はい。
去年11月東京。
全国から集まった人たちを前に勇気ある告白をした一人の女の子がいました。
(拍手)「私は里子です。
1歳にもならないうちに施設に預けられた私は親の事を知りません。
5歳の時に私は今の里親に引き取られました。
その時から今現在までずっと育ててもらっています。
その里親のもとには私以外にも5人の里子がいて一緒に生活しています」。
大分県に住む中学3年生です。
作文のタイトルは「マイファミリー」。
会った事のない実の親。
育ててくれた里親。
2つの家族への思いを語りました。
「そして私を手放した理由を親に聞きたくなる時も私が生まれるまでのルーツを知りたくなる時もあります。
しかし私を産んでくれた事には感謝しています。
今の里親に出会い弟となった里子たちと出会いそして周りのたくさんの人たちに支えられ私はこうして生きている」。
(一同)いただきま〜す。
涼子さんが暮らすのは「ファミリーホーム」。
最初はグーじゃんけんぽい!5人から6人の子どもを家庭で育てる国の養育制度です。
(涼子)「クリスマスの前の夜は特別だって思わない?」。
虐待育児放棄親の病気などさまざまな理由でここに来た里子たち。
涼子さんは本当のお姉さんのように弟たちを支えています。
…みたいなそういうのも思ってます。
・「Happybirthdaytoyou,Happybirthdaytoyou,」「これが私の家族」。
作文にそうつづった涼子さんと5人の弟たちの成長の物語です。
おめでとう!山あいの小さな集落にファミリーホーム「大柳ホーム」はあります。
おい!あれ?ここにもいる。
朝6時ファミリーホームの一日が始まります。
うぅ〜もっと寝たい。
里親の大柳弘幸さんと妻惠子さんです。
小学校の先生だった弘幸さん。
子どもが自立した11年前惠子さんと共に里子を引き受けるようになりました。
一番の早起きは長女の涼子さん。
涼子さんのすぐ下の弟シュンスケ君。
サッカーが大好きな中学1年生です。
2番目はやんちゃな小学5年生アキラ君。
3番目のダイキ君。
読書が趣味の小学4年生です。
4番目は小学3年生のショウタ君。
さあ持ってこう。
きちょうめんな性格です。
一番下は元気いっぱい小学2年生のヨウヘイ君です。
里親は実の親の同意の下児童相談所から養育を任されています。
里子はファミリーホームで二十歳まで育てられますがその後は自立を求められます。
今虐待や育児放棄などで親と一緒に暮らす事ができない子どもは全国でおよそ3万6,000人。
その8割以上が施設で生活しています。
ファミリーホームはそうした子どもたちをより家庭に近い環境で育てるために作られた制度です。
(弘幸)では皆さん。
(子どもたち)いただきま〜す。
里親のもとできょうだいのような触れ合いを経験し子ども同士成長し合っていく事を目指しています。
それはまだね時間がかかる。
それができたらね。
大柳さんのもとで10年間育ってきた涼子さん。
ファミリーホームを支える存在です。
休日の洗濯は涼子さんが買って出ています。
やんちゃな弟たちがきちんと服をしまえるように工夫しています。
全員集合でお願いしま〜す。
弟たちを楽しませるのも涼子さんの役目。
誕生会にはみんなをまとめてケーキ作りをします。
いや今までので一番いいかもしれない。
(涼子)なんかすごい豪華。
(惠子)すごいよ。
お母さんだったらもっとグチャグチャになる。
上手上手。
・「Happybirthdaytoyou,Happybirthdaytoyou,」・「Happybirthday,dear…Happybirthdaytoyou.」
(一同)おめでと〜!吹いていいよ。
これ?
(一同)おめでと〜!
(拍手)涼子さんは自分のお小遣いでプレゼントを用意しました。
(弟)出た〜!サッカー部で頑張るシュンスケ君には「足技Q&A」と選手名鑑。
やばいぞこれは。
プレゼントには手紙も添えました。
何?姉ちゃんこれ。
「ロ…ロ
(ろ)らさくて」?姉ちゃんこれ何て書いてんの?「ロ
(ろ)らるさくて」?「口」じゃない?
