クローズアップ現代「命を懸けた一票〜混迷のアフガニスタン〜」 2014.04.07

テロの脅威の中、行われたアフガニスタンの大統領選挙。
命を懸けて投じた一票です。
アメリカ主導の軍事作戦でタリバン政権が崩壊してから13年。
アフガニスタンは国際社会の支援を受け国の再建を目指してきました。
しかしタリバンが復活。
テロや襲撃を繰り返しています。
治安の回復を果たせないまま年内に戦闘任務を終えるアメリカ。
住民に武器を配って自警団を作りタリバンに対抗させようとしています。
しかしその一部が犯罪に手を染め混乱に拍車をかけています。
混迷が深まるアフガニスタン。
再びテロの温床になってしまうのか。
現地からの最新報告です。
こんばんは。
「クローズアップ現代」です。
アフガニスタンの人々は国民の信頼を得られる大統領をみずからの一票で選ぶことができたのでしょうか。
ことし末までには、治安維持に大きな役割を果たしてきたアメリカをはじめとする国際部隊の大部分が任務を終え撤退すると見られていまして治安維持を含め国づくりに向けたすべての責任はアフガニスタンの人々が担うことになります。
それだけに、国のかじ取りを担うリーダーを選ぶ今回の大統領選挙は非常に重要で歴史的なものといえます。
同時多発テロ事件のあとテロの温床になっているとしてアメリカがアフガニスタンに侵攻したのが13年前のことです。
タリバン政権が倒れそのあと国際社会は4兆円を投じて国家再建を支援してきました。
日本も5000億円に上る支援を行っています。
国際社会から見捨てられ破綻国家といわれたアフガニスタンの民主化。
そして自立に向けて支援が続けられてきたのですがアフガニスタンの治安は今皮肉にも、この13年間で最悪ともいわれるほど悪化しています。
選挙を否定する反政府武装勢力タリバンが息を吹き返し勢力を広げているのです。
投票日の5日タリバンによると見られる攻撃は140件に上り市民や警察官20人が犠牲になりました。
治安の悪化でアフガニスタンの国家再建の行方はどうなるのか。
こうした中で、命の危険を承知で投票所に足を運んだ人々は5年前の大統領選挙を上回りました。
どんな思いで人々は選挙に臨んだのかまずはご覧ください。
アフガニスタン北部の町クンドゥズです。
この町に住む19歳のファティマさん。
今回初めて、選挙権を得ました。
今、小学生向けの塾で算数の講師をしています。
国際社会の支援を受けて教育が普及。
タリバン政権の下では教育の機会が奪われてきた女性も学ぶことができるようになりました。
ファティマさんは塾で働きながら大学への進学を目指しています。
選挙権が与えられるのは18歳以上。
ファティマさんも有権者登録を済ませました。
これが新しく発行してもらった有権者登録票です。
とてもうれしいです。
この一票が将来を決めるんですね。
ファティマさんはテレビ討論を見たりして候補者の訴えに強い関心を寄せてきました。
民主的な国づくりを推し進めてくれるリーダーを選びたいと考えたからです。
女性の権利や安全を保障し雇用の機会を与えてくれる候補者に投票したいと思っています。
しかし、反政府武装勢力タリバンは選挙は茶番だとして妨害を宣言。
各地でテロや襲撃を激化させます。
先月には首都カブールで外国人が多く利用する宿泊施設などを襲撃。
選挙管理委員会の本部も攻撃されました。
ファティマさんが住む地域でも選挙関係者が殺害されるなど治安が悪化。
大統領選挙に期待を寄せてきたファティマさんたちにも動揺が広がりました。
ファティマさんの地域でもここ数年、タリバンが急速に勢力を広げています。
アフガニスタン政府や国際部隊に反感を持つ人たちが次々に加わっているためです。
タリバンは選挙を妨害するため、住民たちに脅迫状を送りつけました。
