ダーウィンが来た!「カナダ・ホッキョグクマ “歩いて冬眠”の秘密」 2014.04.06

「おいらホッキョクグマ。
ひえっひえの冷た〜い雪と氷がだ〜い好き。
地上最大の肉食動物だぜ。
クールだろ?」。
年に一度ホッキョクグマが大集結する特別な場所があります。
その数なんと900頭!日本がすっぽり入ってしまうほどの広〜い海の近くです。
集まったクマたちは世にも奇妙な状態だといいます。
「歩く冬眠」!?一体どういうこと?こんなふうにケンカをしていても歩いていても体の中は冬眠状態だというんです。
今日は氷の王者ホッキョクグマその驚きの能力に迫ります。

(テーマ音楽)白く見えるのは氷のかけら。
海がシャーベット状になり凍り始めています。
私たちはホッキョクグマを求めてハドソン湾の海辺にやって来ました。
見通しのいい大地で探していると…。
車は行く先々で立往生。
地面が凍ったり解けたりを繰り返すこの時期ならではの苦労です。
北緯60度。
荒涼とした風景がどこまでも広がり生きものの気配はあまりありません。
そんな場所にボコボコと開いた大きな穴を見つけました。
これはもしかして…?そうです!ホッキョクグマの足跡です。
人の手と比べると随分大きいですね。
雪の上をまっすぐに続く足跡をたどってみると…。
やぶの中で何か白いものが動いています。
いました!ホッキョクグマです。
雪の上にごろん。
氷点下50℃でもへっちゃらなので冷たい雪の上は快適です。
やっぱり大きな足ですね。
体重600kg体長2.5mにもなる巨体。
地上最大の肉食動物です。
おや?立ち上がりました。
この季節ホッキョクグマは皆ある場所を目指します。
向かう先はハドソン湾に流れ込む大河チャーチル川の河口付近。
大量の真水が川から海へと流れ込む場所です。
真水は海水より早く凍るため湾内で一番早く海が凍り始めます。
ホッキョクグマは真っ先に氷が張る場所を目指していたんです。
目的地の近くまでたどりついたこのクマ。
何かを気にしています。
あ!もう1頭やって来ました。
2頭が近づきます。
ホッキョクグマはふだんは単独生活。
こうして出会う機会はほとんどありません。
それがこ〜んなに集まっています!毎年10月チャーチル川周辺にはホッキョクグマが大集結。
その数はなんと900頭にも上るんです。
おっと!ケンカが始まりました。
2mを超える巨体がぶつかり合います。
あれ?あっという間にケンカをやめてしまいました。
しかも寝っ転がり相手に無防備な姿をさらしています。
分厚い毛皮と脂肪をまとうホッキョクグマは動くとすぐにオーバーヒート。
体を雪で冷やしているんです。
再び近づく2頭。
仲良く一緒に歩きます。
そして…またケンカ。
これ本気のケンカではなく遊んでいるだけなんです。
こちらでは海岸に打ち上げられた海藻をあさっています。
肉食動物のホッキョクグマにとっておなかの足しにはなりません。
ケンカと同じく食事も本気ではないようです。
集まったクマたちは何をするでもなくただぶらぶらと過ごしています。
「氷の王者」の面影は…どこにもありません。
実はクマたちは今…遊んだり海藻を食べたりするのは「空腹を紛らわす行動」だと考えられるんです。
どういうことかご説明しましょう。
11月から7月までのおよそ8か月間ホッキョクグマは氷の張った海の上で暮らしています。
狙いはアザラシ。
氷の割れ目からアザラシが息継ぎのために現れるところを捕らえるんです。
アザラシはホッキョクグマの食べ物の実に9割を占めます。
脂肪たっぷりで高カロリー。
1頭捕まえれば10日間は生きていけます。
ところが7月から11月海の氷がなくなるとアザラシをとれなくなってしまいます。
つまり4か月間もほぼ絶食をしなければならないんです。
まるまると太っていた体は秋の終わりには激痩せ状態。
体重の4分の1150kgも痩せてしまいます。
そんなわけでチャーチル川に集まったホッキョクグマたちはみんなおなかペコペコなんです。
1日でも早くアザラシをとるため氷が張る前からここに陣取り今か今かとその時を待っているんです。
ちょっと待った!どうしましたか?ヒゲじい。
ひもじい思いをしながらじっと待つくらいなら私いいアイデア知ってますぞ。
うん?他のクマみたいに穴を掘って冬眠しちゃえばいいんですよ。
空腹のつらさも味わわなくて済むんじゃないですかね?はい。
実はもうホッキョクグマは冬眠状態なんです。
えっ!冬眠してるの!?だって動き回ってますよ。
不思議ですよね。
専門家に聞いてきました。
冬眠とは言ってもホッキョクグマの場合食べ物がなくなればこの「歩く冬眠」状態になれるんですよ。
