韓国で相次いで見つかった北朝鮮のものと見られる無人機。
取り付けられていたのは日本のカメラ。
今、日本の技術を軍事利用しようとする動きが加速しています。
シンガポールで開かれたアジア最大規模の航空ショー。
日本企業のブースには各国の軍関係者が殺到しました。
遠隔操作による爆弾処理。
偵察用小型ロボット。
使われているのはスマートフォンやゲーム機の技術です。
こうした中、防衛省は技術の流出を防ぐ新たな組織を発足させました。
国の内外で進む民間技術の軍事転用。
日本の技術はどこへ行くのか。
最前線からの報告です。
こんばんは。
「クローズアップ現代」です。
日本には世界をリードする優れた技術が豊富にあります。
生活をより便利にしたり安全性、快適性、楽しさを高める最先端技術を使った部品や製品の数々。
ところが今高度化した民間の製品が開発したメーカーが意図していなかった軍事目的に転用されるケースが増えています。
先月、北朝鮮のものと見られる無人機が韓国で見つかりましたがこの無人機に搭載されていたのが日本のデジタルカメラです。
平和国家としていかなる紛争やテロにも加担しないいわゆる死の商人とはならないとしてきた日本ですが民間の高い技術がいつの間にか軍事に転用され性能の高い兵器を開発することが可能になっています。
民間技術の軍事転用をどうやって防ぐのか各国が頭を悩ませています。
先週、政府は武器輸出三原則に代わる新たな原則「防衛装備移転三原則」を閣議決定しました。
武器輸出の原則禁止から一定の条件付きで容認へとルールが変わったわけですが武器や部品兵器の設計図といった防衛装備の輸出を認める際国は厳格な審査を行うとしています。
しかし日本の技術が戦場で使われ紛争を助長したり技術が拡散することを本当に防げるのか。
また輸出判断をチェックできる仕組みが作られるのかなど運用面での課題が指摘されています。
一方、民生品ですが一般に売られている民生品の輸出は国の厳格な審査の対象にはなっていません。
現在、行われているのは経済産業省の輸出審査でこうした審査スクリーニングでは高度化した製品の軍事転用を防ぐことができないのではないかと懸念されていまして管理強化に向けた動きが始まっています。
初めに、日本の民間技術への関心を高めている各国の軍や軍需産業の動きをご覧ください。
ことし2月、シンガポールでアジア最大規模の航空ショーが開かれました。
世界の航空関連企業1000社以上が参加しました。
日本からは、これまでで最多の42社が出展。
旅客機メーカーや海外の民間空港への納品を目指しています。
今回初めて参加した社員130人のメーカーです。
空港に設置する気象観測用のセンサーを販売しようとしています。
この会社の超音波センサーは上空150メートルまでの乱気流を測定することができます。
日本で実験を重ね主に東南アジアの民間空港との取り引きを目指してきました。
ところがブースに集まってきたのは各国の軍関係者でした。
思わぬ展開に、メーカー側は戸惑いを隠せませんでした。
そのほかの日本企業のブースにも軍関係者が次々と訪れました。
イギリスを拠点とする世界第3位の軍需企業です。
この軍需企業が開発したヘリコプターの隊員が使う小型のディスプレー。
飛行に関するデータや銃の照準が表示されます。
日本の技術で画面をカラー表示にできれば各国への輸出をさらに増やせると見込んでいます。
さらに紛争の最前線に武器を供給してきたイスラエルの軍需企業も日本の技術に注目していました。
イラク戦争にも使われたこの企業の無人機。
目標を正確に捉えるためには高性能のカメラやセンサーが欠かせません。
日本の高い技術を取り込めれば、無人機の性能をさらに高めることができると考えています。
注目を集める日本の民間技術。
多くの日本企業は海外の軍との取り引きには慎重な姿勢です。
しかし、北朝鮮のものと見られる無人機に日本のカメラが搭載されたように目の届かないところで軍事転用されるおそれもあります。
どのように軍事転用を防ぐのか。
模索を続けている企業があります。
コンピューター制御で自律航行する無人ボート。
社員50人の都内のメーカーが開発したものです。
海底の地形を超音波で調べデータを無線で送信。
港やダムなどの測量に使われています。
無線が途切れたり電池が残り少なくなれば元の場所まで自動で戻ってきます。
この会社には、ここ数年思わぬ国からの問い合わせが増えています。
イスラエル、リビア、イランなど世界中からメールが届きます。
「より大きなボートを製造してほしい」。
しかし、相手が用途や素性を明らかにしないことも少なくありません。
戦争やテロに自社製品が使われれば企業イメージに大きな傷がつくと考え、警戒しています。
この会社では、3年前から転用を防ぐ独自の取り組みを始めました。
海外に輸出する際には毎回社員を現地に派遣し本当に測量に使われているのか確認しています。
さらにメンテナンスで年に一度、製品を回収。
勝手に改造されていないかチェックを徹底しています。
それでも軍事転用への不安が消えることはないといいます。
スタジオには、取材に当たってきました社会部の仲井記者です。
自分のところの技術が軍事の面で見ると、こんな使い方があるのかと言われて驚く企業もあるということですけども、なぜこれほどまでに今、海外の軍事企業は、日本の企業へのアプローチを進めているんですか?
