ、地域社会が分断されるのを実感した。「事故原因も究明されていない中でなぜ再稼働を進めようとするのか理解できない」と怒りをにじませた。

 「原発は壊れたら人間の知恵で制御できない。動かしてほしくない」と話すのは、千葉県我孫子市の住民団体「広域近隣住民連合会」事務局長、小林博三津(ひろみつ)さん(63)。原発事故で拡散した放射性物質に汚染された焼却灰を一時保管する県営施設の近くに住む。住民の反対を押し切って搬入された520トン以上の灰は、使用期限(2015年3月末)まで1年を切った今も県営施設に残されたままだ。小林さんは、国の政策を「原発を稼働させれば何とかなるといういいかげんなやり方だ」と批判した。【松本晃、塩田彩、橋本利昭】

 ◇再生エネ業者も失望

 再生可能エネルギー(再エネ)事業の関係者からも失望の声が上がっている。

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