(シュンスケ)最近の「う」は「ら」に見えてしまう。
弟たちに頼られる涼子さん。
しかし里子として育ったこれまでの人生は決して明るいものではありませんでした。
涼子さんは生まれて1週間後に乳児院に預けられました。
実の親はその後行方が分からなくなりました。
「親はなぜ私を手放したのか。
一度でいいから話が聞きたい」。
そう思い続けていました。
小学6年生の母の日里親の惠子さんに贈った絵手紙です。
「わたしのおかあさんはあなた一人あなただけ」。
惠子さんは複雑な思いで手紙を受け取りました。
産んでくれたお母さんももう絶対だからどの子もそうですけどやっぱり血のつながりって濃いですよね。
でもそれが想像してもやっぱり会えない現実と…。
元気にいるかどうかも分からない本人のやっぱ諦めがこれの形になったのかな。
涼子さんは里親を本当の親だと思う事で自分を納得させようとしていました。
しかし実の親の事をどうしても考えずにはいられませんでした。
居場所だけでも知りたいと調べてもらいましたが分かりませんでした。
涼子さんは次第に大人たちが事実を隠していると思い込むようになりました。
里親に暴言を吐いたり口をきかなくなったりした事もあります。
(涼子)「クリスマスの前の夜は特別だって思わない?プーさんは立ち止まりクリストファー・ロビンを仰ぎ見ました」。
そんな涼子さんを変えていったのはこの家で出会った弟たちです。
(涼子)「クリスマスイブって?クリスマスの前の夜さ」。
実の親と別れ里子として暮らす小さな弟たち。
「姉としてみんなの力になりたい」。
その思いが涼子さんを強くしていきました。
よしみんな寝るよ。
はい上行って。
今は降ってないけどね。
11月中旬ファミリーホームに小さな事件が起きていました。
(人形をぶつける音)2番目の弟アキラ君がちょっとした事で機嫌を損ね乱暴をするようになったのです。
(惠子)じゃあイライラしないように。
(アキラ)分かった分かった。
もういい。
(弘幸)深呼吸だ深呼吸。
(惠子)深呼吸と?
(惠子)あぁ…。
(弘幸)はやばやとイラついちゃった。
(惠子)今日クラブの時にね。
(アキラ)分かった!お母さんに態度を注意されふてくされてしまいました。
暴れたと思うと急に泣きだす事もあります。
涼子さんはアキラ君の機嫌が悪い時あえて声をかけません。
ガラス割ったとか…そんな硬い物めちゃくちゃ投げないもんね。
アキラ君の気持ちを里親の大柳さんに伝えます。
(涼子)バンバンやったりね。
その時は分かんなくなってっから。
ちょっとね分かんなくなって。
まさしく「キレちゃう」っていう言葉が合うっていうのかな。
「言葉にできないけれど何かつらい思いをしたのかもしれない」。
涼子さんはそう感じていました。
アキラ君の気持ちをどうすれば理解できるのか。
こういう時ファミリーホームで開くのが「家族会議」です。
司会は涼子さんたち年上の子。
姉弟同士で最近気になる事を話し合います。
まずは話しやすいいい事から。
(拍手)
(拍手)
(弘幸)7の段覚えられた?大丈夫?涼子さんの言葉にアキラ君が口を開きました。
学校で下級生にものを投げてしまったと言いだしたのです。
(惠子)お母さんいなかったけどどういうふうに…?
(アキラ)どういうふうにって…
(弘幸)どうしてそうなった?
(弘幸)誰から?
(弘幸)何で笑われたの?更に1歳年下のダイキ君がアキラ君と友達に嫌な事を命令されたと打ち明けました。
しかしアキラ君「弟には命令していない」と否定します。
遠慮する所やないよ。
(アキラ)僕してないもん。
(惠子)でもこの前命令っていうのはしないようにしたよね。
僕はしてない。
(惠子)してない?そしたらいいじゃん。
(弘幸)じゃあもししたら学校の先生かうちにすぐ言って下さい。
嫌な命令はやめてな。
「ぶん殴るぞ」とかさ。
そんな事言ってたら家族できないよ。
うちの中で脅かし合ったんじゃ。
結局アキラ君の心を開く事はできませんでした。
何にもな〜い。
どうって事な〜い。
じゃ終わり〜。
終わり〜終わり〜終わり〜。
すご〜い。
おぃ〜!ほ〜れほ〜れほ〜れ。
暴力を振るったり命令したりしてしまう2番目の弟アキラ君。
どうすれば傷つけずに悪い事をしていると分かってもらえるか。
この日涼子さんは思い切った提案をしました。
(弘幸)弟が言わせちゃダメなの?どっちでもいいけど。
じゃあ下ネタ系のを言って。
言う事聞けよ早く!人に嫌な言葉を言わせる場面を再現し相手の気持ちを想像してもらおうというのです。
2度目の家族会議が開かれました。
アキラ君の前でシュンスケ君とダイキ君がお芝居をします。
おいお前!あ?「しっこ」って10回言って。
「しっこ」って10回言ってくれ早く。
何で?俺の言う事が聞けんのか?ぶっ殺すぞ。
蹴っ飛ばすぞ。
(ダイキ)しっこしっこしっこしっこしっこしっこしっこしっこしっこしっこ。
(シュンスケ)お前何抜かしよんのか。
蹴っ飛ばすぞ。
(ダイキ)うわ〜。
(シュンスケ)終わりです。
(弘幸)2人立って下さい。
今の事で悪いないいなと思った事。
いいなと思った事ありますか?
