押井守が自らの「器のなさ」を遺憾なく発揮した駄作。
続きは見ません。来年の劇場版だけ、評判を聞いてから考えます。はっきり宣言した方が彼らのためであり、パトレイバーというコンテンツのためです。「劇場版の予算稼ぎ」だとわかっていても、この続きに金を貢げるほど頭の緩い、「パトレイバーと名がついてれば何でもいい」みたいな判断基準の人間は、そうそういないと信じたい。
先にいいところを述べるならば、「パトレイバーの続編」として練り上げた、「サポート切れのイングラム」という設定や、「三代目」のキャラ構築と彼らの演技はよかったです。
「日常的な話から」というのも、アクションシーンを短くして予算をケチろうというセコい意図なのは見え見えだけど、パトレイバーなら許せる範囲。コンセプトはいいんですよ。
だから、「エンターテイメント」を作る意志のある人に任せれば、それなりに面白いものができたろうにと、考えるだに悔しい。それこそ、パトレイバーをパクった本広克行がやってれば、と……。
この作品は、上映時間の大半が、イングラムの格納庫で繰り広げられます。押井守的には、あの「特車隊のハンガー」をきちんと描きたかったんだろうな、とは推察します。だったらちゃんと描けよ、と。
うろちょろしてるあの「整備班」はいったい何なんだ? 馬鹿みたいに人数が多いのも無茶苦茶だが、なのに「整備」している人間が誰ひとりいないってのはどういう料簡だ。「後ろは適当に動いてて」とか、何も考えてない指示を出してるのが丸見えだ。
そもそも、運用チームの方が「待機時間が長くて時間つぶしに苦労してる」という話してんのに、何で整備だけわけのわからん忙しさを演出してるんだ。「仕事がなくてうだうだしてる」で放置すりゃいいじゃないか。
最悪なのがあの食事シーンな。劇中で、二足歩行ロボットなんて時代遅れだと自虐してみせるけれど、肉体労働者を欠食児童みたいに振る舞わせるセンスは、時代遅れとかそういうレベルじゃねぇぞ。見苦しい。苦役列車か。
ところがこの作品、そういう「見苦しい」ところに「重点を置いて」演出するのだ。しかも、それらにてんで一貫性がない。
整備班の愚にもつかない歌、無意味な演舞、様になっていない銃剣術、カップラーメン談義、CGのチャーハン、どれも押井守自身は面白いと思って作ってるようなのだが、見てる側はちっとも面白くない。こんなん見せられるくらいなら、いつもの衒学的な長ゼリフ聞かされた方がまだマシだ。
ぶっちゃけ、こちらとしてはとにかく我慢ですよ。
たいした予算がついてないのはわかってる。満足に描けるアクションシーンなんて、ほんの数分あればいいとこなんだ、すべてはその前振りだ。尺稼ぎだ。
クライマックスのアクションシーンさえ、このシリーズ全体のツカミとして、ちゃんと描ききれていれば、OKだ。これから先も全部金払って見に来たっていい。
本当に、そう思っていたんですよ。
……実写の押井守に、そんなの期待するだけ無駄だったよ。
はっきり書きます。「パトレイバーのバトルシーン」とちゃんと呼べる部分は、ゼロです。一秒もありません。信じられないと思いますが、これをツカミの第一章でやってしまったのです。唖然呆然、「金返せ」「二度と来るか」以外の感想を持てという方が難しいです。
あのさ、主人公たちが深夜見てる劇中劇に「牙狼」出してんじゃん。「牙狼」っていうクオリティの高い特撮コンテンツが民放でテレビ放送されてるの、わかってるんだよね(つーか、同じ東北新社が作ってるんだよね)。
なのに、どうしてここまで「質も量も志もはるかに劣る」特撮で金取ろうなんて考えられるわけ?
馬鹿にするのもたいがいにしろよ。