アイソレーションタンク(フローティングタンク)とは感覚遮断装置とも言い、 イルカの研究で有名なジョン・C・リリー博士(1915~2001)によって1950年代に発明された、無感覚・無重力を体感できる装置です。
人がひとり、ゆとりをもって横たわれる箱形のタンクに、飽和状態にされた温塩水が25cm満たされています。この塩水はエプソムソルト(硫酸マグネシウム)と言い日本では豆腐を作る際のにがりとし
アメリカではアイソレーションタンクはフローティングタンクの名で知られています。 このタンクの研究は認知心理学者・神経内分泌学者・教育学者・精神科医達によって研究され、その研究成果により次の事が分かっています。
ストレスの軽減
定期的にフローティングすると、心拍数、酸素消費量、ストレスに関連した血液中の生化学物質(コルチゾル、副腎皮質刺激ホルモン、乳酸塩、アドレナリン)レベルの低下がみられることが、オハイオ医科大学、ローレンス大学、ウィスコンシン州アップルトン、セント・エリザベス病院、ブリティッシュコロンビア大学などの研究で詳しくわかっています。これらの生化学物質はフローティング直後だけでなくその後数日間も低レベルに抑えられ、場合によっては何週間も持続効果があります。
対ストレス抵抗力の強化
フローティングにはホメオスタティック(恒常性維持)・メカニズムのストレスに対するセットポイント(設定値)を変える事でストレスに対する抵抗力を上げる効果があります。我々は一定レベルのストレスに耐えられるようになっていますが、その抵抗力の差は脳の視床下部プログラムに依存していると考えられています。視床下部には外からのストレスに対して、均衡を維持するのを助けるように働くホメオスタティック・メカニズムの中枢があると考えられています。フローティングの効果は、ストレス性のコルチゾル 等の生化学物質レベルを一時的に大きく下げるだけでなく、体験者が最後のフローティング後、何日もストレス性化学物質の低下が続く効果があります。これについて、オハイオ医科大学の神経内分泌学者ジョン・ターナーおよび心理学者トム・ファインは、「フローティングには、内分泌に関わるホメオスタティック・プログラムのセットポイントを変える力があり、視床下部からの影響が、結果的に副腎のストレス反応の低下を経験することになり、リラクゼーションの高まりに繋がる。」と結論づけた。
このようにフローティングには、単なる一時的な効果があるだけではなく、代謝、ホメオスタシスのセットポイントを変化させ、逃走逃避反応を本質的に弱め、ストレスに対する抵抗力を増すことができます。
深いリラクゼーション
無重力で浮かぶフローティングは、他のいかなる方法でも体験できないほどの深いリラクゼーションが得られます。この深いリラックス体験は、交感神経と副交感神経のバランスを改善し、体内の免疫力や恒常性を賦活します。これにより心と身体のアンバランスによって生じる様々な自律神経症状(頭痛、めまい、肩こり、腰痛、ほてり、倦怠感、イライラ感など)が緩和されます。また不眠症の改善作用もあります。
θ波(シーター波)の生成と深い瞑想状態
1時間のフローティングで、最後の20分にアルファ波やベータ波からシータ波に脳波が移行することがあります。シータ波は就寝前や起床前に見られる脳波で、このタンクの中では意識が飛ぶことなくシータ波が観測されます。リラクゼーションの反応は、脳波のパターンが振幅の小さい忙しい高速β波から振幅の大きいゆったりとしたα波さらにθ波へと変化するのが1つの特徴 です。 大量のθ波は通常、寝入りばなのような覚醒と睡眠の境目のうとうとした(変性意識状態)の時にしか出ません。 θ波優勢の時の特徴として以下のような事が分かっています。
- 精神的リラックス。
- 記憶力増加:忘れていた事を思い出したり、情報を処理し記憶するのに適した状態。
- 被暗示性増加:与えられたデータを無批判に受け入れる、学習効果が高い。
- 直感力増加:新しいアイディアが、無意識の領域から直感として突然湧いてくる。
そして遅いアルファ波から時にはシータ波が観測されるこの状態は深い瞑想状態とも言えます。これは自他の境界の消失、融合などの「絶対的一者の体験」とされ、アイソレーションタンクの感覚遮断状態は、この体験を引き起こしやすい環境になっています。
