(テーマ音楽)最近夫婦そろってイギリスの物にハマッてるんです。
今日も2人だけのティーパーティーを計画してるんです。
妻はサンドイッチの材料を買いに。
僕はテーブルセッティングを…。
あれ?テーブルセッティングなんだけど…。
大切なティーカップが無いぞ。
今日はあのカップ使いたいのにどこ行っちゃったんだ?えぇ?困ったなぁこれ…。
今回のテーマは紅茶を楽しむひとときを優雅にしてくれるティーセット。
紅茶をたしなむ習慣とともにイギリスで発展してきました。
皆さんご存じのとおりイギリス人にとって紅茶はなくてはならないもの。
こんな詩が残っています。
紅茶はもともと中国のものでしたが1830年代イギリスが植民地のインドで生産することに成功します。
上流階級を中心にエキゾチックな味や香りが大流行。
茶会を開く習慣が広まります。
こちらはティーガウンと呼ばれる茶会専用のドレス。
すぼまった袖口。
ポットやカップを引っ掛けないようこんなデザインになりました。
胸もとが詰まっているのはお茶やお菓子を取るとき胸の谷間が見えないようにするため。
そして茶会の主人公がティーセット。
カップポットからケーキスタンドまで一式そろえて客をもてなすのがイギリスの伝統です。
その一つ一つにとっておきの知恵が詰まっているんです。
う〜ん見つからないなぁ。
ハァ…。
しかしそれにしてもうちにはいろんなティーカップがあるなぁ。
草刈さんティーカップにはさまざまな色や模様がありますが1つ共通点があるんですよ。
何だか分かりますか?何でしょうね。
カップの内側を見てください。
内側が白いものばかりでしょ?あっほんとだ。
でもどうして?それには深い訳があるんですよ。
ティーカップは紅茶専用の器としてヨーロッパで発達してきました。
紅茶の専門家江川ゆみこさん。
カップの白は紅茶のある特徴を引き出すと言います。
おいしい紅茶にはいくつか条件があります。
その中の第一番目が紅茶のきれいな色があるかどうかです。
他には香りや味。
もちろん飲んでおいしいこともありますがまず…ティーカップをお勧めするときには内側が白いものをご紹介します。
内側が白いと紅茶の「水色」色がとてもきれいに見えるからです。
水色とは紅茶の色のこと。
赤みが強いものや黒っぽいものまでさまざまな色があります。
この水色を楽しむためにティーカップの内側は白いんです。
今日一つ目のツボは…紅茶を楽しむためのカップの白。
ここにも工夫があるんです。
こちらをご覧ください。
白に微妙な違いがあるのが分かりますか?ああ同じ白でも違いがありますね。
へえ。
さてその違いは何に由来するのでしょうか。
そもそもお茶を楽しむ器は…東洋で一般的な茶器は内側が少し青みがかった白。
緑茶の緑を引き立てるものとして好まれた色でした。
一方イギリス人が愛した紅茶は赤い色でした。
人々はこの赤を引き立てるための白を探求したのです。
イギリスの生活文化を研究する佐藤よし子さん。
ヨーロッパ各地で紅茶に合う白が作られるようになったと言います。
まずドイツのマイセン焼。
そしてフランスのリモージュ焼。
それからイギリスのボーンチャイナと言われています。
紅茶の色を楽しむために作り出された代表的な3つの磁器を見てみましょう。
落ち着いた印象の白の…ガラス成分を調整し透明度の高い白を生み出した…明るい乳白色の…牛の骨を混ぜる工夫によってたどりついた独特の白です。
好ましい白と赤の組み合わせとはどのようなものでしょう。
カラーコーディネートの専門家赤木重文さんに聞いてみました。
色の異なる3種類の紅茶です。
この中で一番明るい色のダージリン1stには明るい白のボーンチャイナが合うと言われています。
いったいなぜなのでしょうか。
非常にダージリン1stの…試しに明るいダージリン1stを暗めの白で知られるマイセン焼に注ぐと…。
