2月。
メインエンジンスタート!最新の人工衛星を搭載したH2Aロケットが夜空へ打ち上がりました。
ロケットに搭載されたカメラの映像です。
高度400キロ付近で人工衛星の切り離しに成功!飛び出したのは重さおよそ4トンの大型衛星。
雨や雪の観測を目的とした最新鋭の衛星です。
でも今日のテーマはこの衛星ではありません。
実は先ほどのロケット搭載カメラに謎の飛行物体が映っていたんです!それがこちら。
何だこの四角い物体は!?あまただ!まさかUFO?いえいえその正体は超小型衛星。
これぞ今日の主役です。
大型衛星の隙間に大きさ僅か40センチ角のかわいらしい衛星が相乗りして打ち上げられたんです。
この超小型衛星の開発が今さまざまな大学や研究機関で大ブーム!小さな体に超高性能の望遠鏡や世界で初めて衛星に搭載される特殊なセンサーなど大型衛星も顔負けのすんごい技術を満載しているんです!小さいけれどすごいやつ!これはまさに宇宙開発の革命児だ!
(テーマ曲)4月最初の「サイエンスZERO」。
だいぶ雰囲気変わりましたね。
何かこうワクワク感にみなぎってるって感じですよね。
オープニングも変わりましたよね。
うん。
「0」の格好から毎回科学の世界に飛び込んでいこうという趣向ですね。
そうですね。
皆さんも私たちと一緒に科学の冒険を楽しんで下さいね。
そして今回から新しい仲間が加わるんですよね。
そうなんですよね。
では呼びましょうか。
(2人)せ〜の…江崎さん!は〜い。
アナウンサーの江崎史恵です。
よろしくお願いします。
科学ってワクワクさせてくれるものだという事を私自身も感じながらお伝えしていきたいと思います。
よろしくお願い致します。
(2人)お願いします。
それでは早速今日のテーマからいってみましょうか。
宇宙開発の世界で大注目!超小型衛星です。
で超小型といってもどのくらいの大きさかといいますとこちらご覧下さい。
おお〜!これはすごい大きさですね。
ですよね。
これ2月末に打ち上げられたH2Aロケットの先端部分なんです。
迫力ありますね。
この中に入っているのが人工衛星ですか?そうなんです。
日米が共同で開発した大型衛星なんですね。
高さが6.5メートル。
これはちょうどマイクロバスぐらいの大きさだと思って下さい。
人工衛星ってそんなに大きいんですね。
でも今回の主役は一緒に打ち上げられた超小型衛星ですよね。
どこにあると思いますか?う〜ん…。
あっもしかしてこの小さい箱みたいなやつですかね?そうなんです。
高さが40センチくらいでちょうど両手で抱えられるぐらいの大きさなんですね。
これが宇宙に打ち出されますと…。
うわ飛び出した!そうこのような形に展開します。
人工衛星として役割を果たす訳なんですね。
すごいかわいらしいですね。
手で簡単に持てそうな。
そうなんです。
学生さんが作れちゃうんですか?
