クローズアップ現代「まさかの天井落下をどう防ぐ」 2014.04.08

東日本大震災で相次いだ天井落下。
頭上のリスクからどう身を守るのか。
3年前の地震では全国2000か所もの天井が落下。
死者は少なくとも5人に上りました。
これまで、天井には落下を防止する対策がほとんど取られていませんでした。
リスクは身近な場所に存在し命は危険にさらされているのです。
ようやく、国は基準を設け揺れに強い天井の設置を義務づけました。
しかし、膨らむコストに長引く工期など、課題も明らかに。
さらに、基準に合わせた天井の設置は容易ではありません。
突然、降りかかる頭上の脅威から私たちは、どう身を守るのか。
対策が始まった現場からお伝えします。
こんばんは。
「クローズアップ現代」です。
東日本大震災が起きるまで天井が突然落下する危険そのリスクについての認識は希薄で天井についての基準は一切なく落下防止対策もほとんど取られてきませんでした。
こちらにあるのが、一般的な天井その実物です。
ご覧のように、金物で屋根からつっていることからつり天井と呼ばれています。
こうした、つり天井は住宅やオフィスショッピングセンターや学校など私たちがよく利用する建物のほとんどで使用されています。
東日本大震災では大きな揺れが長く続きこうしたつり天井が全国およそ2000か所で落下し少なくとも5人の方が犠牲になりました。
このつり天井の重さですけれども1平方メートル当たりこの周辺の部分を合わせますとおよそ13キロありましてこうやって持ってみますとかなり重いです。
音楽ホールや映画館など広い空間に多くの人々が集まるような建物の天井は高く天井が高ければ高いほどもし落下した場合大きな被害が出る可能性があります。
リスクがあるにもかかわらず基準がなく安全対策がほとんど取られてこなかった天井。
その背景には天井は構造を支えるその一部としては捉えておらず内装の一部だと見られてきたからです。
国は揺れに強い天井の基準を作り今月から、それが施行されましたけれども対象となるのは、新築や増築の物件に限られています。
つり天井のある公立学校の施設だけでもおよそ8700か所に上ります。
天井は、どのように落下するのか。
急務となっている点検や安全対策の難しさが見えてきました。
最大震度7の揺れに見舞われた東日本大震災。
その後の調査から東北や関東地方でさまざまな施設の天井が落下していたことが分かってきました。
2000人収容の音楽ホール。
最新の耐震設計を取り入れた公共施設。
スポーツ大会や成人式などが開かれる体育館。
ほかにもショッピングセンターや駅、映画館など身近な大型施設の天井が大規模に落下していたのです。
その数全国で、およそ2000か所。
分かっているだけで、死者5人負傷者は70人以上に上ります。
落下の状況を詳しく見ていくと被害が、さらに拡大していた可能性があったことが分かってきました。
よーし、授業を始めるぞ。
そのとき体育館にいた生徒は40人。
地震?地震じゃない?揺れてるよ。
机など、身を隠すものが何もない体育館。
危険を感じた教師はとっさに指示を出します。
みんな、外に出ろ!急げ!急げ!
座り込んで動けなくなった生徒がいましたがなんとか助け合い生徒全員が外に出た直後。
体育館の天井が大規模に落下。
その中には、なんと重さ5トンの鉄板も横たわっていました。
実は、この体育館には音の響きをよくするために鉄板が取り付けられていたのです。
そもそも、天井は内装の一部とされるため柱や屋根など建物を支える構造体とは違って耐震基準はありません。
そのため、重い鉄板でもつり天井として使われるなどリスクは見過ごされてきました。
高い場所からの天井落下は予想以上の衝撃をもたらします。
これは、1平方メートル当たりおよそ11キロ。
一般的な天井板を落とす実験です。
頭の上4メートルから落とすと頭蓋骨を骨折するほどの衝撃があることが分かりました。
天井は、いったいどのように落下するのか。
その詳細を確かめる大規模な実験が、初めて行われました。
高さ9メートルの実物大の体育館を震動台の上で揺らします。
取り付けたのは一般的な、つり天井です。
天井を支えているのは屋根からつるした細い金具です。
ここに金属の棒を格子状に組みクリップという部品で留めていきます。
クリップは挟んで引っ掛けるだけ。
この小さなクリップが天井の重さを支えているのです。
東日本大震災の地震波を使い次第に揺れを強めていきます。
震度6弱の揺れを与えたときです。
一瞬で天井が崩れ落ちました。
よく見ると、何か外れています。
クリップです。
これが引き金となり天井が次々と落下していきました。
天井落下の危険は地震の発生時だけの問題ではありません。
静岡県の富士水泳場です。
去年7月高さ18メートルの天井がなんの前触れもなく落下しました。
前日には大会が開かれこの場所に3000人が集まっていました。
その後の調査で天井を支えるクリップが多数外れていたことが判明。
過去の地震や湿気、温度差などさまざまな原因が指摘されています。
事前にクリップの外れに気付くことはできなかったのか。
天井裏に案内してもらいました。
ところが。
暗く狭く空調などの設備が込み入っており天井裏に立ち入ることさえできませんでした。
そもそも、ほとんどの天井は容易に点検できません。
