(宮部たまき)それでは美和子さんの初の単行本出版を祝って…。
(たまき)カンパ〜イ!
(3人)乾杯!美和子さんおめでとうございます。
(杉下右京)おめでとうございます。
(亀山美和子)ありがとうございます。
いやぁ…照れますなぁ。
ハハハ…。
(亀山薫)俺も照れますなぁ夫としてアハハ…。
君が照れる事ありませんよ。
あそっかハハハ…。
何だかうれしいわ。
美和子さんが書いた本が本屋さんに並ぶんですよ。
ね〜?確か出版社は讃光社でしたね?はい。
明日正式に契約を交わす予定です。
讃光社は歴史ある出版社ですからねぇ。
そこから本が出せるというのはとても名誉な事だと思いますよ。
いろいろありましたけど何とかたどり着く事ができました。
で題名は何になったの?『沈黙の森』っていいます。
大手企業の安全管理をテーマにしたノンフィクションだそうです。
じゃ今日は思いっきり飲んでください。
ね?酔いつぶれたらな俺が担いで帰ってやるからな。
言ったな?じゃあ今日は美和子飲んじゃうからね。
よし飲んじゃえ〜。
再び乾杯!
(米沢守)引きずられた形跡がありますねぇ。
どこか別の場所で殺されて運ばれてきたようです。
(三浦信輔)頭に傷があるな。
(米沢)恐らくその打撲傷が死因でしょう。
死亡推定時刻は昨夜の午後10時から午前0時といったとこでしょうか。
(伊丹憲一)ったく遅えなぁ…。
(ため息)
(芹沢慶二)あっ来ましたよ。
(伊丹)はい。
お願いします。
(伊丹)おい…遅えよカメ子。
カメ子…!?亀山美和子略して「カメ子」だ。
はあ?来い。
ちょっと待ってくださいよ。
説明してくださいよどういうわけなのか。
被害者を確認してほしいんです。
行けよほら。
うん…。
(美和子)勝村さん…!?やっぱ知り合いか。
携帯電話の最後の着信があなたでした。
(三浦)被害者おたくとはどういうご関係で?編集者の人です。
私の本を担当してました。
という事は讃光社の社員の方ですね?今日正式な契約を交わすとおっしゃってましたね?はい。
昼過ぎに出版社で会う予定でした。
最後の電話というのはいつの事でしょう?昨日右京さんたちと飲む前ですから7時過ぎです。
原稿を送ったって連絡を…。
あ〜あのあの…俺らにわからない話をしないでもらえますか。
あとで説明してやっから。
(伊丹)今説明しろよ!うるせえ!血の色にしては鮮やかですね。
そうなんです。
インク…かもしれません。
インク?勝村さん原稿の書き込みにいつも赤いペンを使ってましたから。
なるほど。
インクの色ですか…。
(社員)勝村さんを恨んでいた人間ですか?
(伊丹)ええ。
心当たりありませんか?死んだ人の事を悪く言いたくありませんけど恨んでた奴なら何人もいたと思いますね。
何しろあの人社内じゃ異端児でしたから。
(三浦)と言いますと?会社の方針に盾ついたり当たる見込みのない企画を押し通そうとしたり作家ともよく衝突してました。
最近誰かとトラブルになったというような事は?あっそういや庄司先生とえらい揉めてたな…。
庄司先生ってもしかして庄司タケルですか?
(社員)ええ。
おぉ〜。
誰だ?その庄司タケルって。
ベストセラー作家ですよ。
『BitterLove』って小説知りません?ね?ああ聞いた事あるな。
元はキャバクラのボーイで夜の世界の裏側を書いたブログが人気を呼んで作家デビューした人です。
(三浦)その作家と被害者揉めてたんですか?ええ…。
3日ほど前でしたかね庄司先生がえらい剣幕で…。
(庄司タケル)殺すぞてめえ!!
(日高正吾)庄司先生!や…やめなさい!
(庄司)おい!
(勝村繁彦)離したまえ!「殺すぞ」…被害者にそう言ってたんですか?
(社員)庄司先生もなかなか気性の激しい人ですから。
あっ…!
(伊丹)あ…ったく!どこにでも出てきますねぇ。
座敷わらしですか?おたくら。
会うと運が良くなるよ〜。
ふざけんな!
