2014年4月9日水曜日

小保方晴子氏の不服申立書&問題点&矛盾点まとめ

小保方氏が理研に提出した不服申立書のスキャン画像 (毎日新聞)
不服申立書の全文 上 (写し)(読売新聞)
不服申立書の全文 下 (写し)(読売新聞)



小保方晴子氏の不服申立書の矛盾点
小保方晴子氏の不服申立書には幾つもの矛盾点がありますね。
下記のコメントがとても参考になります。

不服申立書の疑問点 
1. 申立人は、2012年6月9日撮影の画像(画像B)が存在することを持って 捏造は無かったとしているが、最終報告書によれば Nature 論文の最初 の投稿は2012年4月であり、この原稿にも異なる実験条件の画像(画像A2 またはA1)が流用されていることから、少なくともこの期間 (2012年4月 ~6月)、論文における実験結果捏造が継続していたということを、申立 人自ら述べていることになる。 
2. 申立人は、学位論文の画像 (画像A1) を、ミーティング用のパワー ポイント資料作成の際に流用して画像 (画像A2) を作成し、この画像A2 を Nature 論文に使用したとしているが、この画像A2が、当該パワーポ イント資料内で脾臓由来のSTAP細胞と説明されていたとすると、画像B は2012年6月9日撮影されたものであるから、上記 1 と同様、当該パワ ーポイント資料の作成日である2011年11月24日から画像Bが撮影される まで、パワーポイント資料における実験結果捏造が継続していたという ことを申立人は述べていることになる。 
3. 上記 2 において、画像A2が、当該パワーポイント資料内で骨髄由来 のSTAP細胞 (学位論文と同じ実験条件) と説明されていたとするなら、 Nature 論文の作成にあたり、誤って画像A2を流用する可能性は低いと 考えられ、単なるミスと主張するのであれば、Nature 論文の最初の投 稿時期と画像Bの撮影日との差異も念頭に、合理的かつ具体的にミスが 発生した状況を説明することが申立人に求められる。 

4. 上記 1 に関連して、申立人は2012年6月9日に画像Bを撮影したと説 明しているが、この画像Bが2012年4月からの論文の捏造状態を解消する ものであると認識したならば、 (画像Bの真偽に関わらず) その時点で この捏造状態の解消に動いて然るべきであるが、実際に動き始めたのは、 早くとも調査委員会の立上げ (2月17、または18日) 後 (2月19日に画像C を撮影したと申立人は述べている) であり、この大きな期間のギャップ について合理的に説明することが申立人に求められる。 
5. 申立人は、(そもそも申立書の記述が曖昧であるが) 分化細胞の画像 (画像C)を2014年2月19日に撮影し直したと説明し、修正前の中間報告書・ 最終報告書に画像Cと思われる画像が掲載されているが、全く同様の画像 が2012年4月の特許出願書類に掲載されており、申立人の説明と齟齬がある。 
6. そもそも申立人の説明・提供する画像・データ等が、実験ノートや 実験の生データなどによって裏付けされた確かな証拠であるか否かが 申立書では言及されておらず、信憑性に疑問がある。 

矛盾点1)
理研の最終報告書()の7ページ目に、小保方氏らがNatureへ論文を初投稿した2012年4月の時点で既に博士論文のshpere細胞の in vitro分化免染画像3枚、テラトーマのH&E画像3枚+免染画像3枚が不正流用されていたとある。
ちなみに、2013年3月10日に投稿され2014年1月29日に公開されたNature Article論文では、博士論文の in vitro分化免染画像1枚と、テラトーマの免染画像3枚だけが不正流用されており、理研により捏造と認定された
つまり、Natureへの初投稿時には9枚の画像を博士論文から流用し、再投稿時にはそのうち4枚だけを選択し流用して、残り5枚は別の画像と入れ替えている。(この時点で故意性が疑われるのあるが)。
さて、小保方氏は今回の不服申立 ()にて、2012年6月9日に撮影した正しい画像が存在するから捏造ではないとした。しかし、2012年4月の初投稿時において既に9枚もの画像を博士論文から不正流用していたのであるから、この主張は認められない
ちなみに、前述のNature初投稿から再投稿にかけて、新しく入れ替えられた5枚の画像のうちのテラトーマH&E画像は、綺麗すぎて(見事なほどに分化していて)不自然という指摘もある。つまり、綺麗にしようと入れ替えたが墓穴を掘った感じ。