へえすごいですな!でもやっぱりつらい時期は穴の中で寝てるほうがいいんじゃないかな?いいえ。
休んでいられない事情があるんです。
どんな?ホッキョクグマは海が凍っている間はほぼアザラシだけを狩って過ごします。
夏に氷が解けだしてもできるだけ長く狩りを続けたいため残った氷とともに湾のあちこちにたどりつくんです。
あららら。
そこからいち早く海が凍るチャーチル川の河口を目指して数百kmも歩かなければなりません。
寝てるわけにはいかないんですよ。
大変なんですなぁ。
ちなみにハドソン湾以外にすむホッキョクグマも氷の上のアザラシを主食にしています。
なので真っ先に氷の張る場所へ移動しなければならない事情も一緒です。
「歩く冬眠」は独特の食生活を持つホッキョクグマが編み出した生きるための能力なんです。
なるほど!ホッキョクグマはやっぱり氷をアイスる生きものなんですなぁ。
氷を求めてチャーチル川に集まるホッキョクグマ。
一足遅れてやって来るものがいます。
海岸から離れた木立の中に見つけました。
顔を上げた1頭。
その隣に小さな顔がのぞいています。
ホッキョクグマの子供です。
生まれておよそ10か月。
体の大きさは1mほど。
ふわふわの毛並みですね。
ごろごろ転がるのは母親。
体温を下げるとともに白い毛並みをきれいに保つためです。
それを見た子供も転がり始めました。
何でも母親をまねるんです。
一見ほのぼのとした光景ですが親子は厳しい試練をくぐり抜けてここまでたどりつきました。
ホッキョクグマの子供は春先ほとんどが双子で生まれてきます。
生まれて3か月ほどの子供たち。
母親について氷の海を移動しながら暮らします。
獲物のアザラシが豊富な間は母乳もたっぷりともらえすくすくと成長していきます。
しかし夏氷が消えアザラシを食べられなくなると状況は一変。
多くの子供が飢えで命を落とします。
チャーチル川にやって来たこの親子も子供は1頭だけでした。
残った1頭を何とか育てたい。
母親は絶食中で自分もつらいのにもかかわらずお乳を与え続けます。
氷が張る日まで母と子は無事に生き抜くことができるんでしょうか。
第2章はついに氷が張り始めます。
でもあれ?海に落ちちゃいました。
更に母と子に最大の危機が迫ります。
一体どうなっちゃうの?ヘリコプターで運ばれようとしているのはホッキョクグマです。
人が暮らす町に入り込んでしまったため自然に返されようとしているんです。
ホッキョクグマが集まるチャーチル川の河口には900人が暮らす町があります。
ここは大昔からホッキョクグマの集結地。
10月から11月にかけて腹ペコのクマたちがやって来ます。
万が一人を襲ったら大変です。
そのため専門の監視チームが24時間態勢でパトロールをしています。
町の近くに現れると車のクラクションや威嚇用の銃で脅かし追い払うのです。
嫌な体験をさせることで人の近くから遠ざけようという作戦です。
町から離れようとしない時は麻酔で眠らせヘリコプターで町外れまで運びます。
手間はかかりますがクマを傷つけず自然へ返すんです。
ハッピーハロウィーン!10月31日。
年に一度のハロウィーンの日です。
家族で安心して祭りを楽しみます。
その裏にはホッキョクグマとの共存を目指す町の人たちの努力があるんですね。
11月半ば。
チャーチル川周辺は日増しに雪深くなってきました。
本格的な冬がすぐそこです。
おや?白いものが動いています。
ライチョウです。
冬に備え真っ白になった羽毛には空気がたっぷり含まれています。
厳しい寒さの中でも活発に動き回れるんです。
こちらは…体長60cm。
一番北に暮らすキツネです。
まだうっすらと黒い夏毛が残っていますがこれから冬に向けて真っ白な毛に生え変わります。
ぐっと気温が下がったある日のこと。
ひときわ巨大なオスのクマが悠然と歩いています。
向かった先は海です。
この日海岸から500メートルほど先の沖まで初めて氷が張ったのです。
4か月ぶりの食事にありつこうとオスたちは意気揚々と氷の海に出ていきます。
しかし氷はまだ薄く簡単に割れてしまいそうな場所がいくつもあります。
そんなに勢いよく行って大丈夫でしょうか?おっと!氷を踏み抜いてしまいそうです。
それでも構うことなく歩いていきます。
不安定な氷の上を歩くためのちょっとしたコツがあるんです。
何だか分かりますか?足の運び方にご注目。
前足をついた場所に後ろ足をつけていますよね。
ほ〜ら。
こっちも。
前足で安全を確かめた場所に後ろ足をつけているのだと考えられています。
これなら薄氷を踏み抜く心配もぐっと減りますよね。
あの大きな足跡は前足と後ろ足が重なって出来たものだったんです。
日が高くなるころ。
張ったばかりの氷の先に湯気のようなものが立っています。