(三浦)とにかく庄司タケルのアリバイ取るぞ。
どうも。
(伊丹)ついてくんなよ。
引き続きよろしくお願いします。
亡くなられた勝村さんは庄司タケルさんの作品を担当なさっていたのですか?いえ担当の編集者はあの人じゃありません。
おや別の方でしたか。
(社員)ええ。
日高さんですね?あなたが庄司タケルさんの小説を担当なさっていると伺いました。
小説すごい人気みたいですね。
ああ…。
庄司先生は時代が生み出した作家です。
マーケットはまだまだ広がりますよ。
その庄司タケルさんなんですが亡くなられた勝村さんと何かトラブルになっていたそうですねぇ。
ああ…勝村は血の気の多い男でしたからね。
作家とのケンカはしょっちゅうでした。
しかし庄司さんの担当編集者はあなたですよね。
はい。
つまり勝村さんは自分と仕事上の接点のない作家とトラブルになっていたという事になりますよね?何がおっしゃりたいんですか?あ教えてもらいたいんですよ揉めていた理由を。
さあ私に訊かれても…。
お2人がケンカなさった時あなたが止めに入ったと聞いたんですがねぇ。
勝村のケンカに理由なんかないんですよ。
とおっしゃいますと?自分が認めない相手には誰彼構わず食ってかかるそういう男でした。
庄司先生が立腹されたのも無理はありません。
うん…それで「殺すぞ」ですか…。
あそういえば美和子が言ってましたよ。
勝村さんに送った原稿はいつも真っ赤になって返ってくるって。
真っ赤になってですか。
ええ。
あちこち手を入れられて無駄な文章は塗りつぶされて…。
相当厳しい編集者だったみたいですね。
美和子さんを認めるがゆえの厳しさだったのでしょうねぇ。
なるほど日高さんのおっしゃっていたとおりです。
勝村さんはご自分の認めない相手にはとことん辛辣だったようですねぇ。
え?今月号の『文芸世界』にコラムを書いていらっしゃいました。
へえ…。
(角田六郎)暇か?あうっす。
課長マイカップ置くのやめてくださいね。
堅い事言うなよ。
何読んでんだ?文芸誌のコラムです。
事件の被害者が書いたものですがとても厳しい意見ですよ。
何て言ってるんです?ええ…。
「最近の若い作家の中には重厚な小説の書き手が極めて乏しい」「庄司タケルの作品に至ってはテーマ性が希薄で見るべきものは何もない」そう述べていますね。
そりゃ腹も立つわけだ。
これを読んだ庄司タケルはカッとなって勝村さんを…。
庄司タケルってあの『BitterLove』の作家の…?おや課長ご存じでしたか?うん。
流行り物はね大体チェックしてんだよ。
若い女の子に大人気なんだろ?お読みになった事は?読まないよ。
あ…写真でね顔見ただけ。
あれいい男だねぇ。
ちょいワルな感じがねあれ人気が出るわなぁ。
ちょいワルねぇ。
やはり頭部の外傷が死因でしたか。
ええ。
それから亀山夫人がおっしゃってたとおり指先に付着していたのは赤いインクでした。
ちなみにそのインクによる被害者の指紋が編集部の机やコピー機など数か所から確認されています。
汚れた手であちこち触ったってわけですか?