矛盾点2) 小保方氏はNature Article論文での4枚の流用画像は、2011年11月24日に作成したラボミーティング用パワーポイント資料から流用したとし、博士論文から流用したものではないと主張した。しかし、この主張にも矛盾点がある。
このパワポ資料の流用元画像が資料内でどのように説明されていたかは明らかにされていない。もし、2011年11月24日の流用元画像が脾臓由来STAP細胞として説明されていたならば、小保方らが2012年6月9日に正しい画像を撮影するまで、パワポ資料の流用元画像が捏造だったことになる。
一方、もし、2011年11月24日の流用元画像がパワポ資料内で骨髄由来 のsphere細胞 (博士論文と同じ機械的ストレスによるもの)として説明されていたならば、その画像をNature論文へ弱酸誘導STAP細胞として取り違えミスで流用するという状況は考えにくく不自然である。

矛盾点3) 2012年4月のNature初投稿時に、博士論文と同じ9枚の画像を別の実験画像として不正流用していた。 その後、小保方は、2012年6月9日に正しい画像を撮影した。 しかし、小保方は、2013年3月10日の再投稿時点においても画像を一部流用したままにしていた。
実際に、不正流用されたままとなっていた4枚の画像を訂正したのは、調査委員会立ち上げ後の2014年2月17-19日頃である。なぜ2012年6月9日に正しい画像を撮影したのに2014年2月まで不適切な流用状態を放置していたのかについての合理的理由が、申立書内では説明されていない。

矛盾点4) 小保方氏は、不適切に博士論文から流用された画像を訂正(差し替え)するために、弱酸誘導STAP細胞のin vitro分化細胞の画像を2014年2月19日に撮影し直したと説明し、理研の修正前の中間報告書や最終報告書にその画像らしきものが掲載されていた。しかし、この差替用の画像と類似した画像が2012年4月の特許出願書類に掲載されており、小保方らの説明と齟齬があり、差替用の画像のタイムスタンプが改ざんされている可能性なども考えられる。
そもそも小保方氏の説明・提供する画像・データ等が、実験ノートや 実験の生データなどによって裏付けされた確かな証拠であるか否かが 申立書では言及されておらず、信憑性に疑問がある。




「弁解と防御の機会が不十分」との不服申立てについて検証
「反論の機会も不十分」不服申し立ての小保方氏:読売新聞

↓ 別の研究不正事件の調査経緯との比較

研究不正告発から調査結果発表までの期間 まとめ  理研:約2ヶ月
 東北大:約10ヶ月
 東大セルカン:約3ヶ月~2年3ヶ月
 獨協医大:約1年 名市大:約1年1ヶ月
 東京医科歯科:約9ヶ月半-1年1ヶ月
 三重大:約2年2ヶ月半
 筑波大:約2年1ヶ月半
 東大分生研(中間報告):約1年11ヶ月半

東京大学分子細胞生物学研究所旧加藤研究室における論文不正に関する調査(中間報告)
不正追及ブログ
告発文書受理から調査結果(中間報告)発表までの期間:約1年11ヶ月半
研究不正に関する申立書(告発文書)受理: 2012年1月10日
予備調査委員会立ち上げ: 2012年1月18日
調査対象(予備調査): 論文165報
会議における審議回数(予備調査): 13回
聞き取り調査(予備調査): 関係者28人に対し聞き取り調査
予備調査報告書: 2013年7月31日
本調査開始決定: 2013年9月30日
中間報告までの会議回数: 6回
中間報告: 2013年12月25-26日

