政府は11日、国のエネルギー政策の指針となるエネルギー基本計画を閣議決定した。原子力を「重要なベースロード電源」と位置づけて再評価したのが最大の特徴だ。民主党政権が2012年に打ち出した原発稼働ゼロの方針を転換したが、電源全体に占める比率は示さなかった。太陽光など再生可能エネルギーを最大限、推進する姿勢を強調した。
エネルギー基本計画を改定するのは10年以来となり、東日本大震災後は初めて。民主党政権は12年9月に「30年代の原発稼働ゼロ」を盛り込んだエネルギー・環境戦略をつくったが、閣議決定はできなかった。自民党政権は政権交代後、エネルギー基本計画の改定について議論を進めていた。
政府は新計画で、原発を昼夜を問わず低い発電コストで動かせるベースロード電源と位置づけた。石炭と共に重要な電源とし、原子力規制委員会の安全審査に合格した原発の「再稼働を進める」とも明記した。政府が地元自治体などに再稼働への理解を求める姿勢も示し、短期的には原発を動かす方針を明示した。電気事業連合会の八木誠会長(関西電力社長)は11日、「方針は大変意義がある」と歓迎するコメントを発表した。
中長期的な原発の位置づけは曖昧さを残した。原発依存度は「可能な限り低減させる」としつつ、原発を将来どれほど動かすかの目安となる将来の電源比率は示さなかった。原発の新増設をどうするかも明記しなかった。
茂木敏充経済産業相は11日の記者会見で「(比率は)できるだけ早く設定する。新増設は次のステップの議論で、現段階において具体的に想定していない」と語った。
使用済み核燃料の再利用を目指している高速増殖炉「もんじゅ」は、トラブルが続く状況を踏まえて、放射性廃棄物を減らすための研究拠点と役割を修正した。
中長期的に推進する姿勢を強調したのが再生可能エネルギーだ。再生エネの電源比率は水力を含め足元で約1割。計画には、民主党政権が10年に示した「30年に約2割」を脚注に参考値として盛り込んだ。その上で「これまでの水準をさらに上回る導入を目指す」と記した。11日には再生エネを推進するための関係閣僚会議も初めて開いた。
エネルギー基本計画の策定は難航した。経産省の有識者会議が計画の素案をつくったのが昨年12月中旬。この時点では原発を「基盤となる電源」と記し、重みを与えていた。原発の新増設も「必要な規模を見極めて確保する」と含みを残していた。
素案に対し、原発に慎重な公明党など与党内の一部が反発。今年2月9日の東京都知事選で原発が争点に浮上したこともあり、決定が遅れた。
政府が原発を重要電源と位置づける計画の原案を固めたのは都知事選後の2月25日。その後も再生エネの拡大を掲げる与党議員などとの協議に1カ月以上を費やした。再生エネを最大限、推進する姿勢を計画に盛り込んで与党と折り合った。
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