(米沢)もっともこれは事件日以前に付いた指紋かもしれませんけど。
ああ…。
美和子さんからの着信が午後7時8分。
その後メールで送られてきた原稿を確認して出版社を出た。
やっぱり庄司タケルのアリバイが気になりますね。
その庄司タケルという作家かなり派手な過去を持ってました。
とおっしゃいますと?キャバクラでボーイをしていた頃に傷害で逮捕歴があります。
傷害…?どのような?客とケンカして相手の頭をビール瓶で殴ったそうです。
興奮すると何をしでかすかわからないタイプのようですな。
ちょいワルどこじゃないっすね。
何でそんな奴が人気あるかなぁ…。
私の仮説によりますとワケありの男性というのは女性の興味をそそる場合が多々あるようです。
ある意味神秘的に見えるんでしょうなぁ。
そんなもんすかね。
ただし同じワケありの男性でもただの怪しい人間にしか見えない場合もあります。
残念ながら私は後者のタイプのようです。
はあ〜すっごい部屋ですね。
アリバイならさっき刑事たちに話したけど。
申し訳ありませんねぇ。
もう一度お願いできますか。
(ため息)明け方まで飲んでた。
六本木。
女と一緒。
あ…ちなみに殺された勝村さんと何かトラブルになってたそうですね?あいつ俺を憎んでたんだよ。
一方的にね。
憎んでた…?なぜでしょう?さあ…。
こういう部屋に住んでるからじゃない?ねえ…。
どう?この景色。
まさに空中の楼閣といった趣ですねぇ。
いいもんだよ。
毎日こうやって世の中を見下すのは。
見下す?「見下ろす」の間違いではありませんか?見下ろしてるうちに見下すようになるんだよ。
世の中には2種類の人間がいる。
人を見下す奴と人に見下される奴。
では殺された勝村さんはどちらだったのでしょう?俺の小説読んだ事ある?ああ…申し訳ない。
読まなくていいよ。
くだらねえから。
またまた。
すごい人気らしいじゃないですか。
俺が昔何の仕事をしていたか知ってんだろ?確か接客のお仕事を。
そうキャバクラのボーイ。
人を見る目だけは無駄に磨かれたよ。
小説をお書きになるうえでは役に立つでしょうねぇ。
…まあね。
ちなみにあんたは…。
熱血漢でお人よしバカ正直で損するタイプ。
(庄司)亭主関白を気取っても結局は女の尻に敷かれている。
…当たってる?いえ全然。
フッ…。
今どきのバカな女どもが読みたがってる小説も手に取るようにわかるよ。
まぁこれからもせいぜい稼がせてもらうよ。
(チャイム)はいよ…。
(庄司)何だよさっきの奴らじゃん。
(庄司)ねえ〜!出て。
…あ?
(庄司)俺あいつら嫌い。
だ…誰?
(笑い)捜査一課の伊丹〜。
(伊丹)「何でお前がいるんだよ…?」お前らこそもう聞き込みは済んだんじゃねえのか〜?
(芹沢)「あの庄司タケルさんそこにいます?」いるけどお前らと話したくないみたいよ〜。
(三浦)「こっちは話す必要がある」
(伊丹)「崩れたんだよアリバイが」…えっ!?「ゆうべは六本木で朝まで飲んでいた」…そう言いましたよね?しかしお店の防犯カメラにあなたの姿は映っていなかった。
昔からカメラが苦手でね。
(芹沢)は?
(庄司)学校の集合写真はどれも下を向いて写ってる。
フッ…笑えるよ。
あの…ふざけないでもらえますか。
(芹沢)あなたの交際相手が面白い事を教えてくれました。
アリバイを証言するようあなたに頼まれたって。
だから女は信用できねえんだよ。
庄司さん昨夜は本当はどちらにいらしたのですか?ここで仕事をしていた。
働き者よ俺。
何で嘘ついたんですか?面倒に巻き込まれたくなかった。
それに…。
それに?嫌いなんだよ。
あんたら公務員が。
あぁ〜庄司タケル絶対怪しいですよ。
庄司さんが犯人だったら大騒ぎになりますね。
今すごい人気なんでしょう?嫌な野郎ですよ。
もう性格最悪。
何怒ってるのさ?お前こそちっとは怒れ!今になって出版中止なんだろ?ちょっとひどくねえか?そうですよ。
理不尽な話ですよ。
(たまき・亀山)ねえ?仕方ありませんよ。
まだ契約前だったしもともと勝村さんが1人で通してくれた企画でしたから。
それにしたってよ〜。
くよくよしたって始まらないっしょ〜。
まあ明日にでも別の出版社に持ち込んでみますよ。
そうね。
またすぐにでも次のチャンスが巡ってくるわ。
同感ですねぇ。
読ませていただきました。
地道に取材を重ねたとてもいい原稿だと思いますよ。
そ…そうですか?真実に鋭く切り込みながらもいたずらに読者の危機感を煽り立てる事なく首尾一貫して理性的な語り口が保たれています。
すごい絶賛ですね。
いやぁ右京さんに褒められると自信がよみがえりますね。