筑波大学の柳澤教授や村山元講師らの研究不正に関する調査
不正追及ブログ
告発文書受理から調査結果発表までの期間:約2年1ヶ月半
研究不正に関する情報提供: 2012年2月14日
予備調査の実施の指示、委員会立ち上げ: 2012年2月16日
不正追及ブログで指摘された更なる疑義論文の把握: 2012年2月20日
調査対象(予備調査): 論文6報
予備調査報告書作成、本調査実施決定: 2012年5月23日
第1回本調査委員会: 2012年7月25日
調査委員会での審議回数:12回
調査報告書(概要)調査報告書の公表: 2014年3月31日

三重大学 青木直人准教授の研究不正に関する調査
不正追及ブログ
告発文書受理から調査結果発表までの期間:約2年2ヶ月半
研究不正に関する申立書(告発文書)受理: 2011年2月25日
予備調査の実施: 2011年2月28日
調査対象: 論文12報
本調査の実施決定、第1回調査委員会: 2011年3月8日
調査委員会の開催回数: 2012年3月26日までに11回開催
被告発人からのヒアリング回数: 3回
青木直人准教授からの弁明の文書を受理: 2011年4月20日
研究不正行為を認定した旨の通知: 2012年12月10日
青木直人准教授から異議申し立て: 2012年12月25日
調査報告書(概要の公表: 2013年5月10日


東京医科歯科大学の川上明夫氏の研究不正に関する調査(第1次)
告発文書受理から調査結果発表までの期間:約9ヶ月半
研究不正に関する通報: 2011年3月10日
調査対象: 論文3報
調査報告書の公表: 2012年2月24日
調査方法: 
 ① 関係者からのヒアリング
 ② 実験現場における実験機器の記録の確認
 ③ 既往論文における捏造、或いは改竄の有無の調査
 ④ 研究不正行為の疑いとされた論文の根拠となる実験ノート及びデータの精査
 ⑤ 公的研究費の活用の有無の確認

東京医科歯科大学の川上明夫氏の研究不正に関する調査(第2次) (非公表)
不正追及ブログ
告発文書受理から調査結果発表までの期間:1年1ヶ月
新たな研究不正疑義に関して通報(E-mailにて)し、正式に受理される: 2012年3月9日 (非公表)
調査委員会は、2012年3月12日から4回開催
調査結果の公表:  2013年4月4日

名古屋市立大学の原田直明氏の研究不正に関する調査
不正追及ブログで公開した疑惑画像一覧
告発文書受理から調査結果発表までの期間:約1年1ヶ月
追及ブログを見た理事長が調査開始を命じる: 2011年2月25日
第1回研究不正防止対策委員会(名古屋市立大学): 2011年2月25日
名古屋市立大学宛の研究不正に関する申立書(告発文書)受理: 2011年3月2日
熊本大学宛の研究不正に関する申立書(告発文書)受理,: 2011年3月3日
第2回研究不正防止対策委員会(名古屋市立大学): 2011年3月7日
熊本大学で本調査開始: 2011年4月12日
調査報告書(概要)調査報告書の作成調査結果の公表: 2012年3月19日
調査対象: 論文17報28事項
調査専門委員会での審議回数: 14回
熊本大学との協議回数: 6回
事情聴取回数: 4回(対象:岡嶋教授、原田准教授ら)
書面による調査: 1回(対象:原田准教授)
研究室訪問: 1回 (2011年11月16日)
関係者への事情聴取回数: 3回

獨協医科大学の服部良之氏の研究不正に関する調査
不正追及ブログ
告発文書受理から調査結果発表までの期間:約1年
研究不正に関する申立書(告発文書)受理: 2011年1月31日
予備調査実施: 2012年2月2日
「 研究者の不正行為に係る調査委員会」を設置: 2012年2月4日
第1回委員会を開催【研究者への事情聴取実施】: 2012年2月9日
以降、10月までに計8回の委員会を開催し、研究者への事情聴取をはじめとする実態調査を行った。
調査結果の発表: 2012年2月9日

