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昨日のポストでアウトバウンドマーケティングが運命的にインバウンドマーケティングの下風に立たざるを得ない状況を説明したけど、今日はそもそもアウトバウンド自体が勝手に気持ち悪くなっちゃってるよねと言う話。なにかというと「不気味の谷」に陥っちゃってるんだよね。

不気味の谷と言うのは3DCGやゲーム界隈で良く言われる言葉で、中途半端にリアルな人物描写が一番気持ち悪いって状況を現した言葉だ。コンピューティング能力の発達に伴いCGの人物描写がドット絵からマンガ絵、そして実写風のリアルな画像へと高度化しその分臨場感を増していったのだけど、丁度プレステ1後期からプレステ2期くらいのころリアル風CGで描いた人の顔が能面のようで一番気持ち悪かった。これがプレステ3までくると谷を越えて表情も豊かになり、リアルさを勝ち得て気持ち悪さを逃れた。(バイオみたいなホラーゲームは1,2のころの不気味さが逆にはまったりしたけどね)

で、今日のビッグデータ(笑)により高度化したアウトバウンディなアドテクはちょうどこの不気味の谷に陥ってて、みんなに気持ち悪がられてる。

具体的には一回クリックしちゃったらどのサイトを見ても同じ広告がついて回るリタゲとか、なんでこれを検討してるってわかったの?って思っちゃうようないつの間にかオプトイン系の情報をもとにしたリコメンドとか、すげえ気持ち悪がられてるのね。アドテク界隈の人たちは「クリック率は高い」とか言うんだけどさ、まあそりゃなんの関係もない人たちに比べりゃ高いかもしれないけど、気持ち悪がらせてせっかくの見込み客を離反させたり、反発させたりも結構してると思うんだよね。少なくとも自分は嫌だなって思う。

少し違うけどSNSや情報サイトの中に記事然として広告を入れるのって、あれも凄い腹立つ。間違ってクリックして糞重いAppStoreとかに飛ばされると自分にも腹立つしこんなアプリ死んでも使うかって思うし、これはもう確実に広告主にとってメリットよりデメリットの方がでかいと思う。でもアドテク界隈の人たちはやっぱり「あれはすごくクリック率が高い」とか言って喜んじゃってて、実にもう自分たちの銭稼ぎにしか興味がない、顧客のビジネスの成功とか消費者の利便なんてあんまり考えてない人たちが多いのかなあと思う。全てがそうとは言わないけど(保険)。

閑話休題

で、不気味の谷なんだけど、amazonとかは難なくこれを抜け出している。どうしているかと言うと、なぜこれを薦めているかと言う理由を必ず添えるという事と、判断の元データもamazon内で集めたことが自明だからいつの間に俺の個人情報を抜きやがった感もないのね。あとやっぱ自社で扱ってる商品の中でやってるってこともあって、リコメンドの精度も高くて結構役に立ってるってのも大きい。iTunes StoreのGeniusについてもおおむね同じことが言える。その気になればこれは違うよって外したり、もう出さないでねって意思表示を消費者側が簡単に示せるようにしておくことも大事ね。

これらの事例から言えることはまず谷を越えたリアルさ、ゲームで言えばPS3レベルにまで達すればいいんだよね。つまりむやみやたらのストーカーめいたリタゲやだまし討ちはやめて実際役立つレベルのリコメンドが行えるようになれば、アウトバウンド広告も今ほど気持ち悪いものではなくなっていく。

次に利用許諾条件の隅っこに小さく「おまえの個人情報洗いざらいぶち抜いて良いように使いまわすからな」って書くようなやり方をやめて、消費者にわかる言葉で誠実にオプトインをとり、かつそれを消費者に役立つ提案につなげる態度をわかりやすく示し続けることが大事。そのような信頼にたり、なおかつそのリコメンドが役に立つので消費者側から積極的に求めるようなポジションが取れればそれは最高なアウトバウンドマーケティングだし、極まりすぎてインバウンディな感じもする。

そんな信頼感と完全に顧客サイドに立った実際役立つリコメンド、そして割引情報提供や共同購入含めたクーポン取得などを渾然一体にしたサービスをジオデータも活用したモバイルアプリで提供するとかすれば不気味の谷は光速で抜けられそうな気がする。イメージとしてはそのアプリはライフログ的な機能も持ってて、ユーザーの行動や嗜好をあますところなく把握し、外部にそれを出さないまま的確なリコメンドを出すエージェント型の機能になると思う。

また話ずれた。アプリ企画もやり始めると楽しくてきりがないね。

まとめよう。今後様々な業界で以前より厳しく優勝劣敗が明確になっていくけど、どこにおいても優劣を分けるのはどれだけ顧客サイドに立ち、顧客に役立つものを提供できるか、そしてそのことに真摯に情熱を持って向き合い、そのことも顧客に伝えられるかなんだ。アウトバウンド広告ですら、いや、でこそ、ね。

kickYass

About Yasunao Kikuchi

プログラマー。特技は無断大量コーディング。趣味はマーケティング技法開発。 90年代半ばにニュースキュレーションでの個人情報収集+広告最適化手法を開発したのを初め実績多数。タマシイマーケティングに行き着き内容的になんかアレと封印したがインバウンド手法が広まったのでまろび出す。 バーチャレクス・コンサルティング所属。