「投票に行ったら命を落とす」と書かれています。
ファティマさんの家族もタリバンの脅迫を恐れ投票に行かないよう忠告しました。
投票に行くのは私たちの長年の夢です。
でも家族は同意してくれないのでまだ行くかどうか結論は出せません。
広がるタリバンの脅威。
将来の展望を見いだせない若者も増えています。
23歳のシュクリさんです。
地元の語学学校で英語を学びこの地域の治安維持を担ってきたドイツ軍の通訳として働いていました。
去年、シュクリさんのもとに突然タリバンからの脅迫状が届きました。
「お前は外国のスパイだ。
われわれに協力しなければ殺す」と書かれていました。
僕は繰り返し脅迫を受けていて身の危険を感じています。
シュクリさんはドイツに亡命を申請。
それが認められ、ことし2月1人で国を離れました。
悲しいことですがこんな状況では国を出るしかありません。
いつ戻ってこられるか全く分かりません。
シュクリさんのようにアフガニスタンからの亡命を申請する人は、去年1年間だけで4万人に上っています。
緊迫の中で迎えた投票日。
投票に行くかどうか悩んでいたファティマさんに電話で話を聞きました。
最終的に家族も同意してくれて投票できました。
本当に幸せです。
将来、治安がよく自由な国になってみんなが安心して暮らせることを願っています。
今夜はアフガニスタンに入り、取材を続けていました、須田記者と中継がつながっています。
須田さん、治安が悪化しているといわれているにもかかわらず、今回の大統領選挙の投票率は、前回を大幅に上回ると見られているんですけれども、長年投票に行くのは夢だったと語っていたファティマさんのような若い世代が押し上げてるんでしょうか?
そうですね。
大勢の若者や女性たちが投票のため、長い列を作る姿が各地で見られました。
中には、投票用紙が足りなくなりまして、急きょ、補充しなければならなかった投票所もあったほどです。
今回の選挙で、新たに有権者登録をした人は、有権者の実に3人に1人を占めるんです。
その多くは、タリバン政権崩壊後に教育を受けた世代でして、みずからの手で、国の将来をどうにかしなければならないという危機感が表れたといえると思います。
ただ、全体の10%余りの投票所が事実上、閉鎖されるなど、投票したくてもできなかった人が多かったのもまた事実です。
さらに有権者登録票の売買などの不正も事前に明らかになっていまして、今後、開票での不正がないか、注視する必要もあると思います。
若い人たちが、自分たちの手で、国をどうにかしなければならないという強い気持ちが、冒頭でも見られたように、アフガニスタンの若い人たちの情熱を感じるんですけど、一方で、ここに来て、タリバンが勢力を拡大している、なぜ拡大できてるんでしょうか?
まず、復興の遅れや、カルザイ政権の腐敗に対する国民の失望に加えまして、軍事作戦での市民の犠牲などによる反米感情に乗じて、タリバンは勢力を広げているんです。
タリバン時代のほうが、自由はなくても治安は保たれ、まだましだったと考える人ですとか、タリバンに従わないと自分や自分の家族に危険が及ぶというふうに考えて、しかたなく協力する人も多くいまして、悪循環を招いています。
今回の選挙について、アメリカなどは、成功だったと評価しているわけなんですけども、アフガニスタンは、もう自立できるという認識を持つのは、時期尚早だと感じざるをえません。
須田記者でした。
お伝えしているように、タリバンの復活によるアフガニスタンの治安悪化。
アフガニスタンの治安維持に大きな役割を果たしてきたアメリカ軍は、ことし末に、撤退を予定しています。
そうした中で、アメリカが進めている戦略が波紋を広げています。
撤退に向けた動きを加速させるアメリカ。
今後の治安維持を担う現地の軍や警察の育成を急いでいます。