俺じゃダメなわけね…ハハ。
わけてもエリセ化粧品の四国工場に関するレポートはぜひとも世に問いたい内容ですね。
エリセ化粧品ってあの有名な…?ええ。
業界で屈指の有名ブランドです。
だけどこの会社重大な環境汚染に関与してる疑いがあって…。
(たまき)どういう事?エリセ化粧品の四国工場では機器の洗浄に有機塩素系溶液を使ってるんです。
この洗浄液が配管設備のずさんな管理のせいで何年にもわたって地下に染み出した可能性があるんです。
まあ…。
有害物質は地下水の層にまで到達し水脈に沿って拡散している…。
そのような仮説がきめ細かなデータとインタビューによって裏付けられています。
その汚染今まで誰も気がつかなかったのか?指摘する研究者もいたんだけどエリセ化粧品側は根拠が不十分だという理由で関連を否定したの。
汚染地域は何キロも離れた村だしまとまったレポートは今までに存在しなかったから。
でもこういう原稿が出版中止になるなんて…。
残念ですねぇ。
かたや庄司タケルの本は数百万部の売り上げですよ。
ま人気者にはかなわないって事ですよ。
ケッ!庄司タケルさんの本読みましたけどやっぱり若い人向けの内容ですよね?たまきさんには物足りませんか?そうですね私はもうちょっと読みごたえのある本が好きだな。
あなたは案外難解な小説を好みますからねぇ。
ええ。
難解な人と暮らしてましたから。
うっ…。
これすごく目を引く表紙でしょう?平積みにされてたから思わず手に取っちゃった。
あ…その装丁の人今売れっ子なんですよ。
私の本の表紙も勝村さんがこの人に頼んでたんです。
はぁ〜。
よろしいですか?
(安藤芳樹)勝村さんからは何度も仕事を受けてましたよ。
とても厳しい方でした。
今回も『沈黙の森』の装丁を頼まれていらしたそうですね?
(安藤)はい。
出版が中止になって残念です。
とてもいい原稿だと思いましたから。
あっあれ書いたの俺のカミさんなんですよ。
(安藤)ああそうでしたか。
取材は丁寧で文章には人を引き込む力がある。
感服しましたよ。
僕も同感です。
読者に語りかけるように始まる冒頭もなかなか印象的でしたよね。
「あなたの子供時代の記憶に森は存在するだろうか」「緑に包まれた場所は存在するだろうか」「その場所であなたは何を思いどんな未来を夢見ただろうか」確かに印象的ですねぇ。
勝村さんの最後の仕事です。
何とか出版してほしかったんですが…。
その勝村さんの事で1つよろしいですか?あはあ…。
どうも作家の庄司タケルと揉めてたらしいんですけれどもその原因ご存じないかと思いまして。
あ…それでしたら映画が絡んでたみたいですね。
映画?『BitterLove』は来年映画化が決定してるんです。
その件に関連して何かトラブルでも?ええ。
1週間ほど前でしたか…。
(庄司)あんた俺に恨みでもあるのか?
(勝村)恨み?バカ言わないでくれ。
私は君に恨みなどないしそもそも興味もない。
(日高)勝村さんちょっと口慎みなさいよあんた。
だったら何で俺の邪魔をする?俺の小説が映画になるのを何で妨害するんだ!?私は自分のすべき事をしているだけだ。
(日高)勝村さん!!
(庄司)ああそうかいわかったよ。
あんたがそのつもりなら俺はもうおたくでは書かねえよ。
そんな…庄司先生。
(庄司)『BitterLove』の続編はよその出版社から出す。
(日高)えっ!?ちょ…ちょっと待ってください!先生!ちょっと…!小説の映画化を妨害ですか…。
何でまた?さあ。
詳しい事は僕にはさっぱり…。
あどうぞコーヒー飲んでください。
あ…。
これですね。
おやサイン会があるようですねぇ。
ありがとうございました。
やった整理券ゲット!マジ楽しみだよね庄司先生チョーいい男だし。
ちょっとよろしいですか?
(女子高生たち)…はい。
お2人とも庄司タケルさんのサイン会にいらっしゃるんですね?そうだけど…。
庄司タケルさんの小説はどんなところが面白いですか?どんなところって読めばわかるよね?それ答えになってないじゃん。
やっぱり?ハハ…。
映画もあるしね〜。
ね〜チョー楽しみ!マジ見るし。
夏美マスカラ速攻買ったし!え…え?夏美マスカラって?知らないの!?仕方ないか。
仕方ないよ。
夏美が使ってるマスカラ。
えーと夏美って誰?察するに小説の中の主人公の名前でしょうか?そう。
これだよ夏美マスカラ。
夏美が彼氏と初デートの時に塗ってくの。
よろしいですか?どうぞ。
なるほど。
小説の中の主人公が愛用している製品が実際に若い方の間で人気になっているわけですね。
そう!それつけてくとマジで両思いになれるって噂だし。
(2人)ね〜!マジで?