(弟たち)ない!じゃ悪いなと思った事1つずつ挙げて下さい。
(アキラ)はい。
(弘幸)どういう命令が?アキラ君自分から答えました。
(惠子)今週の目標じゃあちょっと書いて下さい。
家族会議のあと子どもたちは自分の行動を振り返る事ができるように毎週の目標を書く事になりました。
(惠子)名前も書いて下さい。
一応自分の。
2つでしょ?
(惠子)2つがいいな。
1つは学校。
1つ学校での事。
1つはおうちでの事。
これ学校。
「怒らない泣かない」を家と学校どっちとも。
(惠子)発表してから。
はい発表をそこでして下さい。
一生懸命自分の言葉で書いた目標。
(取材者)自分から?涼子さんの思いは届いていました。
アハハ確かにそうっすね。
誰にだって飛びつくぜ!里子として育つ涼子さんと5人の弟たち。
ぶつかり合いながらも共に歩む「家族」です。
2月涼子さんは新たな一歩を踏み出そうとしていました。
県内の高校に特待生として入学が決まったのです。
二十歳には自立しなければならない里子の涼子さん。
手に職をつけたいと5年制の看護科を選びました。
お父さん僕たち食べていい?食べてもよろしいですか?
(弘幸)まだまだ…。
ちゃんと今日はお祝いだから。
涼子さんの高校合格を祝う会。
里親兄弟に加えて近所の人たちも集まりました。
(シュンスケ)イェーイ!
(拍手)
(拍手)よろしゅうございますか?弟たちはこの日のためにお祝いのメッセージをないしょで用意していました。
ではここでお祝いの言葉を言ってもらいます。
これ?立つ?座る?そのままでいいか?
(拍手)
(拍手)そして…。
(アキラ)え?
(シュンスケ)誰かと思ったん?あのアキラ君。
(拍手)
(シュンスケ)じゃあ食べましょう!
(笑い声)涼子さんが描いていたショウタ君とヨウヘイ君2人の弟の絵が完成しました。
ほんとにやっぱりね。
よう似ちょる。
顔は似てなくてもいいんだよ。
似てない?ちょっと雰囲気はあるけどそのうれしそうな感じがいい。
俺よりうまいじゃん。
ほんとにありがとうございます。
はいそれではいきますよ。
(惠子)ちょっと硬いよ。
3月中学校卒業の日。
もう一枚。
さんはいニコニコニコ。
おめでとうございます。
涼子さんは里親の大柳さん夫婦に手紙を渡しました。
読めないこのちっちゃい字。
涼子!お母さん虫眼鏡ないと。
「お父さんお母さんへ。
今まで育ててくれて本当にありがとう。
2人には数えきれないくらいたくさんの迷惑をかけました。
本当にごめんなさい。
私はお父さんお母さんに引き取ってもらえて本当によかった」。
「私がこれから生きていく中で『お父さんお母さん』と呼べるのはきっとあなたたちしかいないと思います。
たとえどんなことがあっても。
これからもよろしくお願いします。
涼子」。
本当の気持ちを隠して書いた小学6年生の時の絵手紙。
それから3年。
今は本心からそう思っています。
はい。
いい文章です。
(惠子)涼子座ったら?
(弘幸)ハハハてれくさいんだ。
私と里親。
そして5人の大切な弟たち。
それが「私の家族」です。
2014/04/08(火) 00:40〜01:25
NHK総合1・神戸
地方発 ドキュメンタリー▽私と里親、そして弟たち〜大分・ファミリーホームの日々[字]
ひとつ屋根の下で生活する、血のつながらない6人の姉弟。虐待、育児放棄…さまざまな事情で親と暮らせない子どもたちが、一緒になって葛藤を乗り越えようとする姿を描く。
詳細情報
番組内容
大分県杵築市のファミリーホーム「大柳ホーム」。親と同居できない子どもたちを、ベテランの里親が家庭的な環境で育てている。ここでは、中3の涼子さんをはじめ、下は小2までの6人が、兄弟のように支え合いながら暮らす。そして、なにか問題が起きると「家族会議」が開かれ、子どもたち自身で解決策を見つけようとしている。ともに成長していこうと歩む涼子さんたちの半年間を見つめる。
出演者
【語り】徳永えり
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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