趣味Do楽 落語でブッダ第6回▽桂塩鯛“お文さん”〜なにわ商人文化と浄土真宗 2014.04.07

落語と仏教のコラボレーションでブッダのありがた〜い教えをご案内!落語はもともとお坊さんの「お説教」がルーツともいわれる伝統芸能。
実はブッダの教えのエッセンスがちりばめられている。
そこでお寺の本堂に東西の噺家がそろい踏み。
仏教にまつわる古典落語を披露します。
今回の噺家さんは上方落語会をひょうひょうと泳ぐ…これはあの…捨て…捨て子!?ど…どうしたらいい?開演です。
(読経)舞台は大阪・西成にある古刹…第6回目は「なにわ商人と船場文化そして浄土真宗」です。
何やらちょっと難しそうですね。
それで演目は…「お文さん」と聞けば女性の名前かなと思われると思いますが…。
浄土真宗では「お文さん」といえば「蓮如上人」が書いた手紙の事です。
「御文章」とも言われ門徒にとってなくてはならない大切なものです。
そしてこのお噺の舞台は大阪の船場。
船場というのは大阪における商業・文化・芸能の拠点でした。
お文と船場との深い関係これが今回のキモです。
「お文さん」の舞台は船場にある大店の酒屋。
登場人物は外にお妾さんを囲っている若旦那・作次郎。
お妾さんは「お文」と言い元は北新地の一流の芸子でした。
ご寮人さんと呼ばれている若旦那の妻・お花には子供がいません。
そして丁稚の定吉。
ある日男が赤ん坊を抱いて酒を買いに来ました。
丁稚の定吉が酒を運びについて行きますが途中男は赤ん坊を定吉に預けたまま消えてしまいます。
途方に暮れた定吉は赤ん坊を抱いて店に帰ってきます。
では桂塩鯛師匠の「お文さん」聞いて頂きましょう。
塩鯛師匠よろしくお願いします。
(拍手)店に舞い込んだ赤ん坊を大旦那がうちの子として育てようとする場面から。
考えてみたらなうちには跡取りの子供ができへんのじゃ。
これもひょっとしたら何ぞの縁かも分からんな。
この子をうちで育ててなゆくゆくはうちの子のせがれとお花との間の子として育てようと思うんやけれどもなお前には異存はないかいな?私には異存はございませんけれども若旦さんがどうおっしゃいますやら。
いやいやせがれにとやかくは言わしませんがな。
あちょっと待って。
これこれ!作次郎ちょっとこっち。
いやいやお前はんはどう思う?どう思うもこう思うもあんたどこの誰や分からん者を跡取りなんかにできますか?何を言うてんの。
あのな考えてもみなはれどの子も仏の子と言うやないかいな。
そないせやけどあんた急に言われましてもな。
ああそう!ああそうか!お前はそういう心の冷たい男やったんやな。
分かった分かった。
お前にはもう相談せん。
こうなったらな私とお花との間の子として育てます。
おいこらこら定吉定吉!ちょっとこっちおいで。
これからすぐ手伝いの又兵衛の所行きなはれ。
お乳母どんの世話をせいつうて。
それも今日中にじゃ!ええな?今日中にそれが用意できなんだらうちへは今後出入りは差し止め今まで貸した金耳をそろえて皆返しなはれと言うてきなはれ。
へ〜い!あ〜えらい事になったなこりゃ。
しかしむちゃな事言いよったであれ。
今日中にお乳母どん世話せいってそんなもんできるわけがないがな。
ほんまにもう。
あの〜又はんのおっさん。
おう!お乳母どんの世話してくれゆうて頼みに来たんか?え?おっさん何でそんな事分かったの?分かるがな。
お前の顔にちゃんと書いてあるがな。
え?俺の顔に書いてあるの?誰書きよったんやろ。
大丈夫大丈夫。
お乳母どんちゃんといてはる。
えっ!お乳母どんいてはる!?うん大丈夫。
ご寮人さんちょっとこっち出てきなはれ。
いやいや定吉っとんですさかい大丈夫ですわ。
これはこれは定吉っとん長いことご無沙汰をいたしました。
あら!あんさんあの鰻谷のご寮人さん。
そうや。
このご寮人さんが今日からお前んとこのお乳母どんや。
え?何でうちのお乳母どん。
こりゃ訳言わんと分からんけどな。
まあお前には特別に話をしたろ。
そのかわり店でしゃべったらあかんぞ。
分かったか?このご寮人さんはなもともと北の新地の梶川という所から文という名前で出てはった一流の芸子はんやねん。
若旦那がほれてほれてほれ抜いてな引かして家を一軒あてごうてそこで暮らしてはったんや。
