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和田竜さん「長かった4年間は受験生のよう」 本屋大賞受賞会見

[掲載]2014年04月09日

百田尚樹さん(右)に祝辞を受ける和田竜さん 拡大画像を見る
百田尚樹さん(右)に祝辞を受ける和田竜さん

全国の書店員に囲まれて受賞を喜ぶ和田さん(中央) 拡大画像を見る
全国の書店員に囲まれて受賞を喜ぶ和田さん(中央)

表紙画像 著者:和田竜  出版社:新潮社 価格:¥ 1,728

 全国の書店員が選んだ一番売りたい本「2014年本屋大賞」に、和田竜(わだ・りょう)さん(44)の長編歴史小説『村上海賊の娘』(新潮社)が選ばれた。4月8日に開催された授賞式では、前年に『海賊とよばれた男』で同賞を受けた百田尚樹さんが祝辞を送った。「去年の受賞スピーチ で『直木賞の次に素晴らしい』と申し上げた本屋大賞の栄光が、明日からみんな和田さんのものになるかと思うと悔しいです。書店員のみなさん、海賊つながりで、どうか和田さんの受賞作の隣に私の本を並べてください」と笑いをとり、和田さんはたじたじで受賞スピーチを始めた。

<受賞スピーチ>
 絶対やりにくくなるだろうなと想像してびくびくしながら来たんですが、心配した通りに百田さんが「ウケ」を取り、案の定というか……。あ、まず百田さん(祝辞を)ありがとうございました。
 このたびは本屋大賞をいただきありがとうございました。書店員のみなさまは仕事ではないプライベートの時間に、10作品の候補作を短い期間で全部読むというのは大変なことだったと思います。
 もともと『村上海賊の娘』は「週刊新潮」で連載していたんですが、当初は1年ちょっとで終わる予定を2回ほど延ばして、2年ほどに延長していただきました。4年かけて完成したもので、資料を読むのにまず1年。ぼくは小説を書く前にまずシナリオを書くものですから、シナリオに1年、(雑誌)連載で2年、(本にするのに)直して1年、とだらだらやっていました。資料を読みこんだ1年間は、資料に付箋(ふせん)をつけてはノートを取りの繰り返しで、受験生かという感じでした。
 ぼくは執筆するときにたばこを吸うんですが、ベランダで吸わなきゃいけないと女房に言われているものですから、深夜にベランダから居間を通ると、ソファーの定位置に女房が座ってウィンブルドンを見ているんですよね。「フェデラーの奥さんがめちゃこわそうだ」とか言ってるわけです。これはどっかで見たことあるなと思ったら、それは去年のことだったんです。毎年同じ作業を繰り返していたので、デジャブ現象が起こるほど、2年、4年と書いていました。その苦労が実ったというか、本屋大賞で過大なご褒美をいただいたと思っています。

――(スポンサーの)ユーキャンの副賞はなぜそれを選んだのですか??
 「藤山寛美十八番箱DVD全12巻」は、藤山寛美さんの名前だけしか知らなかったのですが、物語の勉強に選びました。「タニタ式スマートボディ講座」は、連載中にちょっと太りまして、やせたいなあと思って選びました。これは女房にもやらせたいと思います。

<一問一答>
――受賞の気持ちを
 もっとしゃべれるだろうと思ったら、面白くなくてすみません。百田さんに完全に食われてしまった感じです。感謝の気持ちだけはなんとか述べることが出来たかなという感じです。
 もううれしいというしかないですね。猛烈にうれしいです。4年間は「どこにいるんだおまえ?」というぐらいの話だったので、ようやく出した本がここまで評価されて、ほんとでっかいご褒美をいただいた感じです。

――本屋大賞は和田さんにとってどんな賞ですか?
 書店員さんは読者と直接触れる職業です。ぼくが本を書くのは、読者をおもしろがらせるため。読者が「本当にこの本は面白かったな」と言って本を閉じてくれるのがぼくの最大の喜びなので、読者の代表の人たちに賞をいただいたという気分です。本屋大賞は、読者に最も近い賞だと思います。

――執筆期間の4年間は長かったのでしょうか?
 マラソンみたいに長かったです。毎日劇的なことが起きるわけじゃないので、今日は資料を何十ページ読みました、明日も何十ページ読みます、そういうことを繰り返して1年間の資料読みで、シナリオは明日はこの部分を書きましょうとちびちびやっていて、遅々として進まない感じで、長かったです。その間にもありがたいことに執筆依頼はいただいていたんですが、ぼくは才能的に(両立は)無理なんで、他はすべて断ってました。

――小説を書く際にまずシナリオを書くのはなぜ?そこに違いはあるのでしょうか?
 違いはほとんどありません。シナリオの場合は、演出の部分は監督がするものなので、せりふと簡単なト書きで構成します。でもこのせりふのときにはどういう表情をするとかその動きとか風景とか、もちろん、シナリオを書く時にも思い浮かべているんですが、それは監督が撮るものなので、そこまで書かないのが礼儀なんです。小説の中では監督がやることを、文字で演出をつけていくということですね。あと史実の説明も小説では詳しくできるということがあります。小説のウエイトは人物であり、人物が動くことによる展開なので、その部分においてはほぼ同じだと思います。

――でも小説を書く上での作業としてシナリオは必要なのでしょうか?
 あらすじや構成を書いてから小説にしていくという手法もありますが、(自分にとっては)シナリオを書く一段階を経ることで、問題点やら矛盾点やらが浮かび上がってくる。ブラッシュアップする段階が一段階増えることで、スピード感やテンポが増してくるので、今回も初めから小説としての依頼でしたが、まずシナリオを書くことにしました。

――「村上海賊」というテーマを選んだ理由は?
 小さいころ広島に住んでいまして、村上海賊の拠点の一つのことは小さいころから知っていました。ひょんなことから歴史小説を書くことになったときに、いずれ書きたいなと思っていました。
――主人公が女性ということがユニークです
 単なる思いつきです。ただ、歴史的な裏付けがないと面白くないので、「海賊王」と呼ばれた村上武吉に実の娘がいたならば書こうと思い、かなり資料を調べました。しばらくその人が見つからなかったので、書けないかなと思った時期もあったんですが、実在する人がいたからこそ書けたのです。主人公を女性にすることは、自分にとってはトライだったので、そこが評価されたならすごくうれしいです。

――歴史小説を書くきっかけは?
 映画が好きで監督にもなりたいとも思っていまして、良質なアクションものが好きなんですね。そういうものができる土壌が戦国時代にあるのではないかと思って、好んで書いています。

――デビュー作の『のぼうの城』はドライブをしている時に着想されたと聞きましたが?
 業界紙の新聞記者だったときに、行田(埼玉県)から通ってくる同僚がいたんです。確かにドライブで連れて行かれたんですがそのときには関心がなくて、その後飲みに行ったときに(行田の)忍(おし)城の話をされて、石田三成がそんなところまで攻めてきたのかと、面白い題材だと思ってました。

――今後はどんな小説を書いていきたいですか?
 変わらずです。気取らず観念的にならず、小難しくなりたくないな、ということですね。いままでと同じかそれ以上の面白さを発揮していけるような物書きになりたいです。

――今後どんな賞を取りたいですか?
 賞を目指して書くということはないし、多くの作家もそうだと思います。自分の作品をいいものにしたい、書いた結果賞を取れればいいと思うのは、あくまでも書いたあとの話です。今回も本屋大賞を取るために書いたのではなく、この題材をなんとか面白く、読者がどんどん読めて面白いと思えるように書いたつもりです。

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