東京大学アニリール・セルカン氏の研究不正・詐欺(経歴詐称等)に関する調査
告発文書受理から調査結果発表までの期間:約3ヶ月~23ヶ月
コンプライアンス室に調査委員会を設置: 2009年11月13日
学位審査の在り方等に関する特別調査委員会を設置: 2010年1月5日
調査委員会が報告書をとりまとめ(悪質な盗用の事実を認定): 2010年2月10日
アニリール氏から弁明聴取: 2010年2月18日
工学系研究科教育会議を開催し、アニリール氏に関する博士の学位授与認定の取消しを審議・決定、これを受けて保立和夫研究科長が濱田純一総長に対して学位授与の取消しを上申: 2010年2月24日
学位審査の在り方等に関する特別調査委員会を開催し、工学系研究科からの上申内容を確認: 2010年3月1日
博士の学位授与の取消しを決定: 2010年3月2日
日本細菌学会からの申立書(告発文書)受理: 2008年7月1日
(告発内容が具体的かつ詳細であったため予備調査は省略された)
調査報告書作成: 2009年3月12日
調査報告書(関連経費)作成: 2009年3月31日
調査報告書概要作成: : 2009年4月21日
調査結果の発表: 2009年4月21日
被告発者からの聴取(ヒアリング)回数: 上原助教4回、高田教授1回、菅原教授2回
関係者からの聴取(ヒアリング)回数:3回
その他、書面による被告発者等からの聴取回数: 上原助教6回、高田教授5回、菅原教授2回、関係者1回
被告発者等からのその他の書面送付回数: 上原助教15回
調査対象: 論文16報35事項
調査委員構成に関して被告発者の上原助教から異議申立て: 2008年7月1日
第1回委員会: 2008年7月18日 委員の自己紹介及び研究担当理事による経過説明、被告発者との利害関係、守秘義務等の確認
第1回証拠資料収集: 2008年8月1日
第2回委員会: 2008年8月20日 外部委員の交替及び証拠保全(8月1日実施)の報告、調査の進め方に関する検討
第3回委員会: 2008年8月21日 証拠資料からの疑義内容の検証
第4回委員会: 2008年8月22日 証拠資料からの疑義内容の検証
第5回委員会: 2008年8月26-27日 追加の証拠資料に係る検討
第2回証拠資料収集: 2008年8月26-27日
第6回委員会: 2008年9月2日 被告発者からの「質問状」に係る検討及び追加の証拠資料(8月26-27日)、被告発者に対する事情聴取の検討
第3回証拠資料収集: 2008年9月2日
第7回委員会: 2008年9月11日 被告発者に対する事情聴取
第8回委員会: 2008年9月12日 被告発者に対する事情聴取
第9回委員会: 2008年9月24日 被告発者からの聴取内容の確認
第10回委員会: 2008年9月30日 被告発者に対する事情聴取
調査委員の不適切な言動に関して被告発者の上原助教からの抗議書: 2008年10月6日
第11回委員会: 2008年10月7日 被告発者及び関係者に対する事情聴取
第12回委員会: 2008年10月14日 関係者に対する事情聴取
第13回委員会: 2008年11月6日 被告発者及び代理人からの「要望書」等に係る検討
第14回委員会: 2008年12月3日 報告書の作成に係る検討及び被告発者に対する事情聴取の検討、今後の調査方針等の検討
第15回委員会: 2008年12月8日 被告発者に対する事情聴取
第16回委員会: 2008年12月24日 調査期間の延長に係る検討
第17回委員会: 2009年1月6日 被告発者に対する事情聴取
第18回委員会: 2009年1月13日 疑義内容の検証及び報告書の作成に係る検討
第4回証拠資料収集: 2009年1月16日
第19回委員会: 2009年1月22日 疑義内容の検証及び報告書の作成に係る検討
第20回委員会: 2009年1月27日 疑義内容の検証及び報告書の作成に係る検討
第21回委員会: 2009年2月3日 疑義内容の検証及び報告書の作成に係る検討
第22回委員会: 2009年2月16日 疑義内容の検証及び報告書の作成に係る検討
第23回委員会: 2009年2月27日 報告書の確認
第24回委員会: 2009年3月9日 報告書の確認 



