タイ人女性のNさん(27)から「コリアン・ドリーム」について話を聞いたのは今年1月のことだった。
「韓国で3カ月働けば、タイの月給の10倍になる」
Nさんは仕事上で知り合った知人からそう持ち掛けられたという。バンコク郊外でかばんの訪問販売を行い、月に70万ウォン(約6万8000円)を稼いでいたNさんが韓国行きの飛行機に乗ったのは2月14日のことだった。
半月後の2月28日、Nさんはソウル地方警察庁国際犯罪捜査隊と法務部(省に相当)の移民特殊調査隊によって、ソウル郊外の京畿道一山地区の風俗店で摘発された。
両機関は昨年12月から今年3月にかけ、仁川、富川、高陽、水原など首都圏各地で売春業者11カ所を取り締まり、女性33人を摘発した。うち32人はタイ人女性で、1人はウズベキスタン人だった。主婦、大学生、もともと売春を行っていた女性など顔触れはさまざまだった。
警察が突入した売春店の経営者の携帯電話には、タイ人女性のヌード写真が数千枚保存されていた。経営者はそれを「商品写真」と呼んでいた。
捜査関係者は「タイ人女性は年齢や外見によってクラス分けされ、商品のように取引されていた」と指摘した。
第1段階は写真撮影だ。タイのブローカーが韓国行きを望む女性と会い、下着姿の写真を撮り、韓国人ブローカーの携帯電話に送る。韓国人ブローカーは写真を売春店の経営者に見せ、気に入った女性を選ばせる。ブローカーは警察に対し「単価は300万ウォン(約29万3000円)から500万ウォン(約48万8000円)だ。若くてきれいな女性ほど高く、写真と異なれば『返品』も可能だ」と話した。Nさんは300万ウォンで「取引」された。
売春店経営者が代金を支払うと、ブローカーは格安航空券を買い、タイのブローカーに連絡する。Nさんは現地ブローカーから航空券を受け取り、タイ出国前に形式的なマッサージ研修を受けた。韓国人ブローカーは仁川空港の待合室でNさんと待ち合わせ、一山地区にある風俗店に「配達」した。最終的に韓国とタイのブローカーは収入を山分けした。
風俗店に到着したNさんは、すぐに旅券を取り上げられた。風俗店の経営者が航空券代金や手数料として300万ウォンをブローカーに払ったため、それを稼いで返すまでは逃げられないことを意味していた。
Nさんは小部屋で寝泊まりし、1日に3-4回、言葉も通じない韓国人男性を相手にした。Nさんが受け取った報酬は客1人当たり4万ウォン(約3900円)だった。休日には6-7人の客を取ることもあった。
経営者は「回転率を高めるため」と称し、売春1回当たり1時間という制限時間を設けていた。Nさんは「1日に平均4人客を取れば、1カ月で480万ウォン(約46万8000円)になり、借金300万ウォンを返しても180万ウォン(約17万6000円)残る」と自分を慰めて耐えた。
警察に摘発されなければ、Nさんはノービザ滞在が認められる90日間に思惑通りの収入を上げ、タイに帰ることができたはずだ。
タイ以外にもさまざまな国の女性が売春目的で韓国に来ている。移民特殊調査隊の関係者は「タイ・マッサージの店が多く、容易に仕事に就け、ノービザ入国が可能なので、タイ人女性の摘発が多い」と説明した。
韓国で売春で摘発された外国人女性は、国外追放された後、1-5年は再入国できない。外国人女性は摘発されても本国に送還されるだけなので、さほど気に留めないという。
警察関係者は「韓国人は買春目的で隣国に出掛けていたが、今や隣国から女性を商品のように輸入する状況と化した」と顔を曇らせた。先進国を目指す国の醜い一面だ。