京都市の中心部から北へ15キロ。
三方を山に囲まれた大原。
平安の昔から隠れ里として知られている。
三千院そのたたずまいは隠遁の地としての面影を今に残す。
早春の山里では畑仕事が忙しくなる。
築100年の古民家の朝。
庭ではようやく春の花が咲き始めた。
ここで自然に寄り添い手づくりの暮らしを大切にしている人がいる。
暖かくなるまでは欠かせない薪ストーブ。
15年前からこの古民家で暮らすベニシアさんの必需品だ。
(ベニシア)夜じゅうず〜っと弱火で全部閉めて空気が入らないようにすると朝までもつのね。
ほんで時々なくなる時もあるけどまだついてるんだったらすごくうれしい。
簡単にまた火を起こすのできるから。
熾火は部屋を暖めてくれるだけでなくもうひとつお楽しみがある。
それは煙突の隙間からにじみ出てくるもの。
どのぐらいたまっているかたらいを確認するのが日課。
今取ったものは木酢液。
ほんで今年何か発見したものなのね。
ある朝起きたら部屋はホントに暖かいでもすごい臭いしてるのね。
ほんで何だろうねそれしばらく続いたらほんで何か汁が出てるのねここから。
で取ったらその汁こういう木酢液が自然に出てる。
で少しずつ使ってるんですけど。
じゃあまずここに入れます。
でここ置いといたら丸いところからポトポトポトポトって落ちてくる。
だから本当に何か自然に出来るのすごくうれしい。
古民家暮らしに予想外の出来事は付き物。
ありがたく使わせてもらう。
これをちょっと。
少しだけでいいからね。
木酢液は水で薄めて使う。
木酢液は結構臭いが無くなる効果がある。
消臭殺菌効果がある木酢液を使って廊下やトイレの床を拭き掃除。
日本に住んで40年ぞうきんがけも慣れたもの。
もう日本来てからぼったん便所の家は結構今までこれで4つ目。
何か古い家住んだらこういうトイレ多いけど慣れてしまった。
だから初めてここ住んだら大原の人が「えっ!?トイレがこんな感じ?ベニシア大丈夫か!?」って。
「イギリス人にとってつらいんじゃないか?」。
「いや。
別に」なんか言ったら皆が何か「え〜っ!」っていう感じだったけど。
仕上げはミントのアロマオイル。
下水がまだ整わないこの地で自然に優しい手入れを工夫する。
これがベニシア流。
(スプレーする音)20歳の時イギリスから日本にやって来たベニシアさん。
英会話学校の教師をしながら4人の子どもと2人の孫を授かった。
15年前大原の古民家に移り住んだ時主を無くしていた家はボロボロだった。
家族総出で修理した。
それが楽しかった。
土を掘り起こして庭を造り古いタイルを再利用して自分好みのキッチンを作った。
毎年庭で育てる150種類の花やハーブを使って身の回りの物はできる限り自分で手づくりする。
それがベニシアさんの毎日だ。
古民家の補修はまだまだ進行中。
今日は夫の正さんが窓枠を直す。
(正)この家結構傾いてて閉めてもちゃんと塞ぎきれなくなってたから今度もっとごっついのを付け直して。
冷たい隙間風が吹き込む窓。
以前取り付けた細い角材では足りないため太い角材を窓枠に足して隙間を塞ぐ。
これで応急処置は完了。
家のあちこちに正さんがこれまで施してきた補修の跡が残っている。
古民家を支える大切な柱にも。
(正)柱が腐っててもう何か浮いた状態やったんすね。
腐った部分の柱そうね30センチぐらい切ってそれでそこに別の柱とその柱と同じぐらいの木を切って簡単なほぞを作ってそれではめたんすけど。
はめる時はちょっと家を車のジャッキで持ち上げて。
結構ジャッキでも簡単にぐっと家が持ち上がって。
そんな大変な作業じゃなかったですね。
自分で簡単な小屋みたいな家みたいなのを自分で作れないかなと思ってたんすよ。
それでゼロから自分で作るのに比べたらこんな修理というのは簡単に出来ますよね。
それとあとサラリーマンじゃないから時間が結構自分で自由に都合できるしやれる事はやったらいいしやれない事はもうそれはプロに頼むしかないなと思って。
その辺を自分で判断してできるだけ自分でやりたいなとは思っていますね。
裏庭で何やら作り始めた正さん。
あっ何作ってるの?使っているのは木材と金網。
庭仕事に使う物だという。
こうやってこれはこう来て。
いいですね。
(正)とか言ってこんなんやってからあとで「あれ全然違った」とか…。
まあでも正の作った物大体バッチリじゃないですか。
え?そう言ってまた作らせようという作戦だ。
そう。
(木づちでたたく音)
(正)なんとなくはまった。
何か色がいいね。
何かこのグリーンぽいの色がね。
(正)やってみたいですか?じゃあ1回やってみようか?簡単なんやけど。
フッフッフッフッ。
こうすんの?手けがしないようにね。
問題見えない…。
あ見えるか。
真ん中でいいの?わっ!