で男の子ができたんや。
若旦那殊の外のお喜びでな毎日この子の顔を見たい。
ご寮人さんにしたかてやな自分で自分の子を育てたいと思ってななんとかこの親子3人一つ屋根の下で暮らす工夫はないかいなとうちへ相談に来はったんや。
捨て子騒動の張本人は若旦那とお文さん。
驚く定吉。
何も知らないのは大旦那です。
そして妾のお文さんがいよいよ乳母としてやって来ます。
これはこれはお初にお目にかかります。
どうぞよろしゅうにお願いをいたします。
あら!あらま〜こりゃまたきれいなお乳母どんじゃな〜。
こんなお乳母どんやったら赤子よりもワシが乳飲みたいがな。
(笑い)いやいやこりゃ冗談じゃがな。
とにかくなおなかをすかしてますんですぐに乳をやっておくれ。
乳をやっておくれ。
どうじゃどうじゃどうじゃ?まあ泣く子に乳というのはよう言うたもんじゃなあ〜。
もうごくごく飲んどるじゃないかいな。
こんな姿を見てたらまるでほんまの親子みたいやなぁ。
ほんまの親子なんでございます。
書いた筋書きどおりにご寮人さんがこの家へ入り込むわけでございますな。
けどもやっぱり元は芸者さんでございます。
誠によく気が付きます。
ぼんの守りはもちろんの事でございます。
奥の用事から手の空いてる時は店番までしようかという。
まあべっぴんでございますんでなすぐに「婿のお乳母どんはえらいべっぴんやで」とダーッと評判が広がりますな。
もう客足と言いますかどんどんうなぎ登りでございます。
とうとう酒を飲まん人まで買いに来るというそういう始末でございますな。
まんまと乳母として潜り込んだお文さん。
美しい上によく気の付く女で客の評判も良い。
若旦那は大喜び。
問題は定吉がついつい乳母の事を「お文さん」と呼んでしまう事。
おい定吉定吉。
若旦さん何でございますかいな?ちょっとこっちおいで。
あのなこの度の事ではなお前にいろいろ世話になってえらいすまなんだ。
どういたしまして。
お前に一つ言うとかなあかん事があんねや。
お前なあいつの事を呼ぶ時にこのごろ「文さん」とか「お文さん」とか言うて呼んどるやろ?え?あんな事言うたらあかへんやないかいお前。
皆お乳母どんお乳母どんって呼んでるのにお前があんな事言うたらばれてしまうやないかい!ええか?これからは「文さん」とか「お文さん」とか下に「さん」を付けて呼んだらこれからお前を放り出すさかいな。
そのつもりでおれよ。
さあ若旦さんは丁稚を手なずけたと思うておりますな。
ところがここのお店には年古く奉公しております丹波の園部から出て参りました雀のお松という女中がいるわけでございますがこれがどうも怪しいなあとうすうす感づいたようでございまして。
ご寮人さんご寮人さん。
何やねん?今度来たあのお乳母どんご寮人さんどう思いなはる?どう思うもこう思うもぼんの守りはようしてくれはるし用事もようしてくれはるしよう気が付きはりますしええお方やと思うとります。
ええお方やなんて…。
あのなあのお乳母どんの着てる着物から帯から全部ご寮人さんの物より2つほど上の物着てまっせ。
あれ皆若旦さんが買うてはりますねやがな。
え?若旦さんが?そうですがな。
まあそれについてなあの丁稚の定吉がその事についていろいろ知ってると思いますんでこれから定吉っとんを呼んで締め上げて白状させてやります。
定吉っとんその前になお饅がありますやろそれあんたが食べ言うてご寮人さんがあげる言うてな。
竹の皮の座布団敷いてある。
うわ〜。
わあこれは結構ですわ。
定吉っとんそのお饅なただのお饅と違うし。
そのお饅頭の中にはあるものが入っててなそれ食べてうそついたら血吐いて死ぬし。
へ?これ血吐いて死ぬの?さあしゃべってしまいな!白状してしまいな!定吉っとん私からもお願いします。
知ってる事があんのやったら隠さずに話をしてもらいたい。
このとおり頭を下げますんで。
ちょっとご寮人さん!頭下げなはんないなもう〜。
ああもう言うてしまいますわ。
ご寮人さんをお乳母どんに仕立ててこの家へ入ってきたとこういう事でんねん。
ご寮人さん聞きなはったか?これが足元に火がついてるちゅう事でっしゃないかいな!で若旦さんとお乳母どんはどこで会うてんねん!そんなポンポン偉そうに言いやがって不細工な顔しやがって!不細工な顔で悪かったな!知らんがな。