さらに力を入れているのが4年前から導入した自警団の強化です。
住民に武器を持たせて短期間訓練し農村地帯で勢力を広げるタリバンに対抗させます。
アメリカが費用を負担して3万人まで増やす計画です。
アメリカ国防総省の報告書にそのねらいが書かれていました。
自警団1人当たりの給料や訓練費用は、警察官の4分の1兵士の6分の1で済む。
当時、この政策を推進したアフガニスタンの元アメリカ大使アイケンベリー氏です。
アメリカが作り上げた自警団。
しかしその実態は、かつて内戦を引き起こした武装集団。
いわゆる軍閥のメンバーです。
1990年代アフガニスタンで繰り広げられた内戦。
各地に乱立した軍閥は勢力争いを繰り広げました。
その混乱の中台頭したのがタリバンでした。
タリバンは国土の大半を制圧。
有力な軍閥は北部に逃れて抵抗を続けました。
タリバン政権が崩壊したあと軍閥が再び勢力を拡大しないよう国際社会は武装解除に取り組みました。
その中心となったのが日本です。
300億円を投じて6万人を武装解除しました。
この男性も11年前日本政府の支援の下武器を手放しました。
しかし今、アメリカの支援する自警団に加わり再び武器を手にしたのです。
検問などの治安活動を担い大きな権限を持つようになった自警団。
その一部は政府の統制を離れて犯罪行為に手を染めているといいます。
この男性は去年の秋自警団から村を守る見返りに金を払えと脅されました。
住民が命を奪われる事件も相次いでいます。
この家では5人の子を持つ父親が自警団の命令に背いたという理由で銃殺されました。
国連も事態の深刻さを指摘しています。
自警団の暴力により1年間で121人が死亡した。
地元の警察も手がつけられなくなっている。
自警団をさらに拡大させる計画もありますがそんなことをしたらますます問題が深刻化してしまいます。
アメリカには懸念を伝えています。
それでも自警団は治安維持に必要だとアメリカの元大使は言います。
中には過ちを犯す者もいるでしょう。
こういう問題は時に起きるものです。
これはあくまでアフガニスタン政府が責任を持って対処すべき問題なのです。
アフガニスタンでは今武器の密売が横行しています。
外国製のライフルや迫撃砲を密売しているこの男性。
今後、内戦になると見てさまざまな勢力が武器を買い占めているといいます。
国際部隊の撤退を前に深まる混迷。
国家再建の道は一層険しくなっています。
今夜はアフガニスタン情勢に大変お詳しい、日本エネルギー経済研究所の田中浩一郎さんにお越しいただきました。
撤退後、治安維持のためにアメリカは、自警団を育て、武器を渡している。
また武器がまん延すると、内戦が起きるのではないかというおそれも感じますけど、どう見てらっしゃいますか?
内戦というところまでいかなかったとしても、この自警団が勝手なふるまいで、治安をより悪化させる可能性、もちろん改善する余地もあると思うんですけども、多くの場合は、たぶん悪化させるほうの懸念のほうが強いですね。
国軍もある程度、育ってますけれども、この力関係というのは、どう見ていますか?
まず国軍は数のうえではかなりいいと思うんですけれども、やはり質的に大きな問題を抱えています。
統制がこの後もちゃんと取れるのかというのも大きな問題ですし、あとその戦闘能力の面で、タリバンなど武装勢力に対して、ちゃんときっ抗することができるのか、これもまだ分からないところがあります。
その点では、やはり外国軍の存在と、その下での訓練の継続というものがやはり不可欠なんだと思いますね。
しかし、その外国軍が大部分、ことし末までに撤退をするとなったときに、今度選ばれる大統領というのは、そういった中で、かじ取りを行わなくてはいけない、非常に重要な存在になっていて、状況を変えていくことができるのか、どう見てますか?
