April 10, 2014
米史上最大の原油流出事故から4年が経過したが、メキシコ湾では今なお野生生物たちが正常な状態に戻れずに苦闘していることが、4月8日に公表された最新の報告で明らかになった。
報告を出した米国立野生生物連盟(National Wildlife Federation, NWF)の上級研究員ダグ・インクリー(Doug Inkley)氏によると、特にハンドウイルカとウミガメの死亡数は記録的で、その死が流出事故に関係したものである証拠は以前よりも強固になっている。
2010年4月20日、石油掘削施設ディープウォーター・ホライズンで爆発が起こり、11人が死亡、75億リットルを超える量の原油がメキシコ湾に噴出した。それ以来、各政府機関やNWFを含む非営利団体は、原油流出の影響を追跡するため、この海域に生息する野生生物の研究を続けてきた。
報告を出した米国立野生生物連盟(National Wildlife Federation, NWF)の上級研究員ダグ・インクリー(Doug Inkley)氏によると、特にハンドウイルカとウミガメの死亡数は記録的で、その死が流出事故に関係したものである証拠は以前よりも強固になっている。
2010年4月20日、石油掘削施設ディープウォーター・ホライズンで爆発が起こり、11人が死亡、75億リットルを超える量の原油がメキシコ湾に噴出した。それ以来、各政府機関やNWFを含む非営利団体は、原油流出の影響を追跡するため、この海域に生息する野生生物の研究を続けてきた。
今回の報告書は原油流出後に出版された科学的成果を編集したもので、「メキシコ湾の原油流出事故はまだまだ続いている」ことを示しているとインクリー氏は述べる。
「原油は無くなっていない。原油はメキシコ湾の海底に存在し、浜辺に打ち上げられ続けている。そして沿岸の湿地にも残ったままだ」と同氏は続ける。
◆大打撃
報告書では、14種のメキシコ湾に生息する生物についての調査結果が示されている。その内容を以下に抜粋する。
・ 2010年4月以降、900頭以上のハンドウイルカが原油流出域で死亡または座礁している状態で見つかっている。これは死骸を縦に並べると2.4キロもの死んだイルカの列ができるほどの数だと、インクリー氏は語る。メキシコ湾では過去数十年にわたって死亡、座礁数の記録が取られているので、事故以前に比べてその数が増加していることが分かっている。
継続中の研究でも、原油で汚染された海域を泳ぐイルカに低体重、貧血、肝臓疾患や肺疾患の兆候が見られる。
ハンドウイルカのような最上位捕食者が病気になっていることから、食物連鎖のずっと下位の生物種にも問題が生じていることが予測されるとインクリー氏は述べている。
・ メキシコ湾には5種のウミガメが生息しており、その全てが絶滅危惧種法(ESA)で絶滅危惧種に指定されている。2011年以降毎年、原油流出域では約500頭のウミガメの死骸が見つかっている。NWFによれば、これは「通常の変化量を超えた劇的な増加」だという。
・ 流出した原油に含まれる化学物質がクロマグロやキハダマグロの胚に不整脈を引き起こしていることが示された。これは魚類の発生における重要なステージなので、このダメージによって心臓発作を起こしたり死に至る可能性もあり、大きな懸念材料になっているとインクリー氏は説明する。
・ ルイジアナ州沿岸で越冬する鳥のアビは、その血液中に含まれる原油由来の有毒化合物濃度が増加している。
・ BP社の油井近くを泳ぐマッコウクジラは、その体内に含まれるDNA損傷性のある金属の量が以前よりも増加している。
◆遠い道のり
全体的に見て、「原油流出の影響を全て理解するまでの道のりは遠い」とインクリー氏は語る。
完全な解明へ向けて、NWFと米国海洋大気庁(NOAA)は原油汚染域に生息する野生生物の観察を継続する予定だ。
原油で汚染された生態系を元に戻すのが目標だが、特に湿地や深海の原油を除去するのは容易ではないと、インクリー氏は述べる。NWFが今後の原油流出防止、具体的には化石燃料に代わる代替エネルギー資源の導入を重視しているのもそのためだ。
「いまだに頭のてっぺんからつま先まで油まみれの“歩く屍”となったカッショクペリカンが頭から離れない」とインクリー氏は続ける。
「こんな悲劇は二度と起こしてはならない」。
PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE, NATIONAL GEOGRAPHIC