黄色が暗く沈んでしまい美しくありません。
明るさや色合いが近いものを組み合わせると水色がより美しく映えることが確かめられました。
それでは白と赤が醸し出す調和の美を鑑賞してみましょう。
こちらは黄色みが強いもの同士の組み合わせ。
淡い色合いの赤には光沢感のある白。
そして暗い赤には落ちついた暗い白。
あなたもいろんな赤といろんな白の響き合いを楽しんでみてはいかがですか?大切なティーカップが見つからないので一服。
紅茶の色とカップ内側の白の組み合わせなんて考えてもみなかったなぁ。
なるほどなるほど…。
あ…人もいるし景色も描かれてる。
へえおもしろ〜い。
へ〜え。
絵柄にもツボがあるんですよ。
ティーカップの絵柄それは形と密接な関係があります。
口が幅広で側面から見ると少し横長の形が一般的。
いったいどうしてなんでしょうか。
磁器のティーカップというのももともとヨーロッパには無くて茶と一緒に中国から入ってきたものです。
その頃のコーヒーはすごくドロドロとした苦い飲み物で…そのように言われています。
コーヒーに比べ紅茶は高い温度でいれるのが一般的。
こうして横長になったティーカップの側面。
広々とした空間に絵が描き込まれるようになります。
やがてカップの形を生かしたユニークな試みも始まります。
こちらは19世紀に作られたティーカップ。
カップの側面には西洋の騎士とトルコの兵士の戦闘の様子が描かれています。
馬に乗り甲冑をつけているのが西洋の騎士。
こちらがトルコの兵士です。
倒れているのはトルコ兵。
襲いかかる西洋の騎士に別のトルコ兵が一撃を加えようとしています。
躍動感あふれる戦闘の場面がカップ1周を使って展開されています。
一方ソーサーには勝敗の結果が描かれています。
倒れているのは金髪のヨーロッパ兵。
トルコ軍が勝ったようです。
戦利品として食料を運ぶ兵士。
ティーカップ全体が物語を表現するために巧みに利用されるようになったのです。
二つ目のツボは…物語が描かれたティーカップは茶会でどのような役割を果たしたのでしょうか。
イギリスの生活文化を研究する佐藤さんに伝統的な英国式の茶会を開いてもらいました茶会にはさまざまなマナーがあります。
そして紅茶を飲む時は…そうすると目に入るのがティーカップの絵柄。
茶会での話題は自然とこの絵柄に及びます。
物語が描かれたティーカップは場を一層盛り上げるものだったのです。
ティーカップの模様で人気があったものは…そんなティーカップの名品。
モチーフはギリシャ神話です。
神々が活躍するギリシャ神話の物語は教養のある人々にとって知っているのが当たり前でした。
例えばこのティーカップ。
トロイア戦争の原因となったエピソードが描かれています。
最高神ゼウスの命令で最も美しい女神を選ぶことになったパリス。
女神たちの中からアフロディーテを選びます。
その証しとして黄金のリンゴを手渡しています。
他の女神たちが嫉妬し人間界を巻き込んだ大争乱が起こります。
増えすぎた人類を減らそうとしたゼウスの企みだったのです。
草木を模した把手のデザイン。
物語の世界に見事に溶け込んでいます。
主要な人物には浮き彫りが施され物語を生き生きとしたものに感じさせています。
茶会に参加した人々がギリシャ神話の薀蓄を披露し合う様子が目に浮かんでくるかのようですね。
ティーカップの絵柄には上流階級の人々の変わった遊びをうかがわせるものもあります。
田園の中で逢瀬を楽しむ男女が描かれているのですが…。
実はこれらは本当のカップルではない男女が恋愛ごっこを楽しんでいる様子。
草刈さんおかしなところに気付きませんか?う〜ん…。
あれ?赤ちゃんがいるけどなんだか顔が妙に老けてない?つなぎの服は赤ちゃんの衣装なんですが着ているのは大人の男性!実はこれ…そのため使用人に赤ちゃんの格好をさせていたのです。