(竹内)超小型衛星の開発というのは10年くらい前から始まったんですが研究目的のほかに教育の目的もあったんですね。
ところが今や…そんなすごい物なんですね。
一体どれほどすごい物なのでしょうか?来月打ち上げられる予定の最新鋭の超小型衛星を取材しました。
ホコリが入らないようビニールシートで厳重に区切られた開発室をのぞくと…。
ありました!来月24日に打ち上げが予定されています。
この「雷神2」大型衛星にも負けない最先端技術の数々がつぎ込まれています。
その一つがこの望遠鏡。
内部を見ると長さ38センチの黒い筒が取り付けられています。
これ星を見るだけでなく主に地球を見るために使われるんです。
一体どんなふうに見えるんでしょうか?「雷神2」は地球上空628キロの軌道を回ります。
この高さから望遠鏡で地上を見ると…。
見える範囲はおよそ3キロ四方。
この中で例えば東京・渋谷のNHK放送センターを見たとすると…。
こんな感じ。
5メートル四方の物まで見分けられる解像度です。
飛行機から撮った写真と比べるとこのとおり。
宇宙からここまで正確に地上の様子が捉えられるんです!この高解像度の望遠鏡を使って「雷神2」が挑もうとしているのが今地球観測の分野で注目されている立体視観測です。
この立体視観測を日本の衛星で初めて行ったのが8年前に打ち上げられた地球観測衛星「だいち」。
衛星の前方真下後方と3方向に向けた3台のカメラを使いました。
例えば富士山周辺を立体視観測する場合。
まず前方を向くカメラで1枚。
続いて真下を向くカメラで1枚。
最後に後方を向くカメラで1枚。
これら3方向から撮った写真を重ね合わせると…。
こんなふうに山の高さや形を立体的に割り出す事ができるのです。
一方こちら。
超小型衛星「雷神2」には3台ものカメラを積むスペースはありません。
このたった一本の望遠鏡で立体視観測に挑むのです。
そのためには衛星が移動する間常に観測したいエリアを捉え続けられるよう衛星自体の向きを少しずつ変えていかなければなりません。
実はこれが大変!「雷神2」は600キロも上空から望遠鏡で見ています。
そのためもし衛星の向く角度が僅か0.1度でもずれると…。
あらら…こんなふうに視野の範囲が大きくずれちゃいます。
「雷神2」には僅かなずれも許されない極めて緻密な姿勢制御が求められるのです。
いや0.1度ずれただけで全然違う所になっちゃいましたよね。
大変ですよね。
僕野鳥撮影をよくやるんですね。
超望遠を三脚に据えて撮るんですよ。
ちょっと角度がずれるともう鳥はいません。
しかもこの超小型衛星の場合は1秒間に8キロメートルという猛スピードで地球をグルグル回りながら撮るんですよ。
うわそんなに高速なんですか?僕はできないな。
できないですよ。
でもそんなすごい難しい事をあんなに小さな衛星がホントにできるんですかね?それを実現するために「雷神2」には2つの最新の技術がつぎ込まれているんです。
0.1度たりともずれが許されない「雷神2」の姿勢制御。
それを可能にする要となるのが…星の光を頼りに衛星の向きを検出する装置です。
その仕組みは私たちが北極星を見て北の方角を確認するようなもの。
同様にスターセンサーは星を見て自分の向きを確認するのです。
「雷神2」は全天に1,000近くある4.5等星までの星の位置をデータベースとして持っています。
スターセンサーが捉えた星をこのデータベースから探し出し自分がどの方角を向いているかを確認します。
こうして自分が向いている方角を正確に把握したら次に観測したいエリアへと衛星の向きを変えます。
この時衛星を精密に動かす仕掛けが衛星内部に組み込まれた…この装置。
金属の円盤がモーターで左右に高速回転する仕掛けになっています。
これでどうやって衛星を動かすのでしょうか?自在に向きが変わる台に衛星の模型を載せ中にリアクションホイールをセットしました。
衛星がどう動くのか実験です。
リアクションホイールの円盤が反時計回りに回転するとおっ!衛星本体が反対方向に回り始めました。
リアクションホイールが回転するとその反動で衛星が反対方向にゆっくりと回る。
この原理で衛星を目的の方向に向けさせるという仕組みです。
「雷神2」にはこのリアクションホイールが3方向についています。
3つのリアクションホイールを回転させる事で衛星の向きを自在に調整するのです。
これらの姿勢制御技術果たして宇宙でうまく動作するのか。
打ち上げる前に入念なシミュレーションで確認します。
「雷神2」のスターセンサー部分を暗室の中に設置。