軍事技術の開発が昔とは大きく変わっているということがあります。
こちらをご覧ください。
かつての冷戦期はこの一番上の軍事部門に、巨額の国家予算が投入されまして、ここで最先端の技術を開発してきたんですね。
そしてそれが後に私たちの生活にも普及していくという流れだったんです。
ところが今は、財政上の制約もありまして、民間で次々と開発される高度な技術を、逆に軍事に活用すると、これまでとは逆の流れが加速しているんです。
そしてその不安を覚える企業の姿も今のリポートにありましたけれども、軍事転用を防ぐ手だてっていうのはあるんでしょうか?
軍事転用を防ぐ手だては、必ずしも態勢自体は確立しているとはいえません。
明らかに武器に当たる製品につきましては、かつての武器輸出三原則で、実質的に輸出が禁止されてきましたし、新しい三原則でも、厳格にこれを管理するとしています。
また民生品の中でも、核や生物・化学兵器、ミサイルなどに転用が可能な特殊な技術につきましては、条約や国際的な取り決めの下で管理されているんです。
ところが、武器に転用可能だと言い切れない民生品については、管理の対象外になっています。
かつての大きなパソコンの機能が、今では小さいスマートフォンで代用できるなど民間の技術はすさまじいスピードで進歩していまして、民間技術が軍事転用されるのは、防ぎようがないと指摘する専門家もいるんです。
社会部の仲井記者でした。
こうした中で、民間技術に注目をしているのは海外ばかりではなく、実は防衛省も注目しています。
そしてその一方で、技術の海外の流出をどう防ぐのか、管理強化の動きも出てきました。
NHKが情報公開で入手した300ページに及ぶ防衛省の内部資料です。
去年、大規模に民間技術を調べていました。
ロボットやセンサーなど最先端の技術。
自衛隊の防衛装備に転用できないか見極めようとしていたのです。
防衛省がセンサー技術の高さに着目した九州大学です。
味や匂いを科学的に調べる研究の第一人者、都甲潔さん。
これもドイツやね。
10年かけて超高感度の匂いセンサーを開発してきました。
金属の表面に特殊な処理を施したセンサー。
食品の品質管理に応用できる世界最高水準の技術です。
都甲さんに協力を依頼してきたのは防衛省技術研究本部でした。
匂いセンサーを爆弾を探知する装置に転用できないか共同研究を申し込まれたのです。
爆弾を探知できれば人命を守ることにつながると説明された都甲さん。
その後、防衛省の依頼を引き受け爆薬の僅かな成分を匂いセンサーで捉える新たな装備品の共同研究を始めています。
防衛省ではこうした民間技術を取り込み次々と装備品の研究を進めています。
その現場を取材することができました。
爆弾処理のために試作されたこのロボット。
カメラは、テレビ会議用の市販品でした。
ロボットの動きはゲーム用のコントローラーで制御していました。
手投げ式偵察用ロボット。
こちらも電子部品はほとんどが市販品でした。
相手に気付かれないようひそかに捜索するための技術。
操縦には、スマートフォンを応用した端末が使われていました。
最先端の技術から私たちの身近な技術まで。
装備品への転用がひろがっています。
民間の優れた技術を積極的に取り込む防衛省。
開発した装備や技術を輸出することも想定しています。
これまで武器の輸出は実質的に禁止されてきましたが新たな三原則では一定の条件の下に認められることになったからです。
防衛省がASEANの国防次官級会議に合わせて開いた展示会。
今後、こうした機会を通じて民間技術を使った装備品を海外にPRすることにしています。
防衛省は輸出を視野に入れる一方で優れた民間技術が海外に流出しないよう対策に乗り出しました。
今月、新たに発足した技術管理班です。
軍事に転用可能な民間技術を詳しく把握。
転用されるおそれがある技術については輸出審査を慎重に進めるよう関係機関に働きかけることにしています。
ここからは、安全保障に大変お詳しい、一橋大学教授、秋山信将さんと共にお伝えしてまいります。
防衛省は民間技術を取り入れながら、装備品の研究をしているようなんですけれども、そうした中で、市販品だけでも非常に優れた装備品が作られているということに、驚いてしまいましたけれども、ただ一方で、そこから先、さらに輸出を見ているということ、これ、どう受け止めたらいいんでしょうか?