天井裏の専門的な点検を行う団体です。
全国で、およそ400か所の大型施設を点検した結果多くの施設で、クリップの外れや金具の破損などが見つかりました。
今夜は、天井の危険性についての調査を続けていらっしゃいます、東京大学生産技術研究所教授の、川口健一さんにお越しいただきました。
私たち、天井が落ちてくることを考えもしないで生活をしているわけですけれども、この天井の中を見てみますと、今のリポートにありましたように、揺れによって、支えてるクリップが外れやすかったり、点検がしにくかったりということが分かってきて、怖いですね。
そうですね、まず最初にお伝えしたいことというのは、これは高い所にある重たいものが、ある日突然、落ちてくると、それによって、人命が危険にさらされる、このことですね。
このことを、これからどういうふうに解決していくかという、これが一番大きな問題であるということですね。
今おっしゃったように、こちらに天井材がありますが、これはいわゆる内装材と呼ばれるものですね。
ので、裸のままですと、中にある配線等が見えてしまって、見栄えが悪いということで、そこにつけるお洋服のようなものであるということですね。
これが落ちてくるというのが、今、問題になってるんですね。
今のリポートの中で、クリップ、この天井の重さを支えているクリップが外れてしまうと。
これ、具体的にどういう構図で、入っていってそれが外れてしまうんですか?
そうですね。
こちらに実物がございますが、まず、ふだんは、この下にあるこののぐちと呼ばれる材料から、留めつけている、これがクリップなんですね。
これがしっかりとここにくっついてるわけですけれども、この重たい天井とともに揺すられているうちに、このツメがだんだんと開いて、引っ掛かりが取れてしまう。
これが同時に起きて、天井が落ちてしまうということですね。
そして、その揺れとは関係なく、プールなどでも天井が落ちる。
そうですね、地震だけではないんですね。
実際、落ちる理由としては、湿気であるとか、雨漏りであるとか、そういったことでも落ちます。
それによって、例えば石膏ボードの、このビスの頭が抜けるっていうようなことで、ここから下ですね、クリップではなくて、ここから下が落ちてしまうというようなこと。
天井には非常に、そういう弱点がたくさんあるシステムになってますね。
いつのまにか重くなってしまって、支えきれなくなると。
そういうことですね。
ですが、例えば皆さんのお宅にも、天井がたくさんあると思いますが、こういったものは、さほどの高さにはないので、これがすぐ、仮に落ちたとしても、それは危険ということにはなりません。
そこらへんは安心していただきたいんですが、一番問題になるのは、やはり高い所に重たい天井が広い面積があると、しかもそこに大勢の人が集まる。
こういった条件が重なったときに、問題となるわけですね。
どうしてそういった天井が広く一般的に使われるようになってしまったんですか?
そうですね。
天井というのは、こちらに見るように、内装材と呼ばれるものがあります。
内装材っていうのは、建物を支えているわけではなくて、先ほどの見栄えをよくするようなものですから、なるべく短期間にきれいに、大面積を仕上げなければいけないというものですね。
そういったものが最初、小さい建物で始まるわけですが、高度成長やバブルを経て、知らないうちに大きな天井、しかも重たい天井材にも、そういったきゃしゃなデザインがそのまま使われてきたということが、現在、気が付くと、周りにビスがあることにつながっていると思います。
さあ、そこで冒頭でお伝えしましたように、国は揺れに強い天井の基準を作り、今月から施行されました。
対象となるものですけれども、こちら、ご覧いただきましょう。
広さが200平方メートル以上で、高さが6メートル以上の空間の天井です。
4月以降に着工する新築や増築の建物に限られます。
しかし、新基準を取り入れようとする現場では、混乱も生じています。
校舎の改修工事を進めている阪南大学です。
天井の高さは6メートル以下のため新基準の適用の対象ではありません。
しかし、学生の安全を考慮し自主的に耐震性の高い天井を設置することにしました。
新基準のポイントは主に3つです。
部品の強度を高めしっかりネジで固定すること。
天井の揺れを抑えるために必要な数の斜め材を設置すること。
天井と壁の間に6センチ以上の隙間をあけること。
揺れた天井が壁にぶつかって壊れるのを防ぐためです。
地震の揺れには強くなりますが工事が始まると課題も見えてきました。
例えば、クリップを留める作業。
これまでは、慣れた作業員なら片手であっという間に留められました。
しかし、新基準では一つ一つ道具を使ってネジ留めしなければなりません。
新基準に合わせると工期が長引き人件費は大幅にかさむと危惧されています。
一方、既存の天井を新基準に適合するものに替えたくても断念せざるをえなかった施設もあります。
半年前から改修工事を始めた体育館。
入ってみると、一面の足場。
体育館は、高さ最大16メートル横幅は50メートルもあり足場を組むだけで2か月かかりました。
ようやくたどりついた天井裏は複雑な構造で換気用の配管などが入り組んでいます。
そのため新基準で必要な斜め材が十分に設置できないことが分かりました。