わしうそついたら血吐いて死ぬもん。
(笑い)で今若旦那はどこで何してんねん!離れで文読んではります。
ほんまにもう!家の中におっても手紙のやり取りか何かしてるんかいな!ほんまにああ腹の立つ!カーッ!ふだんは冷静なお方なんでございますけれどもさすがに腹が立ったと見えまして頭にカーッと血が上って廊下をタタタタッとこの離れのふすまをシュッと開けます。
中へ入ろうとしたんでございますがそこはやっぱり教養のあるお方でございますな。
いっぺんグッと思いとどまって中の様子をのぞいてみますと離れが仏間になっておりまして立派な仏壇が置いてございます。
そこに若旦さん今ちょうどお経を上げなはってお正信偈御和讃も済ましてちょうどこの御文章お文さんの拝読中でございます。
「われや先人や先今日ともしらず明日ともしらずおくれさきだつ人はもとのしずくすえの露よりもしげしといえりされば朝には紅顔ありて夕には白骨となれる身なり」。
さあこれを聞きますと再びこのご寮人さん元の所へタタタタッと帰ってくるなりこれ定吉っとん!あんた何ちゅう事言いなはんな!あんたあれ御文章お文さんやないかいなあんた!あんなとこで私がパッと入っていってたらそれこそ私の落ち度やとか何とか言われるとこやったやないかいな。
お文さんやったら何でお文さんとちゃんと言いなはらへんねん!あほらしい。
文に「さん」付けたら今度は私が放り出されまんねん。
(拍手)何とも考えさせられる噺でしたねえ。
大坂船場の雰囲気がよく描かれた貴重な落語でした。
お疲れさまでございました。
ありがとうございました。
今日は「お文さん」をして頂きましたけども。
私あの〜女中が出てきますよね?雀のお松という。
あれ好きですね。
またけったいなところに思い入れがありますね。
ただ最後のね…まあ言うたら妾さんの子供を家に入れて本妻さんを追い出すという誠に人道的にまずい今の世の中に誠にそぐわない…。
そこはちょっと聞いてる人も共感できないかもしれませんね。
できないと思います。
跡取りというものが必要な時代だったというのとお妾さんを持つのが男の甲斐性みたいな…。
そんなに抵抗のない時代なんですよね。
その話を聞いたところで「うん。
なるほど。
そのぐらいの事はあるやろな」というような日本人がたくさんいた時分に出来たお噺だと思うんです。
この若旦さんはどういう人なんですか?どういう人っていうかものすごく純粋な方だと思います。
それで朝夕のお勤めと言うんですか。
大きな仏間にですね…。
それは欠かさず?やってはるわけですね。
ここのお家のしきたりとしてね。
このねいわゆる船場という所は船場の旦さんという一つの型みたいなのがあるわけです。
特に信心深くなくてもお寺にお説教に聞きに行ったり毎日お仏壇に向かってお正信偈御和讃上げるのが一つの船場の旦さんの型なんですよね。
それは一つの船場文化を作ってきたわけで…。
落語の舞台となっている「船場」は江戸時代大阪城の西旧淀川に沿った広い地域でなにわ商人の町として発展しました。
船場の歴史は浄土真宗と関係があります。
浄土真宗の本願寺中興の祖「蓮如上人」が大坂に居を構え後に「大坂本願寺」となりました。
寺の周辺に門徒宗が集まり「寺内町」を形成していきます。
豊臣秀吉が本願寺の跡に大阪城を築いた際門徒宗は城の西側に集まります。
ここに2つのお御堂を建て船場の基盤を作りました。
今も南北のお御堂からは朝夕の鐘の音が響き渡ります。
お御堂の前を走る「御堂筋」。
船場は現在も大阪経済の中心地なのです。
だから船場の商人さんたちはお経というか鐘の音を聞きながらお商売してはったわけですね。
そうです。
船場という所は仏教的な土壌といいますかやっぱり船場に店出すという事はお仏壇も大事にしお寺にお話も聞きというのが船場に店を出す事やといういわば商業と宗教というか信仰とか立ち居振る舞いとか日常の倫理とか商売の倫理そこまで関わってくる話。
だからこそ大阪の文化の発信地となっていったんですね。
船場商人が信仰した「浄土真宗」は「阿弥陀仏」の力で救われる他力本願の教えです。
ごく普通に暮らす人たちに開かれた仏道で商人にも幅広く受け入れられました。
