2014-04-03
ヒゲとボインが人生だ! LIFE!
映画 | |
さて、無事4月1日エイプリルフールも終わったところで妄想を現実にしよう、ということで映画「LIFE!」を鑑賞。これも長いこと予告編が流れていて、なんとなく自分好みではなさそうだなあ、と思ったりしたのだが、観てみたら微妙に予告編とは違っていてとても楽しかった作品。作品そのものの雰囲気は全然違うけど、この予告編から受ける印象と違って良かった、と言うのは「キャプテン・フィリップス」に近いものがある。
物語
ニューヨークで雑誌「LIFE」の写真管理を仕事としているウォルター・ミティ。彼は地味で人付き合いが苦手、そして極度の妄想癖があった。現在は職場の新しい同僚シェリルに想いを寄せているが、話しかけることもままならず彼女の所属するSNSを見つめるばかり。
LIFE誌は経営が行き詰まり、身売りされ新しい経営陣がやってくる。決定は廃刊。最終号の表紙はカメラマン、ショーン・オコンネルの指定した25番の写真。しかしウォルターのもとに送られてきたショーンからのネガには25番が抜けていた。締め切りまでに25番の写真が見つからなければクビになってしまう。残されたネガからショーンの手がかりを探そうとするウォルターにシェリルも協力。やがて彼の最後の足跡がグリーンランドにあることが分かり、彼は思い切ってグリーンランドへ飛ぶことにする。そこから思いがけない冒険が・・・
ベン・スティラーを最初に知ったのは「リアリティ・バイツ」でもう詳しい内容は覚えていないが、そこではイーサン・ホークとウィノナ・ライダーと三角関係を築く若社長みたいな役を演じていた。ベン・スティラーは監督も勤めておりこの映画が「ジェネレーションXを代表する作品」みたいな扱われ方をしていたので、その経歴を知らない僕はてっきりシリアスな映画人だと思っていた。その後ジム・キャリーが主演した「ケーブル・ガイ」が興行的にポシャったと聞いた時も「似合わないことするから」という感じ。彼が実はサタデー・ナイト・ライブ出身のコメディアンで本来はコメディこそ持ち味、というのを知るのはファレリー兄弟の「メリーに首ったけ」がヒットしてからのことである。その後はご存知のように大活躍で(それでも個人的にアダム・サンドラーとごっちゃになることが度々あったが)、「ナイト・ミュージアム」のようなファミリー向けと心底くだらないコメディ映画を交互に出ている感じでさらにオーウェン・ウィルソン、ヴィンス・ヴォーンなど長年の盟友との絆も知られている。本作はそんなベン・スティラーの「トロピック・サンダー」以来の監督/主演作品。ちなみに僕が一番大好きなベン・スティラー作品は「ズーランダー」。マグナム!
事前の予告編では「冴えない男が自分を変えるために思い切って冒険に出かける」みたいな感じで、決して間違ってはいないけれど、なんだか自己啓発セミナー臭い感じだった。そして吹き替えがナインティナインの岡村隆史と聞いてかなりげんなりしたのも事実。まあ確かにちょっと似ているけれど・・・(この芸能人の吹き替え問題については一度一本の記事を書きたい)これに関しては吹き替え観る気は全くなかったが。実際の作品は過去の自分を否定して生まれ変わるどころかむしろこれまでの生き方を肯定するものだった。
原作は1939年に発表されたジェームズ・サーバーの「虹をつかむ男」という小説で、1947年には映画化されているようだがどちらにしろ未見、また時代背景も大きく変わっているのでかなり変更があるのではないだろうか。山田洋次監督の「虹をつかむ男」も特に本作とは関係無いようだ。
映画冒頭のウォルターの生活風景はかなり、殺風景。コンクリートの色合いを残すくすんだ灰色の町並みが続く。これはおそらくウォルターの心象風景を現しているのだろう。その直後からウォルターの妄想が始まるがそれがシームレスで現実からウォルターの妄想シーンにつながるため、一瞬どっちか分からなくなる。それでも妄想が突飛なのですぐ分かるんだけど。
ウォルターは確かに地味で人見知りするタイプだけれど、劇中で見る限り特にそれでひどい扱いを受けていたり、社内で馬鹿にされている、という様子はない。彼を馬鹿にするのは新しい経営陣だ。ウォルターは彼の仕事をきちんとやり遂げているし、それは分かる人にはきちんと高く評価されている。だからつまらない日常や、昨日までの自分にさよならして冒険に出かける!というような煽句は少しばかり正しくない。
