集団的自衛権:砂川事件判決援用に公明が難色
毎日新聞 2014年04月09日 21時48分(最終更新 04月10日 01時50分)
◇安倍首相、解釈変更の流れ作れず
安倍晋三首相は、最高裁の砂川事件判決(1959年)を根拠に、集団的自衛権の行使を限定的に容認する考えを明言し、憲法解釈変更に自ら流れを作る姿勢を鮮明にした。限定容認論の立場から首相と会談を重ねてきた自民党の高村正彦副総裁は9日、「私と公明党の考えが根本から違うわけではない」と語り、与党内の意見集約に自信を示した。しかし、公明党は同日の勉強会で砂川判決の援用は適切ではないとの見解を確認。今のところ歩み寄る気配はなく、首相が目指す夏の閣議決定はなお見通せていない。
菅義偉官房長官は9日の記者会見で、首相の私的懇談会「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)が報告書をまとめるのを受けて、「政府方針」を出し、与党と協議に入る考えを改めて表明した。これに関連し、礒崎陽輔首相補佐官は同日夜、安保法制懇の報告書提出時期について「(5月の)連休明けになるという見通しが強くなっている」と記者団に語った。
安倍首相は8日のBSフジの番組で、最高裁が自衛権保有を認めた砂川判決の意義を強調。「必要最小限の自衛権の行使には個別(的自衛権)も集団(的自衛権)も入っている」などと述べ、集団的自衛権の限定的な行使を認めるべきだと踏み込んだ。
砂川判決を踏まえた集団的自衛権の行使容認論は、もともと外務省を中心とした政府内の解釈変更派のアイデア。それに元外相の高村氏が同調し、首相も賛同したというのが実態だ。「憲法の番人」である最高裁判例を持ち出せば、政府の一機関である内閣法制局を抑え込めるとの計算も働いている。
一方、公明党も勉強会では「砂川判決が想定していたのは個別的自衛権だった」と、首相らとは正反対の見解で一致した。北側一雄副代表は終了後、「(砂川判決を)集団的自衛権が認められているという根拠にするのはどうか」と記者団に疑問を呈した。
勉強会に出席した衆院法制局の担当者も「その後の政府見解、答弁などから考えると、(砂川判決の)自衛権は個別的自衛権と解釈するのが一般的だ」と説明したという。【木下訓明、水脇友輔】