(2人)マジマジ!亀山君。
はい。
あっ!「エリセ」…!?どうもありがとう。
大変参考になりました。
はい。
行こう行こう行こう。
(早乙女佳子)こちらが商品のサンプルです。
(佳子)希少価値を出すため映画の上映期間中のみの限定発売にする予定です。
うんいいんじゃない?つきましては次回お書きになる小説の中でもわが社の商品を登場させていただけると…。
オッケー。
美人の言う事はたいてい聞くよ。
アハ…ありがとうございます。
(日高の笑い声)あところで先生の次の作品も讃光社さんから…?ええもちろんうちで出版させていただきます。
そうですか。
今後ともよろしくお願いいたします。
(日高)こちらこそよろしくどうぞ。
では。
(日高)ありがとうございました。
失礼いたします。
あ失礼します。
(庄司)あれ?またあなた方ですか!あ〜すいませんね。
ちょっとお尋ねしたい事が。
今の方はエリセ化粧品の方ですね?関係ないでしょう!今打ち合わせの最中…。
まあまあまあ…。
追い返しちゃかわいそうじゃん。
しかし先生。
いいって。
俺さこの人気に入ってんだよね。
恐縮です。
キャバクラのボーイなんかしてると人を見る目が無駄に鋭くなるって言ったろ?だから興味わくんだよね。
たまに見透かせない奴と出会うと。
褒め言葉と受け取っておきます。
で何の話?あ…これなんですけども。
庄司先生の本が何か?この小説の中でヒロインはエリセ化粧品の製品を愛用していますねぇ。
小説のヒットとともに同社の製品は売り上げが急増していると聞きました。
別に宣伝するつもりはなかったんだけどねぇ。
この『BitterLove』が映画化されるにあたってエリセ化粧品がスポンサーに決定したそうですね?映画とコラボレートした商品の開発も進んでるとか。
今の女性はその件でお見えになっていたのではありませんか?そうだけど?そうでしょうねぇ。
しかしながらもし勝村さんが生きていらしたら映画化はスムーズにはいかなかったかもしれませんねぇ。
(日高)どういう意味ですか?勝村さんは亡くなる直前ある本を出版なさろうとしていました。
その内容はエリセ化粧品の安全管理体制に疑問を投げかけるものでした。
工場のずさんな運営が周辺環境を汚染し住民に健康被害が出てるってね。
そんな原稿が出版されれば当然エリセ化粧品はクレームをつけてくるでしょうねぇ。
映画のスポンサーを降りるとさえ言い出しかねない。
あなたが勝村さんと揉めていた原因はそれだったんですね?正解。
映画化の話がポシャッたら俺に入る金も入らなくなる。
出版を思いとどまるよう勝村さんに忠告なさった?言ってやったよ。
これ以上ナメた真似しやがったら二度とおたくでは書かないって。
それでもあいつは聞く耳を持たなかった。
(日高)勝村さんが悪いんだ!何度説得してもあの人は…。
(勝村)『沈黙の森』は世に出すべき本だ。
必ず局長に企画を通してみせる。
あのなこっちは迷惑してるんだよ!いやまあ…先生。
(日高)映画が中止になったらどう責任取るつもりですか?私の知った事ではない。
腐った企業の息のかかった映画などさっさと潰れればいい。
(庄司)この野郎殺すぞ!
(日高)先生…!なかなか骨のある編集者だったんですねぇ。
今じゃ骨だけになっちまったけどねぇ。
日高さんちょっといいですか。
(日高)えっ?この『沈黙の森』の原稿勝村さんのデスクに残ってたんですけど。
そんなものもう必要ない。
捨てておいてくれ。
そうそうゴミはゴミ箱に。
じゃ捨てときます。
ちょっと待った!俺が引き取りますよ。
勝手にすりゃいいでしょ。
さあ先生行きましょう。
さあ。
じゃ…また。
庄司タケルさーんご同行願えますか。
何なんだ!?君たちは。
事件の夜被害者に会ってますよね?現れたんですよ目撃者が。
おい!本当か!?ああ。
…つうかよおめえは何でいるんだよ?出版社の向かいにコンビニあるでしょう。
そこのバイトの女性あなたのファンだそうですよ。
(三浦)事件の夜出版社の入り口であなたの姿見たって言ってるんですよ。
チッ…見てんじゃねえっつうんだよ。
(庄司)おいてめえも大概にしろよな…!何なんです?出版とりやめろ!『沈黙の森』は必ず出版する。
おい!
