鉄道

途中下車の旅ダメ、4月からJR切符、IC乗車券区間拡大で

 JRの制度改定に伴い4月1日から、首都圏を起点に山梨県の小淵沢や、長野県の上諏訪など、中央線方面へ向かう長距離切符の「途中下車」が大幅に制限される。横浜から松本(長野県)行き乗車券の場合、今は大半の途中駅で駅の外に出られるが、改定後は約250キロの全区間にわたって出られなくなる。専門家は「利便性を損なう理不尽な改定だ」と懸念する。

 通常、101キロ以上の乗車券は自由に途中下車できるが、今回はその例外規定である「東京近郊区間」を松本や、茨城県北東部の常陸太田などへ拡張する。

 これは、ICカード乗車券Suicaの利用可能エリアを拡大するのに合わせた措置。Suicaは改札口を出るたびに運賃を徴収するシステムで、乗り降りしながら長距離を旅行する想定がないからだ。

 JR東日本は「これまでSuicaで乗車して(エリア外の)松本まで乗り越すお客さまが多かった」とその理由を説明する。

 一方で「途中下車不可」のルールは紙の乗車券にも適用され、Suicaを使わなくても、旅程次第では乗客の負担が増える。

 例えば、横浜から甲府に立ち寄って松本まで行く場合、横浜-甲府間の運賃2270円と甲府-松本間の運賃1940円とを別々に払う必要があり、横浜-松本間の通し運賃より210円高くなる。その上、有効期間も従来の3日間から1日間に短縮される。

 生活に不可欠な交通の在り方を考える「交通権学会」の上岡直見副会長(法政大非常勤講師)=横浜市在住=は、Suicaの簡便さが広まることを勘案しても「利便性が制約される」と指摘。「乗るたびに初乗り運賃を払わされる」と、乗客の不利益を挙げる。

 その上、新たにエリアに組み入れられる松本側ではSuicaを使えるようになるにもかかわらず、肝心のカードが発売されない。東京からの乗客に主眼が置かれているからだ。

 長野県塩尻市に住む女性会社員(31)は「ICカードの利便性を享受できないまま下車も制限され、何のメリットもない」と不公平に憤る。「東京近郊区間」の名称にも「信州が東京でくくられることに違和感がある」と不満を漏らす。

 上岡副会長は「国鉄民営化以後、JRは地域密着をうたってきたが、実際には東京中心志向が加速している」と話している。

 ◆途中下車 いったん改札口を出た後でも再び列車に乗れる制度。乗り継ぎの際に駅の外へ出るケースを想定し、一部の例外を除き101キロ以上の乗車券に適用される。遠距離ほど賃率が低くなる「遠距離逓減制」と合わせ、旅行者の経済的負担を軽くするための配慮が、旧国鉄時代からなされてきた。4月以降も、「東京近郊区間」のエリアを越える場合や、それ以外の地域などでは途中下車制度が継続される。

【神奈川新聞】