先日、仏放送局フランス4で、いわゆる“スローテレビ”と呼ばれる番組が放送された。その番組のタイトルは「Tokyo Reverse」。東京のさまざまな街中を後ろ向きで歩いたフランス人男性を撮影し続けた映像を、逆再生して楽しむという番組だ。
仏紙ル・モンドや英放送局BBCなどによると、「Tokyo Reverse」を制作したのは、フランス人カメラマンで28歳のリュドヴィク・ズィリさんと、彼がパリで運営する映像制作会社のスタッフら。彼らは渋谷や秋葉原、浅草といった東京の街中を後ろ向きで歩いて撮影し、9時間ものスローテレビ番組を制作したという。スローテレビとは、2009年にノルウェー放送局NRKが、電車の車窓からの映像を長時間放送して注目された新しいタイプの番組で、例えば「暖炉が燃えている様子」や「編み物をしている人」など、内容の展開がほとんどなく同じようなシーンが長時間にわたって流されるのが特徴だ。
そんなスローテレビの制作を担ったズィリさんらは、東京を舞台に選んで撮影。そして出来上がった映像の一部は、YouTube(https://www.youtube.com/watch?v=xs8mTxHU5ag)やVimeo(http://vimeo.com/89936769)といった動画サイトで、それぞれ違う編集の動画が紹介されている。動画では、東京の至るところを闊歩しているズィリさんの姿をメインに映しているが、周りに映る車や人が後ろ向きに動いていくから不思議な感じがするはずだ。
実はこの撮影にあたり、動きが自然に見えるよう「ダンスレッスンを受けて」臨んだというズィリさん。周りが後ろへ動くのは逆再生しているからで、実際には彼が後ろ向きに歩き続けて撮影されたものだ。どちらの動画でも途中で、表参道を歩いていた彼が出会った女子高生たちと一緒に写真を撮るシーンがあるが、同じ向きに動いている彼女たちのぎこちなさと比べれば、彼が学んだレッスンの会得ぶりが垣間見える。逆に言えば、周りから見た撮影時の彼は、かなり不思議な動きをしていたのかもしれない。
ともあれ、こんな内容の映像がフランス4で、3月31日夜8時45分から9時間にわたって放送されたそう。特にフランスメディアでも広く紹介されており、注目を集めた様子の「Tokyo Reverse」。日本が注目されるのは喜ばしい限りだが、撮影中のズィリさんに遭遇したという人なら、公開されている動画の中に自分が映っていないかと探す楽しみもありそうだ。