(三浦)事実だと認めますか?小説の映画化でもう一儲けしてやるつもりだったよ。
なのにあいつがそれを邪魔をした。
(芹沢)「それで殺したんですか?」「殺しちゃいねえよ」「言ってやっただけだよ」「三流ジャーナリストのくだらない本なんて出版するだけ無駄だってな」うーあの野郎…。
どうせ誰も読みやしねえ本だよ。
おい!おい入ってきてんじゃねえ!てめえ…。
離せ…!これ読んでみろ。
あれゴミはゴミ箱にじゃなかったのか?勝村さんが必死で世に出そうとしてた原稿だ。
こいつがゴミかどうかてめえの目で確かめてみろほら!いいからもうとっとと出てけよ!ほら!何すんだ!?この野郎…。
(芹沢)先輩!
(三浦)静かにしろ!
(伊丹)興奮してんじゃねえぞ…!チッ…クソッ。
妙ですね。
は…?僕の読んだ原稿と文章が微妙に変わっていますね。
え…?行きましょう。
あ…右京さん!やっぱりわかんねえなぁあの人。
(美和子)これで全部です。
日付順に並べました。
こちらが最初に書かれた原稿…。
はい。
その後何度も推敲を重ねて手を加えられたわけですね?
(美和子)はい。
7回書き直してこれが最後に書いたものです。
最後の原稿を勝村さんに送ったのが11月2日。
すなわち事件のあった日…。
送信時刻はわかりますか?午後7時過ぎです。
送ってすぐ勝村さんに電話しましたから。
そしてその数時間後に彼は殺された。
あの…一体何調べてるんですか?やはり原稿が犯人を教えてくれました。
(安藤)今度はまたどういったご用件ですか?実は折り入ってお願いがありまして。
(安藤)捜査の協力だったら喜んでしますけど僕がお話しできる事はもう全部…。
いやいや今日は作品を見せてもらいたくて来たんですよ。
作品というと?あなたが『沈黙の森』の表紙のためにお描きになった絵です。
森の中をホタルが飛んでいる絵だったそうですね。
美和子のやつすごく気に入ってたみたいですよ。
あぁあれだったら勝村さんに渡して…。
ああその後取りに行かれたとばかり思っていました。
讃光社の方がおっしゃってましたよ。
事件の翌日あなたが出版社にお見えになって勝村さんのデスクから絵を持っていかれたと。
ああ…そういえばそうだったかな。
その絵見せてもらっていいですかね〜?捨てました。
おやおや。
せっかくお描きになった絵を捨ててしまわれた?出版が中止になった以上もう必要ありませんから。
そうですか残念でしたね。
仕方ありませんねぇ。
あ…ちょっとお部屋を拝見しても構いませんか?え…?装丁家の方の仕事場などなかなか見る事ができませんからねぇ。
…どうぞご自由に。
ありがとうございます。
あっこれが元になっているわけですか?右京さん。
カメラがいっぱい。
写真を表紙になさる場合もあるんですか?手描き写真パソコンのデザインいろいろですよ。
原稿を読んでその都度わき起こったイメージを大切にしてます。
では美和子さんの原稿をお読みになった時にはホタルのイメージがわいてきたわけですね?環境汚染によって姿を消したホタルがパッと頭に浮かびました。
ホタルの群れに森の再生への願いを込めよう…そう思ったんです。
あ…森で思い出しました。
先日あなたは我々の前で原稿の冒頭を口にされました。
「あなたの子供時代の記憶に森は存在するだろうか」「緑に包まれた場所は存在するだろうか」それが何か?どうして冒頭の文章をご存じだったのでしょう?どうしてってそれは原稿を拝見して…。
無論そうでしょうねぇ。
しかし不思議です。
あの一節は最後の原稿で初めて書き加えられた文章でしたよ。
最後の原稿…?ええ。
美和子さんは『沈黙の森』の出版にあたり文章の推敲を重ね7回ほど原稿を書き直しています。
あなたが口にした冒頭の一節は最後の手直しの時に初めて書き加えられたものだった。
つまりそれ以前の原稿には書かれていない文章だったんです。
ちなみに美和子さんが最後の原稿を書き上げ勝村さんにメールを送ったのが事件の日の午後7時過ぎ。