一つはやはり、技術の持っている特性として、イノベーションのサイクルがだんだん短くなって、そして普通の技術であっても軍事転用が可能になっていると、そうした中で、他国からのキャッチアップも激しいと、あるいはまた防衛予算が限定的であるということは、いかに調達のコストを安くしていくかということが、防衛省に求められているわけですね。
最先端の技術を確保しながら、その調達のコストを安くするために民生品を取り入れているんだけれども、それだけではなくて、そうして出来上がった装備品を海外の市場にまでひろげるということで、単価を安くしていくということが、1つ、目的としてあるのではないかと思っています。
しかし、その単価を安くしていくということですけれども、共同開発ということも今後は視野に入れていくということになっていますよね。
共同開発のメリットもやはりこれは海外で生産された装備品の開発に参加することによって、調達のコストというか、値段を引き下げるということであるとか、あるいは海外の優秀な技術を日本の装備品に取り入れるというメリットは、当然ながら考えていると思います。
ただ、その場合に問題となるのは、じゃあ、日本が一緒に開発した装備品というのが、例えば日本の三原則の中で言われているような、国際社会の安全に資さないようなというか、脅威になるような国に移転される可能性があるというところは、考えていかなきゃいけないと思います。
そして企業の中には、日本の安全保障のためには、そうした技術を提供していいと思っても、海外に輸出されるというところまで踏み込むと、違和感を覚えるところも出てくるでしょうね。
そうですね。
企業からすると、そこは最終的には政府が責任を持って判断してもらいたいということだと思うんですね。
それは政府がこれは国際社会のためになるかならないかということを明確にすると。
同時に、じゃあ、そこの輸出した先から第三国にもしかしたら移転してしまう可能性、それによって、その自分たちの意図とは反して、脅威となって、自社の技術が使われてしまうということに対する懸念というのは、引き続き存在するので、それをどういうふうに防いでいくかというのは、大きな課題になっていると思います。
そして冒頭のほうで見てきました民生品。
民生品の活用方法が、軍事転用可能に非常になっている中で、どうやって防いでいくのか、技術の流出や、そして絶対にわたってはいけないところに手にわたらないようにするのか、その管理強化ということが打ち出されてはいますけれども、本当に実効性のある体制作りって、一体どういうものなんでしょうか。
これ、100%防ぐというのは、恐らく不可能だと思うんですね。
最終的にはやはりこの技術を出すのか出さないのかというのは、技術の評価と共に政治的な判断というのが必要になってくると思います。
そうすると問われてくるのは、経済産業省、最終的には政府として国家安全保障会議、あるいは政府としてどのようにこの技術を移転することを決定したのかということに対するアカウンタビリティー、説明責任というものが問われてくるというか、それを確保することが必要になってくるというふうに思います。
しかし、その軍需の難しさというのは、技術の深い理解もそうですけれども、やはり安全保障上の判断ということもある中で、どうやって、例えば日本としてはこれから大事に、まだ本当に大事にしていきたい、平和国家としての国家イメージを損なわない形で、さまざまな判断が下されることを、どうやって促すのか、ここの仕組みというのは、どんなやり方があるんでしょうか?
そうですね。
これまで日本が武器を輸出してこなかったイメージというのは、非常に大きいとは思います。
ただ、今、周辺諸国も含めてその技術的なキャッチアップが激しいと、軍事力の格差も縮まっている中で、どうやって日本の安全を確保するかということの、そのどちらを取るのか、あるいはどうやって両立させていくのか、大きな課題だと思います。
そこの中で重要になってくるのが、先ほど申し上げた説明責任ということなんですけれども、これはやはり最終的には、国民の代表である国会が、いかに政府の政策の決定に対して、適切かどうかというのを判断していくと、それなりの制度作りが求められているのではないかと考えています。
透明性を国民としては求めたいんですけれども、この透明性の確保というのは、具体的にどういうやり方がありますか?
例えば国会の中に委員会を作って、そして、ちゃんと守秘義務もしっかりと課したうえで、そこで超党派の委員会の中で妥当性を判断していくといった制度というのを今後、考えていく必要があるのではないかというふうに思っております。
これから下される判断が、振り返ってみたときに、本当に適切なものだったかどうかというところまでチェックをしていくということですか?
今時点だけではなくて、中長期にわたって、その政策の適切性を判断していくということが必要だと思います。
2014/04/10(木) 00:10〜00:36
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代「日本の技術はどこへ〜拡(ひろ)がる“軍事”転用〜」[字][再]
武器輸出三原則見直しで注目される、民間技術の“軍事”転用。企業や大学には、防衛省や、各国の軍関係者からの問い合わせが相次いでいる。日本の技術はどこへいくのか。
詳細情報
番組内容
【ゲスト】一橋大学教授…秋山信将,【キャスター】国谷裕子
出演者
【ゲスト】一橋大学教授…秋山信将,【キャスター】国谷裕子
ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
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