- β波:14~50Hzの周波数、通常レベルの覚醒と関係しており神経の集中は外に向けられます。
- α波:8~13Hzの周波数、リラックスしている状態を示します。
- θ波:4~7Hzの周波数、深い瞑想状態、潜在意識との接触を意味します。
- δ波:0.5~4Hzの周波数、熟睡状態で寝ている時現れます。
マイケル・ジョーダンが精神を集中させ、試合で結果を残すために禅を行なっていたというのは有名な話です。禅はインドで 生まれた瞑想法であり、ジョーダンの師でありコーチであるフィル・ジャクソンが彼に実践させました。NBAプレーオフ11回の優勝を誇るフィル・ジャクソンは 禅マスターと呼ばれるほど瞑想に傾倒しており、選手たちに試合でのパフォーマンスを向上させるために瞑想を奨めたのです。瞑想はアップルのスティーブ・ジョブズやマイクロソフトのビルゲイツ、京セラ・KDDIの稲盛和夫など、大企業の多数の経営者も取り入れています。また、近年ではサッカー日本代表の長谷部誠なども瞑想法を日常生活に取り入れているとして話題になりました。芸能人ではミランダ・カーなども精神を安定させ、健康と幸福を感じるためのテクニックとして取り入れています。
潜在意識へのアクセスとイメージトレーニング
タンク内では、外的刺激がない事で網様体賦活システムは脳のボリュームを調節し、脳は情報に飢えた状態になります。 この状況で脳にメッセージが与えられると、脳はそのメッセージを100%受け止め吸収しようとします。更に、この状況下では入ってくる情報が良い悪いと判断する脳の部分が停止する為、直接潜在意識下に入れられます。 この情報は聴覚的・視覚的な物であろうが心の中でのイメージであろうが同等に受け入れられます。よって、フローティング状態でのイメージトレーニング(心的視覚想像能力)は、催眠法によるトランス状態に比べてもはるかに強力でイメージはよりリアルに感じられます。タンク内でのイメージトレーニングを利用して一流スポーツ選手がイメージトレーニングした結果では、それぞれの選手が自己新記録を出し、更新し続けています。アイソレーションタンクをスポーツのイメージトレーニングに用いた最も成功した例は、ロサンゼルス五輪の際のカール・ルイスであったといわれており、参加した4種目全てで金メダルを受賞しています。
記憶力・学習能力の向上と脳機能の強化
フローティングには血管拡張作用があるため、高血圧が緩和されるだけでなく、酸素や、その他の栄養素を脳全体に運ぶ血流が向上し、この脳に入る血流量の増加が、新たな脳組織の形成、ニューロンの育成、樹状突起の伸長・接合量の増加、新皮質の厚さ・重量の増加を助けていると推測されています。実験によると、記憶力テスト、問題対応能力テスト、総合思考能力テスト全てにおいて、フローティングをしたグループはそうでないグループに 比べ好成績を示したという事例があります。
ヴィジュアライゼーション(視覚化)
フローティングは睡眠と覚醒をコントロールする技術であり、覚醒した意識の中での夢見を可能にします。シータ波に近い脳波の状態では、鮮やかな映像が脳内に描写され、瞑想の熟達者が体験しうる意識状態に近いといわれています。
エンドルフィンの増大による慢性疼痛緩和と幸福感
フローティングにより血中エンドルフィンレベルが上昇する事で慢性疼痛緩和・軽い幸福感をもたらす効果があるとされています。
(エンドルフィン・endorphinは、脳内で機能する神経伝達物質のひとつです。内在性オピオイドであり、モルヒネ同様の作用を示し、特に、脳内の報酬系に多く分布します。内在性鎮痛系にかかわり、また多幸感をもたらすと考えられ、脳内麻薬と呼ばれることもある。β-エンドルフィンには鎮痛作用がある。)
その他
- 日常の悩みへの気づき、洞察の深まり
- 今までの人生への振り返り、外傷体験への気づきと受容、こだわりを手放す体験
- 変性意識状態、無の体験
- 新しい自己の発見
- 全身の筋弛緩によるマッサージ効果
- 神経、筋組織の修復促進
- 自己治癒能力の増大 免疫力の強化
- 疲労回復効果
などが期待できます。