まあ、確かにウォルターのキャラクターは40を過ぎて成長を求められている部分はある。それはまだ少年の頃に父親が死んだ反動であったり、今も夢を追い求めているような妹との対比であるのかもしれない。でもきちんと理解者はいるのだ。
前半の妄想シーンが終わると次は実際に冒険に出かけることになる。でもそれも言ったっきりではなく、途中で一旦戻ってきたり目的地に行くまでは意外と飛行機を使ってあっさりだったりする。全体としてみると意外と「冒険」という印象は強くない。
ウォルターがその存在を探し求める相手がショーン・ペン演じるショーン・オコンネル。写真で早くから登場するが、本人が登場するのはラスト近く。彼とウォルターは生き方が全然違うが互いに最もよく認め合っている仲とも言える。
25番目のフィルムが一体何なのか?僕はてっきりそれ自体はどうでもよくて観客の想像力に委ねるものだとばかり思っていた。一種のマクガフィンとして機能する物(それを言うならショーンのキャラクター自体が最後まで生身では登場しないのかも?と思っていたのだけれど)でそれ自体がどんな写真なのかはこの際どうでもいい、と。だから劇中に実際に出てくる時は出てくることで逆にがっかりするのではないか、などと思っていた。しかしそれはきちんと劇中でのこれまでのウォルターという人間をしっかり見ていた者には感動をもたらすものである。
この映画における重要な脇役、クリスティン・ウィグとパットン・オズワルド、アダム・スコットの3人はそれぞれ女性の結婚とそれにまつわる青春の後始末を描いたような作品「ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン」「ヤング≒アダルト」「バチェロレッテ〜あの子が結婚するなんて!」に出演している。偶然か狙ってのキャスティングかは分からないが、この大人になりきれない大人、な映画に出てたキャストがいい味を出している。クリスティン・ウィグのキャラはそれほど何かに突出しているキャラクターではないけれど、ウォルターの妄想の中でデヴィッド・ボウイの「スペース・オディティ」を弾き語りするシェリルはウォルターでなくても背中を押されるし、劇中彼女とウォルターが「スペース・オディティ」について語り合う部分も良い。劇中にデヴィッド・ボウイの歌が引用される作品は基本的にそれだけでもう肯定しちゃいますよ!
パットン・オズワルトのトッドはシェリルが利用していてそのためウォルターも利用しているSNSサービスの管理人。とあることからウォルターが彼に電話をかけ、そのため声のやりとりが主となる。多分彼のキャラクターが原作の書かれた1939年とは大きく違う要素だろう。彼はSNSの管理人という立場であるし、何しろ外国の山奥にいても電波が入って携帯電話で会話するようなシチュエーション。
そして、アダム・スコット。彼は新しい経営の責任者としてLIFE誌に乗り込んでくる。彼と彼の取り巻きは皆キチンと整えたヒゲを生やしている。最初てっきり彼らはアメリカ資本ではない中東系の経営者、とかなのか、と思ったがそれは間違いでこの蓄えたヒゲが彼らの「枠にはめれられたワイルドさ」を演出するのだ。物語の終盤で旅を終えて戻ってきたウォルターの無精髭との対比で彼らの整えられたヒゲが酷く見た目のワイルドさだけを装った虚飾に見えてしまう。おそらくそのような効果を狙ったのだろう。てかアダム・スコットって1973年生まれで40歳越えてるのね。僕は「バチェロレッテ」で彼を認識したのだけど(認識していなかっただけで出演作品は見ていたみたい)、てっきりまだ若い20代半ば、下手すりゃ二十歳そこそこの若造だと思っていたよ。よく知らないけれどTVCMで見かける同姓同名のプロゴルファーのアダム・スコットの方が年上に見える。もちろん40歳でも会社の上層部としては若いんだけど、より若くみえるために嫌味っぽさも倍増である。アクションシーンもあるよ!(妄想の中で)
映画はウォルターの人生を肯定している。生まれ変わったのではなく過去を肯定して、さらにそこに今を上乗せしていくのだ。
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