中学公民教科書:竹富町教委、審査申し立てせず

毎日新聞 2014年04月11日 10時34分(最終更新 04月11日 12時09分)

国地方係争処理委員会に審査を申し立てないことを説明する沖縄県竹富町教委の慶田盛教育長(左)と大田教育委員長=沖縄県石垣市で2014年4月11日午前10時19分、佐藤敬一撮影
国地方係争処理委員会に審査を申し立てないことを説明する沖縄県竹富町教委の慶田盛教育長(左)と大田教育委員長=沖縄県石垣市で2014年4月11日午前10時19分、佐藤敬一撮影

 沖縄県竹富町教育委員会が八重山採択地区協議会(石垣市、竹富町、与那国町)の決定と異なる中学公民教科書を使用している問題で、町教委は11日、地区協決定の教科書を使うよう求めた文部科学省の是正要求に従わないものの、第三者機関の国地方係争処理委員会には審査を申し立てないことを決めた。総務省によると、是正要求を受けた町教委が30日以内に係争処理委に申し立てしなかった場合、文科省は地方自治法に基づいて違法確認訴訟を起こすことができる。

 また、教科書無償措置法が改正され、採択地区の構成単位が「市郡」から「市町村」となったことを受け、竹富町教委は来年度の中学校の教科書選定で、改正法に基づき独自に教科書を選ぶ方針を明らかにした。

 記者会見した慶田盛安三(けだもりあんぞう)教育長は、申し立てをしない理由について「申し立てには膨大な資料を用意しなければならず、そのゆとりがない。第三者機関より裁判の方が客観性があるとも思える」と説明。さらに「採択地区が小規模化するのは現場にとって好ましい。県教委と連携して推し進めたい」と述べた。また、大田綾子教育委員長は「採択地区の問題が解決すれば、今の(独自採択の)問題は消えてしまう。文科省には違法確認訴訟を起こすのをやめてほしい」と話した。

 竹富町内の中学9校では7日に始業式があり、独自採択の公民教科書46冊が生徒に配布されている。

 この問題を巡っては、地区協が2011年8月、教科書無償措置法に基づいて保守色の強い育鵬社の中学公民教科書を「領土問題が扱われ、国境に近い八重山地区にふさわしい」などとして採択。しかし、竹富町は「沖縄の米軍基地問題の記述が少ない」などとして同意せず、地方教育行政法が教科書の採択権限を地元教委に与えていることを根拠に東京書籍版の使用を決め、12年度から寄付金で購入、配布している。

 文科省は昨年10月に町教委に是正要求するよう沖縄県教委に指示したが、県教委は学校現場に混乱がないことなどを理由に態度を保留。文科省は採択地区内で同じ教科書を使うと定める教科書無償措置法に違反しているとして3月14日、直接、是正要求した。町教委は3月24日の定例会で要求に応じない方針を確認し、係争処理委に申し立てるかどうかを検討していた。【佐藤敬一、坂口雄亮】

 【ことば】国地方係争処理委員会

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