検討を重ねた結果古い天井を撤去しそのまま何も張らないことにしました。
張り替えよりも撤去。
文部科学省は全国およそ8700の学校でつり天井の撤去を進めています。
避難所にも使われる体育館。
断熱など天井が持つ機能も重要ですができるだけ早く安全を確保するには撤去もやむなしと考えたからです。
一方、今後の新築にあたって新基準への対応に頭を抱える施設もあります。
その一つが映画館です。
天井板を厚くして密閉することで音漏れを防いできました。
しかし、新基準では壁との隙間を設ける必要があります。
新たな映画館の建設を進めるうえで、隙間をあけつつ音を漏らさない技術の開発に迫られています。
新基準を設けた国土交通省。
リスクを減らすために取り組みへの理解と協力を呼びかけています。
国はとにかく揺れに強い天井の基準を作ったわけですけれども、現場を見てみますと、施工に時間がかかったり、コストがかかるという声が聞こえてきますが、その天井の危険性の調査を続けてこられたお立場からは、この基準というのはどう受け止めていらっしゃいますか?
そうですね。
行政がなんとかしなければいけない、手を打ったという意味では、一定の評価はできるんですが、先ほど来申し上げているように、問題は、その落下現象から、どうやって人命を守るかというですね、その点では今回の基準は、耐震、あるいは耐震補強にかなり偏ってしまっているわけです。
そうすると、かたく重たい天井、どんどん補強をして、かたく重たい天井になっていく。
これは本来、頭の上に重たいものをなるべく減らしていこうということからは、むしろ逆行していくので、その点では、問題点、欠点の多い基準の改正になったのではないかと思っています。
なかなかコスト面とか、足場を組んで時間がかかる作業になるために、学校の体育館では、完全に天井を取り払うといったことも行われてるようなんですけれども、取り払ってしまった場合、確かに重いものは頭上になくなりますが、天井って、そもそもなぜ必要だったんだろうかというふうな問いも浮かんでくるんですけれども。
そうですね。
天井というのは、先ほど申し上げたような、美観のほかにも、音響だとか、断熱だとか、あるいは照明が明るくなるとか、いろんな機能が、空間の環境をよくしていくための材料、内装材なわけですね。
ですので、これを撤去してしまうと、これは単純に空間のクオリティーを台なしにしてしまう、あるいは落としてしまうので、こういったことをなるべく温存したまま、しかも、安全性を高めていくということが必要だと思いますね。
広い空間で天井が高い所で、もしかして天井に危険性が潜んでいるのではないかと思った方々にとって、もう少し簡易に安全性を高める、しかも、環境を維持しながら、やるやり方って、ないんでしょうか?
典型的な例としては、落下防止ネット・フェイルセーフと呼ばれるわけですが、というような方法があります。
これは天井の下にネットと補強用のケーブルをきちんと配置をいたしまして、今までの天井を使いつつも、仮になんらかの理由で、落ちてしまっても、人がいる所には達しないと、そういう方法があるんですね。
ただ、見栄えっていうことを考えると、ちょっと抵抗があるという方もいらっしゃるかもしれませんし、本当に安全性と、そして環境と見栄えというのを両立させていける、なんかほかの方法というのはないんでしょうか?
そうですね。
やはり安全性という意味では、天井材そのものを軽くやわらかくしていくということが、非常に効果的です。
例えば、こちらにありますような、これは膜天井と呼ばれる素材です。
ちょっと持っていただけますか?
軽い。
そうですね。
壁紙のような。
そうですね。
これは1ミリにも満たないような、非常に薄いものです。
こういったものを2例えば、先ほどの美観という意味では、美しく見せるという意味では、こういった素材を活用していくことで、地震のときにまず落ちませんし、仮に落ちたとしても、人を傷つけることがないというものですね。
こういった素材、やわらかくて軽いもの、こういった素材をどんどん今、開発していくということが、非常に重要なことではないかというふうに思っています。
天井といえばつり天井で、ずっときたわけですけれども、新たな発想で危険性を除去していくっていうことから、選択肢がどんどん増えるといいですね。
そうですね。
基準は出来たけれど、耐震ということだけでは解決しないんですね。
2014/04/08(火) 19:30〜19:58
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代「まさかの天井落下をどう防ぐ」[字]

東日本大震災で天井落下が相次ぎ、今月、落下防止の基準が初めて施行される。これまで見過ごされてきた天井落下の危険性と、新基準の対策が進む体育館などの様子を伝える。

詳細情報
番組内容
【ゲスト】東京大学生産技術研究所教授…川口健一,【キャスター】国谷裕子
出演者
【ゲスト】東京大学生産技術研究所教授…川口健一,【キャスター】国谷裕子

ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事

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