  1. 問題。小保方晴子氏の不服申立書を読みました。私もそのとおりと思う指摘は「申立人への聴取が不十分」という点。理研規程には「弁明の機会を与えなければならない」と書いてある。他大学での事例でも、書面か口頭による「弁明の機会」を設けた後に最終報告書の決定という手順です。


in vitro分化画像及びテラトーマ画像の不正流用の件

小保方晴子氏が不服申立書の中で、別の不適切な画像流用を自白:STAP細胞とは全く無関係の博士論文の骨髄sphere由来画像は、(STAP細胞の)共同研究者間で行われるラボミーティングに用いられるパワーポイント資料にも流用されていた。

小保方晴子氏のin vitro分化実験画像及びテラトーマ実験画像の不正流用経路 博士論文の骨髄sphere由来テラトーマ画像(オリジナル)
 → ラボミーティング資料に不正流用(STAP関連と思われる)
 → Nature誌論文(Article)に脾臓STAP細胞由来のテラトーマ画像として不正流用

↓ 読売テレビ(情報ライブ ミヤネ屋)より

埋め込み画像への固定リンク

共同研究研究者の山梨大学教授の若山氏のコメント:

毎日新聞より: さらにSTAP細胞とは無関係な画像が、ネイチャー論文に使われていた疑惑が浮上。若山教授によると、小保方さんが2012年末のセミナーでSTAP細胞について発表した際も、この画像を使っていたことが分かったという。若山教授は「私が研究の正当性を信じるためにも、やり直すのが大事」と語った。

朝日新聞より:若山さんは10日、当時の勉強会の資料を確認して気付いたという。「(画像取り違えのような)単純なミスと説明できなくなった。勉強会はプレッシャーもなく、気軽に話す場。失敗も含めて発表し、議論する。ショックだった」として、「これは撤回するしかないと思った」と話した。

電気泳動画像の改竄の件
小保方晴子の弁明 
・泳動度やDNAサイズの科学的な関係性を崩していない
・レーン3を挿入してもSTAP細胞に遺伝子再構成バンドがあるという結果に影響しない
・定量ではなく定性的な事実(あるか、ないか)を示したものなのでコントラストを調整しても、結果に影響しない

↓ 読売テレビ(情報ライブ ミヤネ屋)より

埋め込み画像への固定リンク


不服申立書の全文


申立人は、平成26年3月31日付け「研究論文の疑義に関する調査報告書」について不服であるから、独立行政法人理化学研究所に対し、不服申立を行う。

 <申立の趣旨>

 1 研究論文の疑義に関する調査委員会作成にかかる「研究論文の疑義に関する調査報告書」のうち、調査対象項目(1―2)、(1―5)についての調査結果・評価及びまとめについて、再調査を行うことを求める。

 2 申立人は、調査対象項目(1―2)、(1―5)について、研究不正を行っていないとの認定及び報告を求める。

 <申立の理由>

 
第1 総論

 1 調査の対象

 (1)本規程に基づく調査の必要性


 「科学研究上の不正行為の防止等に関する規程」(以下、「本規程」という。)第16条は、「調査委員会は、……次の各号に掲げる事項の認定を行うとともに、当該調査の結果をまとめ研究所に報告する。(1)研究不正が行われたか否か、(2)研究不正が行われたと認定したときは、その内容、研究不正に関与した者とその度合、研究不正と認定された研究に係る論文等の各著者の当該論文等及び当該研究における役割(3)研究不正が行われなかったと認定したときは、通報者の悪意に基づくものであったか否か」と規定している。