(正)あっあっ。
いいよそれで。
(ねじ回しの音)
(正)ネジをちゃんとはめて。
(ねじ回しの音)
(正)うわ!手けがせんときや。
(ねじ回しの音)あ〜あ〜!もういいもういい!何か見とったら手けがしそう。
ハッハッ!大工仕事はちょっと苦手なベニシアさん。
(ねじ回しの音)はい。
枠が出来ました。
すごい。
はい。
アッハハハハ!
(正)何か斜め。
最後までちゃんと入れきってほしいな。
何か1個も最後まで曲げずに入れられない。
ハハッ!全て全部ひん曲げるという。
フフフフ…。
手仕事が得意な正さんにベニシアさんは絶大な信頼を寄せている。
(正)出来た〜!パートナーが来ました。
ハハハハ!どういう意味?出来ました。
ハハハハ!うれしいです。
ええじゃん。
すごくいい。
ありがとう。
うれしいです。
今年のスプリングガーデンがもうすぐ始まるから。
(正)うん。
夫婦で力を合わせて作ったのは篩。
早速春の庭仕事。
自家製の堆肥を篩にかけて小石などを取り除く。
上に載せるためにこういうふうに細かく。
ちっちゃいスイセンが出てるから。
ここもスイセンある。
まだ花の咲いていないスイセンやチューリップにフカフカの堆肥をプレゼント。
花開くその日までもう少し。
楽しみに待つ。
一足早く咲いたスミレの花でケーキ飾りの砂糖漬けを作る。
春の時期でスミレが出るから。
かわいい何かちょうど隠れてるみたいな花ですから見つけたら何か砂糖漬けにしてケーキを飾るのね。
材料はスミレとミントもしようと思ってます。
で卵の卵白と白砂糖とあとローズウォーターちょっと入れます。
これまあ作ったローズウォーターけど。
香りがある花びらをウオッカに漬けてそれで1週間か2週間暗い所に置いとく。
そして時々シェイクするとこういう色になるのね。
で花びら取ってこしてローズウォーターになります。
だから化粧水にもなるしいろんなもの使い方があるけど。
でまずそのローズウォーターを卵白に。
お手製のローズウォーターをスプーン1杯加えるのがポイント。
卵白に加える。
これちょっと混ぜて。
これは何かのりみたいになるのね。
そしたら…。
この…これだけ使いますから。
優しい香りのねスミレは。
でこの中に砂糖漬け。
スミレは食べてもいいのね。
一応ハーブのリラックスする効果がある。
まあいろんなハーブで出来ると思うんですけど。
だからもしスミレがあんまりなかったらミントとかレモンバームの小さいの葉っぱだったらね。
葉っぱでもかわいいのね。
だからあんまりスミレ持ってない人は葉っぱも。
ここに。
じゃあ出来ました。
皆さんやってみて下さい。
半日乾かせばスミレの砂糖漬けが完成。
京都大原三千院。
ベニシアさんその参道へ散歩に出た。
こんにちは。
フフフフ…。
・こんにちは。
大好きなおばあちゃんに会いになじみの食堂へやって来たのだ。
あっ!こんにちは。
元気?