その先の画面には宇宙で見える星空を模した映像が表示されています。
この星の光をスターセンサーで捉え衛星の向きをはじき出します。
結果はコンピューター画面にCGで表示されます。
現在は衛星の望遠鏡が赤線の方向真下を向いている状態です。
ここで望遠鏡が狙う先を北海道函館市に向けてみます。
目標に向けて衛星をどれだけ動かすか指示を送ります。
するとリアクションホイールが回転し始めました!それによって衛星の向きが変わり望遠鏡が狙う赤線の先がぴたりと函館市を捉えました。
更にそのエリアを立体視観測するテストです。
ほら衛星は地球の周りを回りながら少しずつ向きを変え常に望遠鏡で函館市を捉え続けています。
お見事!あのスターセンサーって超小型衛星の目みたいでしたよね。
しかも衛星の向き変えるのに私ジェットでも噴射するのかなと思ったら円盤を回してその反動で動くとはびっくりしました。
ちなみに大きな衛星でもリアクションホイールは入ってるんですけども超小型になってくるとですね軽いので姿勢の制御がより繊細にしないといけないんですね。
そこが結構大変なんですよ。
なるほど。
せっかく巧妙な装置を作っても宇宙空間で設計どおりに動いてくれないという事結構あるんですね。
ところがその場合宇宙に行って修理する訳にはいかない。
失敗は許されない。
という事であれだけ綿密に準備してるって事ですね。
実はですねこんな所を観測しようとしているんです。
おお〜。
こんな所で何を観測するんですか?気になりますよね。
その辺りの事をですね専門家の方に詳しく伺っていきましょう。
「雷神2」の開発チームの中心メンバーでいらっしゃいます。
北海道大学教授の橋幸弘さんです。
(一同)よろしくお願いします。
こんなジャングルと超小型衛星がどういう関係があるんですか?ほう〜。
そういう事なんです。
インドネシアの熱帯雨林の多くはこのような湿地帯になっています。
ところが今各地で樹木が伐採されていましてその作業をしやすくするために湿地帯の排水工事が行われているんです。
そうすると土壌の乾燥が進んでしまいます。
でその結果大規模な森林火災が発生しやすくなって大量の二酸化炭素が排出される事になるという訳なんですね。
森林火災が起きちゃうんですね。
そうなんです。
乾燥が進む事によって…そっか。
じゃあ二酸化炭素の排出を減らすには土壌の乾燥を防ぐ必要があるって事ですね。
そうですね。
さすがに衛星からですね地中の中の乾燥状態までは直接は見る事はできません。
ですが…そこで私たちの「雷神2」という衛星を使って…ええっ宇宙から木の種類が見分けられるんですか?さまざまな木が生い茂る森。
その木の種類を見分ける手がかりとなるのが葉っぱから反射される光の波長です。
通常私たちが色として認識しているのは対象物から反射される光です。
その中には虹のようにさまざまな色が混ざり合っておりそれぞれの色には特有の波長があります。
反射光に含まれる各波長の色の強さをスペクトルといいます。
例えば同じような緑色に見える松林と草原でもスペクトルの形は異なっています。
同様に葉っぱの色が示すスペクトルは木の種類によって僅かに違う事が最近の研究から分かってきています。
これはある森を飛行機で真上から撮った写真。
一面同じような緑色に見えますがスペクトルの僅かな違いから識別すると…。
このとおり。
色の違いで示したのは15種類の樹木。
こんなふうに異なる樹木が入り交じっている事がスペクトルから見分けられるのです。
ところがこうしたスペクトル観測を行うには現状では重さ60キロ以上のセンサーが必要です。
これでは超小型衛星には載せられません。
そこで今回「雷神2」に搭載されたのがこの装置。
世界で初めて衛星に搭載される…一体どうやってスペクトルを捉えるのでしょうか?このLCTF何枚もの液晶フィルターを重ねた構造になっています。
もともとはいろいろな波長が混ざり合っている反射光は…こうしてある特定の波長成分がどれだけ含まれているかを調べます。
ここでフィルターにさまざまな電圧をかけると通過する光の波長を自在に変える事ができます。
こうしてさまざまな波長の成分がどれだけ含まれるかつまりスペクトルを調べようというのです。
この超小型の特殊な目を使って「雷神2」は熱帯ジャングルの木の種類をはるか宇宙から見分ける大技に挑もうとしています。
へえ〜人の目から見ると同じように緑にしか見えないですけどそのスペクトルの違いを見ると木の種類まで見分けられるなんてすごいですね。
そうなんです。
まさにそれも調べようとしているんです。