 すなわち、調査委員会は、何よりも、「研究不正」が行われたか否かについて認定しなければならない。

 そして、ここでいう「研究不正」とは、本規程2条2項に掲げる行為をいう。

 第2条2項

 この規程において、「研究不正」とは、研究者等が研究活動を行う場合における次の各号に掲げる行為をいう。ただし、悪意のない間違い及び意見の相違は含まないものとする。

 (1)捏造ねつぞう データや研究結果を作り上げ、これを記録または報告すること

 (2)改ざん 研究資料、試料、機器、過程に操作を加え、データや研究結果の変更や省略により、研究活動によって得られた結果等を真正でないものに加工すること

 (3)盗用 他人の考え、作業内容、研究結果や文章を、適切な引用表記をせずに使用すること

 そうすると、調査委員会は、申立人の行為が本規程2条2項の「研究不正」にあたるか否かを、認定・判断をしなければならないことになる。

(2)本報告書について

 「研究論文の疑義に関する調査報告書」(以下「本報告書」という。)においては、第2以下に詳述するとおり、本規程2条2項の「研究不正」にあたるか否かについて、その要件に該当するかという観点から認定するものではなく、第2条2項の定義とは別の次元で、「研究不正」と結論づけるものであって、妥当でない。

 すなわち、(1―2)については、もともと、「研究活動によって得られた結果等を真正でないものに加工する」という行為態様がなく、「改ざん」が疑われる事案ではなく、論文への掲載方法が適切か否かの問題にすぎないのに、これらを混同して研究不正の認定を行っている点で妥当でない。

 また、(1―5)についても、「存在しないデータや研究結果を作り上げ」るという行為態様がなく、「捏造」が疑われる事案ではなく、論文に掲載する時点で、誤った画像を掲載してしまったという問題にすぎないのに、これらを混同して研究不正の認定を行っている点で妥当でない。

 2 手続保証について

 (1)証拠に基づく合理的理由に基づいた判断の必要性


 調査報告書において「研究不正」と判断されたならば、被通報者(申立人)は多大な不利益を受ける。

 それゆえ、調査委員会が判断をなすにあたっては、合理的理由に基づいて判断されなければならず、恣意しい的判断は許されない。

 合理的理由に基づいた判断がなされるためには、〈1〉その前提となる事実について証拠に基づいた認定が必要であり、〈2〉自然法則、論理則、経験則に合致した認定・判断がなされなければならない。

 本件報告書の(1―5)についての認定・判断は、〈1〉重要な証拠を看過してなされたものであり、また、〈2〉経験則に反するものであり、合理的理由に基づくものではない。

 (2)弁解と防御の機会の不十分

 また、不利益を受ける者に対しては、弁解と防御の機会が、十分に与えられなければならない。どのような点が問題視されており、どのような不利益判断がなされるのかについて告知がなされ、それに対して、防御の機会が与えられないと、不意打ち的に不利益を受けるおそれがある。

 本規程第15条3項にも「調査においては、被通報者に対して弁明の機会を与えなければならない」と規定されている。

 本件において、申立人への聴取が不十分であったことは明らかである。

 何より、中間報告書の作成(3月13日)から本報告書の作成(3月31日)まで、約2週間という短期間の調査であることに加え、申立人に対し1回の聞き取りがあっただけである(なお、この聞き取りとは別に、資料の確認の機会が1回あった)。

 さらに、(1―2)についていえば、申立人によるレーン挿入の手順を正確に聞き取ることなく、調査委員会が独自に検証して(結果的には異なる手順を検討している。)判断をしてしまっている。

 (1―5)についても、申立人が使用したであろう画像がどのような状態で保管されていたのかについて、充実した聞き取りはなされず、調査委員会が独自にPDF画像を解析して、安直に学位論文の画像を切り貼りしたと推測しているのである。

 このように、本件調査は、あまりにも短期間になされたものであり(本規程第16条では、調査の開始後概おおむね150日と規定されている)、なすべき調査を行うことなく、そして、申立人への反論の機会を十分に与えることなくなされたものであり、その結果、調査委員会は、自らの検証や解析を盲信して、判断を誤ったものと考えられる。

 3 再調査について

(1)再調査の必要性


 本件調査の結果については、申立人に多大な利害関係があるだけでなく、国内はもちろん国外からも注目されていることからすれば、上記のような不十分な調査により、結論を断ずることは許されない。

 再調査を行い、十分な手続保証のもと、丁寧な調査がなされなければならない。

(2)再調査における調査委員会の構成

 再調査にあたっては、公正な判断がなされる必要から、本調査を行った委員以外の者により構成されなければならない。判断する主体が同一であれば、自らの判断を正当化せんとするあまり、偏った見方をするおそれがあり、その結果、公正を害するおそれがあるからである。