勝村さんのパソコンにメールの転送記録はありません。
安藤さん。
あなたが冒頭の文章を知っている理由はただ1つ。
事件の日の午後7時以降勝村さんに会い彼の手から原稿を受け取ったからです。
しかしここで疑問です。
あなたはなぜその事実を我々に黙っていたのでしょう?あの夜勝村さんに会っていた事は認めますよね?たとえ会っていたとしてもそれがあの人を殺した証拠にはならない。
ええおっしゃるとおり。
第一僕には動機がありません。
あの人を殺すという動機が。
亀山君。
はい。
安藤さん。
この絵ですね?あなたが出版社に取りに行ったのは。
どうしてこれが…。
よく見てください。
原画じゃありません。
カラーコピーですよ。
令状を取ったうえで出版社のコピー機の残存データから復元したものです。
これがコピーされたのは事件があった日の午後9時過ぎ。
しかしこの絵妙じゃありませんか?ええ。
ホタルの光って普通黄緑色ですよね。
なのにこれはどうして赤いんでしょうか?やめろ…。
美和子さんが見た原画ではホタルは黄緑だったそうです。
もしかして誰かがホタルを赤く塗りつぶした…。
やめろ!勝村さんの死体の指先には赤いインクが付着していました。
ホタルを赤く塗りつぶしたのは勝村さんだったんですね。
そうです…あの人です。
勝村さんはあの晩仕事場で美和子さんからのメールを受け取り原稿をプリントアウトして目を通した…。
その後あなたから預かっていた表紙の原画に無断で手を加え…。
その絵のカラーコピーを取った。
彼は原画をオフィスに残しカラーコピーと原稿を持ってあの晩遅くあなたの…この事務所を訪ねました。
その時事件は起きた。
はい…。
あの人が勝手に作品に手を加える事は今までもしょっちゅうありました。
悔しかった…。
いつか認めさせてやる。
僕はずっとそれだけを思い続けて…。
しかし彼はあなたを認めなかったわけですね?勝村さんは自分の仕事に信念を持っている人でした。
でも他人の仕事を見下してたんだ…。
(安藤)文章が研ぎ澄まされてさらに良くなってますね。
(勝村)そうだろう。
表紙もインパクトのあるものにしたいと思う。
ちょっとこれを見てくれ。
これは…!?どうだ?こっちのほうがずーっと印象に残るだろう。
またですか。
また僕の作品を勝手に…。
君の絵はどうも地味でな。
もっとこう毒々しい感じが欲しかったんだよ。
(安藤)毒々しいって…。
僕はホタルの淡い光に森の再生っていう願いを込めたんですよ。
いつかホタルが森に戻ってくるっていう日をイメージして。
わかったわかった。
いつか埋め合わせはする。
まとにかく今回の表紙はこれでいこう。
全体的なデザインに取りかかってくれ。
(安藤)ちょっと待ってください!僕はまだ納得してません。
何をムキになってるんだ。
君らしくもない。
(勝村)コピーでよかったよ。
元の絵だったら一大事だった。
庄司先生の本が200万部を突破しました。
らしいな。
興味もないが。
僭越ですが僕は自分の表紙デザインも売り上げに貢献したと思っています。
おかげで僕の名前も少しは知られるようになりました。
何だ…。
君も庄司タケルと同じだな。
は?万人に受けるものをそつなく作ってそれが受け入れられて満足している。
世の中に嫌われるのが怖いんだ。
違います!僕はただ実績を積みたかった。
あなたに認めてほしくて。
勘違いするな!君の代わりなどいくらでもいる。
文句があるなら君とはこれっきりだ。
(勝村)表紙なんて所詮お飾りだろ。
(勝村)ああーっ…!!あの人に認めてほしくて…ただ認めてほしくて…!それがかなわなくて殺してしまった。
勝村さんを殺害した後あなたは…死体を運んで空き地に捨てた。
(安藤)はぁ…あぁ…。
そして翌朝まだ事件が明るみに出る前に原画を出版社に取りに行った。
(ため息)残念ですよ。
あなたが犯人だったなんて。
美和子の原稿を認めてくれたあなたが犯人だったなんて…。
申し訳ありません。
彼女のチャンスをこの手で潰してしまった。