アハハ…。
ああコスプレしてたんだね。
当時の貴族たちの退廃的な遊びの様子をティーカップに描き茶会で話題にしていたのです。
ティーカップに描かれた物語を楽しむだけでなくティーカップを前に繰り広げられた物語に思いをはせてみるのも一興です。
(おなかが鳴る音)探してたらおなか空いちゃって。
ちょっとつまみ食いしよう。
草刈さんじかに食べるなんてもったいない。
せっかくですからケーキスタンドに盛りつけてはいかがですか?ティーカップ以外にもお茶のひとときを盛り上げるものがあります。
カーテンテーブルクロスからティーセットに至るまですべてが重厚な装飾でまとめられています。
中でも豪華な雰囲気を演出しているのが銀器です。
ティータイムにはたくさん銀器が使われますが「銀器を持つ」ということは当時から富の象徴と言われておりましたので…その渋い輝きこそイギリスならでは美意識をうかがわせるものでした。
今日最後のツボは…茶会で定番とされている銀器はケーキスタンドやティーポットナイフやフォークなどのカトラリー。
ケーキスタンドには下から順にサンドイッチケーキなどの生菓子そして焼き菓子を乗せるしきたりです。
取ったらスタンドに戻さずに隣の人に勧めるのがマナーです。
特にポットには古くから銀が使われてきました。
それには理由があります。
保温に適しているため。
そして毒殺を防止するためです。
え!?毒!?茶会は時に陰謀の舞台でもありました。
銀には毒によく用いられた硫黄に反応し黒ずむ性質があるのです。
銀は上流階級の人々の東洋への憧れを表現するものでもありました。
茶筒には「茶」という漢字。
スプーンはほたて貝の形をしています。
かつて茶が中国からもたらされた超高級品だった時代をしのんで中国の道具を銀で再現したのです。
イギリスで午後の茶会が開かれるのは夕刻4時。
薄暗い室内でとっておきのティーセットをご紹介しましょう。
ろうそくの明かりに照らされ昼とは異なる表情を見せてくれます。
こちらはお湯をためておく器。
レースを模した豪華な装飾が施されています。
銀の表面に細かな点を連ねて彫り込まれた装飾。
ろうそくの明かりで一層際立ちます。
銀器についた無数の傷。
長い間使われ続けてきたことを物語る証しとして人々はこの傷を珍重してきました。
イギリスの人々にとって銀は茶会のひとときを幻想的な輝きで彩ってくれる大切なものだったのです。
ああよかった見つかりました。
食器棚の一番奥にあった包み。
その中にしまってありました。
あ〜あったあった大切なティーカップ。
これね結婚記念に友人からもらった物なんです。
新婚の頃はよく使ったんです。
でもしばらく使ってなかったんですけどね。
妻が割れないように何重にも包んでしまっといてくれたんですね。
「大切な思い出の品だから」って。
うれしいねぇ。
(チャイム)ピンポーン…あ!帰ってきた!は〜い!今開けるよ〜。
2月。
2014/04/06(日) 23:00〜23:30
NHKEテレ1大阪
美の壺・選「ティーセット」[字]
身近なテーマを中心に、美術鑑賞を3つのツボでわかりやすく指南する新感覚美術番組。今回は「ティーセット」。案内役:草刈正雄
詳細情報
番組内容
【司会】草刈正雄,【語り】礒野佑子
出演者
【司会】草刈正雄,【語り】礒野佑子
ジャンル :
趣味/教育 – 音楽・美術・工芸
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
OriginalNetworkID:32721(0x7FD1)
TransportStreamID:32721(0x7FD1)
ServiceID:2056(0×0808)
EventID:12209(0x2FB1)