もてなしの心でどんな人も温かく迎え入れてきた遍路道で、外国人排除を助長する貼り紙が見つかった。「礼儀しらずな朝鮮人達が気持ち悪いシールを四国中に貼り回っています」「『大切な遍路道』を朝鮮人の手から守りましょう」などと中傷する内容に、開創1200年を盛り上げようと、外国人遍路の受け入れにも取り組んできた人々の間からは、憤りと落胆の声があがった。

 貼り紙は徳島県鳴門市大麻町にある1番札所霊山寺でも9日、見つかった。駐車場にある休憩所の壁に2枚貼られており、寺側がすぐにはがした。寺の関係者は「国と国の関係がぎくしゃくしていようとも、仏教の寺としては北朝鮮も韓国も大切な国。寺としては困る。貼った人の心に忍び込んだ思いは、離れた立場で見つめたい」と戸惑った様子で話した。

 バイクで四国霊場を巡る途中で同寺に立ち寄り、貼り紙を目の当たりにした名古屋市の男性(63)は「愛媛県西条市でも3日ほど前に見かけた」という。「見苦しく、嫌な気分になる。八十八カ所はみんなのいやしの場であり、遍路道は開かれた文化の道だ。こんな貼り紙はそぐわない。もっと広い心を持ちたい」

 徳島市新町橋2丁目の阿波おどり会館前の2棟の遍路小屋にも貼られていた。椅子に2枚ずつ計4枚。管理する市観光協会の職員は「全く気づかなかった。公共の場所で、こうした行為はやめてほしい」。

 夫婦でお遍路をしている松山市の主婦(62)は、2日前に吉野川市川島町の休憩所で同様の貼り紙を見たという。「遍路道は誰でも歩ける道なのに。日本人として恥ずかしい」。夫(67)も「貼った人は1200年も続いている遍路道をわかっていない。本当に遍路道を守ろうという気があるならそんなことはしないはず」とあきれた表情で話した。