(澤田)元気。
どうぞ。
迎えてくれたのは…大原ではちょっとした有名人だ。
今いくつになったのかな?96歳。
96歳。
はい。
じゃ大原で一番上かな?もう年寄りが大原じゃ…。
元気ですね。
元気。
まだ散歩を…。
散歩。
散歩してる。
あ〜。
だから年が…。
そんでねごはんがおいしい。
たくさん食べる。
うん。
おばあちゃんだけどまだ仕事してるやん。
仕事してる。
お客さんと…。
へ〜。
何かおばあちゃんが有名じゃない?仕事せなんだらなアカンで。
ぼける。
そうね。
ホントそう。
30年ほど前にこの食堂を開店して以来お客さんを迎え気持ちよく送り出す。
うのおばあちゃんはベテラン看板娘。
わ!おいしそう。
豆乳鍋セット。
豆乳鍋。
15年前ベニシアさんはよく息子を連れてこの店を訪れた。
(澤田)ひじき見たらぼん思い出すな。
あの子ひじきが大好き。
いつも私が心温かくなったのはおばあちゃんが必ずひじき持ってきて何にも注文しなくても持ってきて「食べさせて」って言ったのよね。
すごいなと思った。
もう大きいなって?うん。
もう今は大っきい。
(澤田)今でもぼんはひじき食べる?うん。
納豆とひじき。
おいしい。
ここの味全然変わらないね何年も。
(澤田)おかげさんで皆来てごはん食べてくれはったら帰り際「おいしかった」言うて帰らはるの。
うん。
ね。
ひじきが好き。
昼食を終えたら他のテーブルの人も誘ってお茶を楽しむ。
同じ参道沿いで革製品の店を営む福岡さん。
福岡さんももう大分なんな。
どのぐらい?
(福岡)30年くらい。
大原の空気が好き?うん。
空気好きですね。
一番好きですね。
うん。
そうねえ。
ここはやっぱり一番いいっていうのは例えば僕が住んでる家で表を見ると都会なんですよね。
うん。
観光客がたくさん歩いてて。
ところが例えば5時になると全然いなくなって。
あ〜。
静かになるね。
そう。
静か。
で田舎が帰ってきて5時から日暮れまですごくやっぱりいいんですよ。
それと私の家は表が通りで裏は畑なんですね。
だからこっちを見れば都会こっちを見れば田舎っていう感じでね。
じゃあ最初から野菜作ったりしてたの?
(福岡)そうですね。
もう最初から。
福岡さんはベニシアさん同様大原に惹かれ移住してきた人だ。
(ミシンの音)食堂から参道を30メートルほど上った所に福岡さんの自宅と工房がある。
(ミシンの音)家の裏の畑で大原に来てから始めた野菜作りが楽しくてしかたがないという。
(福岡)耕して植えたら勝手に生えて大きいなってきよるんですよ。
で花が咲いたり実ができたり大地はすごいなっていう実感できるんですね。
福岡さんは天然の革を使って手作りのバッグや小物を作っている。
店に出す物はデザインから縫製まで全て自分で行う。
革を切り出す時に使う道具の一つ一つにも福岡さんの物作りへのこだわりが込められている。
(福岡)ベルトの表側と裏側一緒に切ってます。
実はあの〜私はこれ全部自分で考えてやってるんですよ。
先生ってのがいないんです。
今までね。
であの〜まあ例えばこれでもホームセンターで買ってきたやつに手を付けて作ってる訳ですね。
これも市販のこれコンパスなんですね。
…を改造してこういうふうに使ってる訳です。
自分で道具も全部作ってやってます。
作るの好きなんですね。
こんな仕事が結局一番こう…自分で何か新しくてやる時には一番大切になってくるんじゃないかなと思いますね。
大学で芸術を学んだ後バッグメーカーでデザイナーとして活躍。
パリで家族と暮らし自らのブランドも任された。
けれど自分でデザインしたものを自分の手で表現したいという思いから帰国。
古くからの伝統と豊かな自然に恵まれた大原に工房を構えた。
福岡さんが作るベルトのアクセントとなっているのが色鮮やかな模様の革。
はい。
