《記者の目》細々と続けてきたのが実情
3年前の東日本大震災。放射性物質を拡散する東京電力福島第1原子力発電所の光景を前に、ある三菱重工業関係者は「元素変換をもっと大規模に研究していれば」と叫んだ。三菱重工は約20年、元素変換を研究してきたとはいえ、予算も人員も「細々と何とか続けてきた」というのが実情だ。
三菱重工は1990年代前半に元素変換の研究を始めた。一般に内容が知られたのは、関連学会の論文誌に岩村氏が論文を発表した後の2002年ころだ。ただ、常温核融合の負のイメージもあり「現代の錬金術」との見方もされ、同社は対外的なアピールに慎重だった。
岩村氏は技術統括本部のインテリジェンスグループ長という肩書を持つ。「技術もマーケティングが必要」との考えから10人のチームを束ね、エネルギー・環境分野を中心に他社の技術開発動向を探る。
「グループ長の仕事に専念してほしい」と遠回しに元素変換の研究からはずれるように言われたこともある。社内の研究予算はついていたが「07、08、09年ごろはけっこう危なかった」という。
岩村氏は「この10年で研究の精度が飛躍的に上がり、世界で研究仲間も増えてきた。中国の大学は我々そっくりの装置で研究している」と元素変換の認知度向上とともに、競争の激しさを実感している。
10年前から大がかりな研究体制をとれば、現時点で放射性廃棄物処理の具体的な実証実験ができていた可能性がある。しかし、実態は「基礎から実用研究へ移行できそうな段階」にとどまる。
元素変換は重工幹部も時折、「おもしろい研究をしているんだ」と口にする。「あんな研究を続けられるのも重工くらいだよねぇ」という外部の声もある。研究を途切れさせなかったのは三菱重工の懐の深さだが、現状の体制で、10年後に大きな成果が期待できるのか。そろそろ企業として腹をくくる時だ。
(企業報道部 三浦義和)
三菱重工業、プラセオジウム、元素変換、ストロンチウム
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