氷が大きく割れ下の海が見え始めたんです。
張ったばかりの氷は気温が上がればすぐに解けだし風によって簡単に流されてしまいます。
氷が大きく緩み始めました。
1頭のオスが取り残されています。
さすがのホッキョクグマもこれではなすすべがありません。
氷が重なり合った場所に避難します。
でも風が吹くと氷はバラバラに。
とうとう陸を目指して泳ぎだしました。
泳ぎはうまいホッキョクグマ。
でも極度の空腹状態では体力の消耗が激しすぎます。
そのころ。
母親は子供と一緒に陸地でじっとしていました。
小さな子供を連れて氷が張ったばかりの海へ向かうのはあまりに危険だからです。
しかし陸にいても安全とは限りません。
ホッキョクギツネが現れました。
万が一ちょっかいを出されれば子供が傷つけられるかもしれません。
慌ててキツネと子供の間に入ります。
ようやく追い払いました。
空腹をこらえての子育て。
お母さん本当に大変そうですね。
ある日の夕暮れ。
親子に更なる危険が忍び寄ってきました。
1頭のオスが近づいてきたのです。
オスは時には空腹のあまり子供を襲って食べることもあります。
両者の距離はわずか10m。
どちらもまだ相手の存在に気付いていません。
子供が気が付き駆け出しました。
今回は突然出くわしたためオスは驚いて逃げました。
いや〜本当に危ないところでした。
よほど怖かったのか母と子は1kmにわたって走り続けました。
ようやく落ち着いた母と子。
母親が何やら地面を掘っています。
地面にたまった水を子供に飲ませてやるのです。
走り続けて熱くなった体を冷まします。
子供は疲れ切り地面にへたり込んでしまいました。
母親は子供が立ち上がるのをじっと待ち続けます。
海に氷がしっかり張る日まであとわずか。
もう少しの辛抱です。
しかしその待望の日は年を追うごとに遅れています。
地球温暖化の影響で氷が張る時期がこの30年で1か月近くも遅れているのです。
そのため狩りの機会が減りチャーチル川周辺に現れるメスの体重は平均で50kg近く減りました。
「ホッキョクグマの楽園」と言われるハドソン湾でもその環境は年々厳しさを増しているのです。
チャーチル川周辺の海は一面の氷に覆われました。
氷の上がところどころ山のように盛り上がっています。
氷に厚みが増した証拠です。
こうなればホッキョクグマたちは安全に狩りに向かえます。
白一色の氷の世界。
でも黒っぽい所がありますよね。
下の海が見えている場所です。
そのそばに何かいるのが分かりますか?ホッキョクグマです!氷の割れ目からアザラシが息継ぎに上がってくるのを待っているんです。
続々と氷の海へ出てきたホッキョクグマたち。
その中に母親と子供の姿を見つけました。
しっかりと氷を踏みしめ歩いています。
海岸にやって来たこの親子もそろそろ氷の海へ向かいます。
子供が母親から少し離れ地面をたたいています。
自分で獲物をとる練習です。
少しずつ独り立ちの準備をしているんです。
子供にとってはこれからが勝負の時。
次の夏が来る前に母親から狩りのしかたを学ばなくてはなりません。
地上最大の肉食動物ホッキョクグマ。
極北の地を生き抜くため数々の驚きの能力を編み出しました。
氷の上でこそ光り輝く命なのです。
天正5年11月。
2014/04/06(日) 19:30〜20:00
NHK総合1・神戸
ダーウィンが来た!「カナダ・ホッキョグクマ “歩いて冬眠”の秘密」[字]

地上最大の肉食獣、ホッキョクグマ900頭がカナダ・ハドソン湾に大集合!クマたちは“歩く冬眠”という世にも奇妙な状態で氷の到来を待つ。氷の王者の驚きの能力に迫る。

詳細情報
番組内容
地上最大の肉食動物、ホッキョクグマ900頭が大集合! 毎年秋、カナダのハドソン湾沿岸で見られる光景だ。集まったクマは、世にも奇妙な状態で氷の到来を待つ。それは“歩く冬眠”。ホッキョクグマの主食は氷の上のアザラシ。氷のない夏から秋にかけての4か月間は絶食状態に陥る。“歩く冬眠”は、長く苦しい時期を乗り切るために編み出した秘策なのだ。氷の王者ホッキョクグマ、その知られざる驚きの能力に迫る。歌:平原綾香
出演者
【語り】首藤奈知子,龍田直樹,豊嶋真千子

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
趣味/教育 – 旅・釣り・アウトドア

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音声 : 2/0モード(ステレオ)
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