で…。
これが今私とこでここに入れてるこの革なんですね。
着物の友禅染の要領で自ら革を染める。
1度に1色ずつ12色なので12回。
重ね染めしたものを使う。
(福岡)革の場合は着物の場合と違って難しい所はまあ人間でもそうですが背中とおなかってのは全然革の質が違うじゃないですか。
部分によって染着度がまず違う。
それとあの個体によって違うんですよやっぱり。
脂性の人とか荒れ性の人とかいるのと同じで牛もやっぱり荒れ性の人も。
だからそんなんでやっぱり革に染めるっていうのは非常に難しいですね。
大原に移り住んで30年以上。
ここで革製品を作ってきた福岡さん。
この地に根を張って大原の空気を目いっぱい感じながら自分らしい作品をこれからも作り続ける。
人と自然のバランスが心地よい大原は福岡さんの終の住みかだ。
大原すごくいい所っていうかなあるのはねあの〜どっかへ旅行なんかで出てくるじゃないですか。
で帰って来たりした時にやっぱ感じますね。
世界の他とも違うし日本の他の場所とも全然違いますから。
「あっ!大原だ!」って感じます。
あれが一番…まあどう表現していいか分かんないけど一番好きなとこですね。
ベニシアさんはどうやった?大原に来た時。
ああ!どうだった?だからう〜ん…。
郵便局行った時ね「ベニシアさんこんにちは」って言った時に「え〜っ!私の名前もう覚えた」っていう感じ。
ず〜っと日本で何年も住んでたんだけどちょっとホームシックになる時あるね。
ここ引っ越したらもうホームシックなくなった。
もう自分の庭とか自分の生活空気がいいしすごい…。
(澤田)よかったな。
よかったと思ったの。
うん。
そんだけな縁があったんや。
まあ大原見つけなかったからもしかして帰ったかもしれないねイギリスに。
でも大原見つけたからもうここで絶対ず〜っと死ぬまで居ると思います。
よかったね。
うん。
ねえ。
「大原で一番好きなものは?」。
ベニシアさんは答えた。
「それはみんなの優しい笑顔」。
もうすぐイースター。
春の訪れを祝うお祭り。
ベニシアさん卵の飾りを作る。
何かウサギ描いてるけどネコに似てるかな…。
私今日だからイースターエッグの上に絵描いてイースターの木を飾りたい。
何か卵いっぱい飾ったら植物がいっぱい今年できたらいいな〜。
厳しい冬の後には必ず春が訪れる。
暖かな日ざしの下に花が咲く日。
一日も早くその日が訪れますように。
学んでいきましょう!
「学ぼうBOSAI」今回のテーマは…
2014/04/06(日) 18:00〜18:30
NHKEテレ1大阪
猫のしっぽ カエルの手「15年目の春」[字]
草花が芽吹き始めた京都・大原。ベニシアさん、夫の正さんと庭仕事で使うふるいを作る。スミレを砂糖に漬けたお菓子作り。その後、春の日差しを浴びて大原散歩へ出かける。
詳細情報
番組内容
芽吹き始めた草花が、冬の終わりを告げる京都の大原。まだ肌寒さを感じる朝、ベニシアさんは、まきストーブに火をつけて部屋を暖める。夫・正さんに、子ども部屋の壊れた窓枠を修復してもらったり、庭仕事で使うふるい作りを手伝ってもらったりする。完成したふるいを使って肥料を作り、庭の植物へ。その後、春の大原を散歩。大原に移り住んでからなじみにしている食堂に立ち寄り、店の名物おばあちゃんと大原への思いを語り合う。
出演者
【出演】ベニシア・スタンリー・スミス,【語り】山崎樹範
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
趣味/教育 – 園芸・ペット・手芸
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
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