それどころかあなたはご自分の人生まで潰してしまいましたね。
(嗚咽)そうですか。
真犯人逮捕されましたか。
復元してもらったコピーが決め手でした。
いつもご協力感謝してます。
いやいやどういたしまして。
でも何かこうスッキリしないんすよね。
はい?いや美和子が言ってたんですけどね本を出せない事よりもエリセ化粧品を糾弾できない事のほうが悔しいって。
美和子さんらしい言葉ですねぇ。
らしいですな。
あちこち出版社回ってるみたいですけどまだ契約してくれるとこはなくって。
残念ですな。
これじゃ殺された勝村さんも浮かばれませんよね。
ああ…これもう必要なくなりましたね。
庄司タケルさんの傷害事件のデータですか。
ええ一応プリントアウトしたんですが。
ちょっとよろしいですか。
あはい。
亀山君。
はい。
本籍地。
疑いは晴れたんだろ?庄司さんあなたにお渡ししたいものがあります。
読んでみろ。
しつこいねおたくらも。
お読みになるべきだと思いますよ。
あなたご自身のために。
俺のため?あんたはこの原稿を潰そうとしてたんだ。
それではご健筆を。
(テレビ)「東京プリンセスホテルから中継しています。
え〜まもなくですねこちらでは映画『ビター・ラブ』の製作発表が行われる模様です」「あ皆さん入場されたようですね」
(ナナエ)庄司先生の大ファンなので今回の夏美役すごく張り切ってます!
(司会者)ナナエさんは今後エリセ化粧品のキャンペーンガールも務めるそうですね。
はい。
頑張ります!
(司会者)ではそのエリセ化粧品の広報部早乙女さんにお話を伺いましょう。
エリセ化粧品では今回この映画とコラボレートした製品を売り出すそうですね。
はい。
10代20代の女性をメーンターゲットに…。
(佳子)「斬新なラインナップを発表する予定です」
(司会者)先生ご自身の小説が映画化されるにあたって今どんなお気持ちですか?あの…その前に1ついいかな。
次回作の話なんだけど。
(報道陣のどよめき)これは皆さんうれしいサプライズです。
庄司先生から早くも次回作の発表があるようです。
もちろん『BitterLove』の続編ですね?続編じゃない。
(報道陣のどよめき)次回作では俺の少年時代を書こうと思う。
俺の田舎は四国のド田舎でね…何にもない村だったけどホタルがたくさんいて景色だけはきれいだった。
だけど俺が中学生の頃何かがおかしくなった。
突然森からホタルが消えた。
それから何週間かして…あれは夏の終わりだったかな。
朝起きたら体がだるくて首のこの辺りにひどい湿疹ができてなかなか治らなくて…。
俺だけじゃなかった。
似たような症状に苦しむ人間が村に何人も現れた。
(庄司)「当時みんなで役所に訴えたよ」「森で何かが起きている。
調べてくださいって」
(庄司)だけど公務員ってのは冷てえもんだな。
結局は何も調べちゃくれなかった。
その時思い知ったよ。
貧乏な村の貧乏な人間は世の中から見下されるんだって。
では先生そろそろ映画のお話を…。
やめるわ。
(司会者)はい?この映画やめる。
悪いけど全部白紙に戻してくれ。
(どよめき)
(映画監督)白紙…?あ…コラボ商品の発売ももちろん中止だから。
庄司先生!?あの悪いけどこれコピーしてみんなに配って。
え…?報道陣の皆さんに。
亀山君蕎麦でも食べて帰りましょうか。
いいですね。
2014/04/08(火) 16:00〜16:58
ABCテレビ1
相棒 season6[再][字]
「空中の楼閣」
詳細情報
◇番組内容
相棒 シーズン6!杉下右京(水谷豊)と亀山薫(寺脇康文)の名コンビがあらゆる難事件に挑みます!豪華ゲストもお見逃しなく!
◇出演者
水谷豊・寺脇康文 ほか
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
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