少なくともこの13年間は、カルザイという人が大統領として、あるいは暫定的なリーダーとして、国を率いてきました。
もちろん、彼のもとでできたこともあるし、多くの課題がまだ残されてることもありますが、まず恐らく次の大統領は、カルザイ時代とは違う、かなり思い切った政策をやはり打ち出して、これまでの内戦の傷、そしてにおいが残っている時代とは違うものを、今度築いていかなければいけない、そういう指導者であるべきですね。
今回の選挙で、正統性のある人だというふうに、国民から見られると思いますか?
やはり選挙結果、そしてその選挙結果を巡っての異議申し立て、そして異議申し立てに対しての、独立選挙委員会のほうの裁定など、いろんなことがまだ残されていますけれども、少なくともその異議申し立てなどが、あまり変な形で出ずに、誰もが勝ち、そして負けをはっきりと認識して、次の大統領として、国民がきちんと納得できる人、これがもう、最終的にはとにかく必要ですね。
4月末ごろに結果が出るということですけれども、しかしタリバンはこの選挙を認めていない。
選挙制度すら認めていませんね。
これまで4兆円を投じて、最大のときは15万人の兵力が、外国から送られてきたわけですけれども、これ、積み上げてきたものが、壊れていくんではないかということを恐れるんですけども、これまで何が間違ってたというふうに思われますか?
いろいろな曲がり角を曲がるときに、違う方向に行ってしまったということなんでしょうけれども、大きく言って、たぶんわれわれ、つまり国際社会の側のほうの過信が一つあったと思います。
それは、内戦後のアフガニスタンに対して、外からいろいろ支援をすれば、物的にも人的にも、それから資金の面でも、これを行えば、アフガニスタンを復興させることができる、それから民主化させることができるという、しかも短期間の間にですね、そういう思いが強くあったと思います。
一方で、アフガン側のほうは、もちろんある程度、外からの支援は必要だけれども、それでも自分たちで多くのことを成し遂げることができるというまた、これもある種の過信だと思うんですけども、それがあって、双方の過信が、ある部分、空転というんですかね、空回りしてしまったということもあろうかと思います。
アフガン側でも1970年代とかに、当時から外国の支援を仰いでいた担当者なんかとも、よく話をしたんですけれども、彼らがよく言ってたのは、やはりアフガン人が自分で汗を流して、これが自分たちの成果であるということをきちんと実感しないと、やっぱりいろんな時代から、外国の援助を仰いできた、あるいはそれを受けることに慣れてきたような、そのある種の援助慣れした国、国民にとっては、やはりよくないと。
きちんとアフガン側が自分たちのものである、成果であると、それを実感させることができないと、やはりうまくいかないとよくいわれましたけども、そういう状況に陥ってしまったのかなと、今回思いますね。
時間をかけて、汗を流して、アフガン人が自分たちで作ったものだっていうのが、積み上がっていかなければならないということなんでしょうけれども。
これからどこにその希望といいますか、鍵はあると思われますか?
やはり即効性というものは、援助の場合、どうしても求められたと思います。
ただ一方で、アフガニスタンのように、長い時代、内戦、そして疲弊をした経済にとってみれば、相当長い時間をかけて、それこそ世代を超えて、安定に向けての人づくりをしてこなければいけなかったと思います。
2014/04/07(月) 19:32〜19:58
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代「命を懸けた一票〜混迷のアフガニスタン〜」[字]

アフガニスタンでは、大統領選挙をめぐり反政府武装勢力タリバンがテロや襲撃を繰り返し、混迷が深まっている。再び内戦に陥る懸念すらある現地の最新情勢と今後を展望。

詳細情報
番組内容
【ゲスト】日本エネルギー経済研究所・中東研究センター長…田中浩一郎,【キャスター】国谷裕子
出演者
【ゲスト】日本エネルギー経済研究所・中東研究センター長…田中浩一郎,【キャスター】国谷裕子

ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

OriginalNetworkID:32080(0x7D50)
TransportStreamID:32080(0x7D50)
ServiceID:43008(0xA800)
EventID:8521(0×2149)