そういう作業をしなくてはいけないんですがこれまでそうしたものは十分作られていなかったのでそれを私たちは同時に進めていきたいというふうに考えてます。
そうなんです。
秒から秒ぐらいでほぼ色を変える事ができます。
この熱帯雨林の衛星観測は橋さんたちとインドネシア政府機関との共同プロジェクトなんですよね。
この「雷神2」に注目しているのはインドネシアだけではありません。
アジアのほかの国々との連携も始まっています。
2月北海道大学をフィリピンの政府関係者が訪れました。
(2人)Nicetomeetyou.やって来たのはフィリピン科学技術省の幹部。
一線の科学者たちが集い超小型衛星の活用について話し合いました。
近年フィリピンでは大型の台風などによる深刻な災害が増加しています。
(暴風雨の音)問題は被害の状況を把握しようにも地上や空から被災地に近づくのが困難な事。
そこで期待されているのが…ところが1基の衛星だけでは地球を一巡りして同じ場所を観測できるのは1日4回程度。
これでは刻々と変化する被害状況を把握しきれません。
そんな衛星観測の限界を打ち破る秘策が橋さんの提唱する…なんと超小型衛星を何十基も打ち上げてネットワークを作ろうというのです。
そうすれば次々と飛んでくる衛星で同じエリアを連続的に観測できます。
ほぼ切れ目のない連続観測を目指しています。
低予算短期間で開発できる超小型衛星ならではの物量作戦!それを橋さんたちはアジア各国の連携によって実現させようと考えています。
こちらの女性はベトナムの宇宙機関から派遣された研究員。
自分たちの作った超小型衛星が宇宙を群れ飛ぶ日を目指して頑張っています!わあ結構若い女性の研究者の方もいらっしゃるんですね。
でもアジア各国が協力するって何だかいいですよね。
やっぱり1基の人工衛星ではできなかった事を数十基の超小型衛星のネットワークでやると。
これ発想がすごく面白いと思うんですがこれはやっぱり超小型衛星ならではですか?大きなものになると更にそれより大きいんですが…
(橋)そうする事によってトータルで予算を低く抑えてしかも開発速度を上げてよりいいものを作り続けるという事は可能になります。
超小型衛星って小さいのにいろんな事ができちゃうんですね。
何かこのままだと従来型の大きな衛星って要らなくなっちゃうんじゃないですか?大きな衛星の役割というのは皆多くの人が使えるようなデータを安定的に定期的に取るとそういった役目があると思うんですね。
そういった事は超小型衛星にはちょっと不向きなところがある。
例えば先ほどの話にも出ましたが森林のスペクトルのライブラリー。
こういったものを作るのはむしろ大型衛星できっちり作ってもらう。
その情報を基に超小型衛星で見たい所を非常に高い解像度で集中的に見ると。
そういった連携プレーが重要になってくるだろうというふうに思ってます。
なるほど。
それぞれの長所を生かして補いあっていくんですね。
例えるとコンピューター…パソコンと大型コンピューターというのに似ていると思うんですね。
だから大型コンピューターでしかできない仕事を大型コンピューター。
パソコンでできるものはパソコンでやると。
そういった役割と近いと思ってます。
そっか〜。
超小型衛星すごいですね。
今日はどうでしたか?超小型衛星が宇宙を飛び回ってホントにいろんな事が可能性が秘められていてすごく驚きました。
小さくしていくというのは日本のお家芸なんでこの分野は結構期待できるんじゃないですかね?そうですね。
橋さんどうもありがとうございました。
(一同)ありがとうございました。
それでは「サイエンスZERO」…。
次回もお楽しみに!2014/04/06(日) 23:30〜00:00
NHKEテレ1大阪
サイエンスZERO「宇宙開発の革命児!超小型衛星」[字]
両手で抱えられる程の大きさの「超小型衛星」が、従来の大型人工衛星顔負けの最新技術を満載。宇宙を大編隊飛行して、地球を連続監視する!?来たるべき衛星新時代に迫る。
詳細情報
番組内容
両手で抱えられる程の大きさの「超小型衛星」が、従来の大型人工衛星顔負けの最先端技術を満載し、いま次々と宇宙へ打ち出されつつある。しかも、いくつもの超小型衛星をネットワーク化し、単体の大型衛星ではなしえなかった「地上の特定地点の連続観測」に挑むというのだ。災害地域の定点監視や、謎に満ちた巨大積乱雲の発達を宇宙から連続観測するといったかつてない試みに、アジア各国も巻き込んだ壮大な計画が動き始めている。
出演者
【ゲスト】北海道大学大学院理学院教授…