落語の中で若旦那が読んでいたのが蓮如上人の「お文」です。
「お文」は蓮如上人が浄土真宗の教えを民衆のために易しく述べた手紙をまとめたものです。
中でも特に有名な文章「白骨章」は朝には元気な顔であっても夕べには白骨になってしまうような身であると説いています。
ここで蕚住職に「白骨章」を読んで頂きます。
本式でお願いします。
こんな感じ。
あら〜。
だいぶ違いますね。
(笑い声)でも若旦那がこんな声出してやったら家の人ビックリしはります。
ちょっと今聞いてて恥ずかしくなってきました。
もはや大阪の船場は空襲で消えてなくなってますので…。
船場文化自体が…。
一旦消えてますのでやっぱりかつて船場の商家の中ではお家の中でお文さん御文章を朝な夕なに拝読なさってたんだなという事が逆にすごくリアリティーを持って感じられるので。
師匠の腕もあって。
我々の作ってきた文化はこういう文化やなあと。
ただ…あれはだから日々のお経の…。
あんまり日々にですねお正信偈御和讃のあと「白骨章」を読む人はあんまり多くないんじゃないかな。
あえてかなと。
「白骨章」のテーマはこれなんですよ。
これです。
「無常」とは読んで字のごとく常なるものなどないあらゆるものは変化し続け保たれる事はないという教えです。
我々は何となく漠然とこの日常というのは明日もあさっても続くというふうに思い込んでますけども実際には突如として崩れたりする。
すごくもろいものじゃないですか。
皆今自分勝手な事をしていろいろな思惑で動いてるけどもやっぱり無常の風が吹いたらどうなるか分からないというね。
それはまた若旦那が読んでるというのもね非常に皮肉なものですよね。
そうなんですよ。
全ては無常であるずっと存続するものは無いんだというのは仏教の無常の教えなんですけどもそこで…みんなで大事にしようというこのメンタリティーみたいなものが落語にもどこかあるような。
これが日本文化の中にあってだからこそこの「白骨章」が胸に届くのかなと思うんですよ。
なるほどね〜。
これは非常に深読みされてますね。
だから「深読みのコーナー」なんです。
ほんとにそう思いますね。
ありがとうございました。
古典落語「お文さん」に読み込まれた蓮如上人の教え。
「明日をも知れぬ命なのだから一日一日を愛おしんで真面目に生きるべし」。
いつの時代にも響く教えです。
今回の内容はこちらのテキストに詳しく紹介されています。
今後の放送予定も掲載されています。
それではお坊さんの謎かけを聞いて頂きます。
お坊さんとかけまして朝刊と解きます。
その心は?けさきてきょうよむ。
2014/04/07(月) 01:10〜01:34
NHKEテレ1大阪
趣味Do楽 落語でブッダ第6回▽桂塩鯛“お文さん”〜なにわ商人文化と浄土真宗[解][字]

落語と仏教のコラボで送る「落語でブッダ」。第6回は桂塩鯛の上方落語「お文さん」なにわ商人の集まる船場は浄土真宗の信仰が篤(あつ)い。大阪文化発祥と仏教の関係は?

詳細情報
番組内容
落語と仏教のコラボで贈る「落語でブッダ」。第6回は桂塩鯛の上方落語「お文さん」。お文さんとは浄土真宗「本願寺中興の祖」蓮如上人が門徒衆のために分かりやすく書いた手紙のこと。御文章ともいう。江戸時代、大阪船場の商家の旦那衆はみな浄土真宗の信仰あつく、毎日「お文さん」を読誦するのが日課であった。近松の文楽など数々の大阪文化の舞台となった船場と、浄土真宗の関係を宗教学者・釈徹宗が分かりやすく解説する。
出演者
【出演】落語家…桂塩鯛,【講師】如来寺住職・相愛教授…釈徹宗,【語り】三宅民夫

ジャンル :
趣味/教育 – 生涯教育・資格
ドキュメンタリー/教養 – 文学・文芸
劇場/公演 – 落語・演芸

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音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
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2/0モード(ステレオ)
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