 また、本件では、一見すると科学的な紛争のようにも見えるが、現実には、〈1〉本規程についての解釈、〈2〉規程の要件に該当する行為があったといえるか否かの認定が中心であり、科学的部分について先鋭な争いがあるわけではない。

 とすれば、新たに調査委員を選任するにあたっては、少なくとも半数は、上記のような法的思考について熟練した者(元裁判官、元検察官、弁護士)が適任であるものと思料する。

 また、科学的見地からの検討のために、研究者をその構成に加えるとしても、STAP細胞発見と利害関係のある研究者(同様の研究を行っている者、予算の配分上利害のある者など)は排除されなければならない。

 さらに、理化学研究所内部の研究者が調査委員に入るならば、外部から見ると、派閥争いやトカゲのしっぽ切りなど、様々な憶測が生じることからすれば、全構成員につき外部の委員に委ねるのが妥当であるものと思料する。

 第2(1―2)レーン3の挿入

 論文1:Figure1iの電気泳動像においてレーン3が挿入されているように見える点。
 1 事案の特殊性

 本件は、電気泳動ゲルを撮影した画像(ゲル1、ゲル2写真 資料1)が、厳然と存在する点で、通常の「改ざん」が疑われる事案と異なる特殊な事案である。

 すなわち、「改ざん」は、良好な結果を示すデータが存在しないにも関わらず、良好な結果を示すデータが存在するように見せかけるために、データについて変更や省略を行うものである。そのような行為は、研究の成果がなかったのにあったかのように偽装することから「研究不正」とされるのである。

 そのため、「改ざん」が行われた場合、良好な結果を示すデータは実在しておらず、現に存在するデータは架空のものである。言い換えれば、良好な結果を示す架空のデータを作出することに「改ざん」の本質がある。

 ところが、本件では、良好な結果を示すデータが現に存在するのである。

 良好な結果を示すデータが現に存在する以上、良好な結果を示す架空のデータを作出したのではないことは、明らかである。とすれば、そもそも「研究不正」にあたる「改ざん」が疑われる事案ではないのである。

 2 「改ざん」の定義

 次に、より厳密に、「改ざん」の定義にさかのぼって検討する。

 本規程2条2項2号において、「改ざん」とは、「研究資料、試料、機器、過程に操作を加え、データや研究結果の変更や省略により、研究活動によって得られた結果等を真正でないものに加工すること」と定義づけられている。

 ここで、「真正でない」とは、虚偽と同義であり、「真正でないものに加工する」とは、虚偽のものに加工するということである。そして、その虚偽のものに加工する対象は「研究活動によって得られた結果等」であって、「研究資料、試料、機器、過程」や「データや研究結果」ではない。

 いいかえると、「研究資料、試料、機器、過程に操作が加え」られ、「データや研究結果の変更や省略」が行われても、そのために「研究活動によって得られた結果等」が虚偽のものに加工されたのではない場合には、「改ざん」ではない。

 3 本件における「研究活動によって得られた結果等」

 そこで、本件における「研究活動によって得られた結果等」について検討する。

 (1)パルスフィールド電気泳動を行った意味

 T細胞が成熟していく過程では、DNAが短くなるという現象が見られる。そこで、成熟したT細胞が含まれているか否か(T細胞受容体再構成が生じた細胞が含まれているか否か)、すなわち、DNAが短くなるという現象が生じているか否かを「sorted―Oct4+」について見られるかを実証するためにパルスフィールド電気泳動を行った。

 (2)得られた結果

 パルスフィールド電気泳動によって得られた画像データは、ゲル1、ゲル2の写真(資料1)のとおりであり、この研究活動から得られたのは、「sorted―Oct4+」について、「DNAが短くなった、すなわち、T細胞受容体再構成がおこった細胞が含まれているという結果」である。

 4 本件において「真正でないものに加工」されたか

 上記の結果は、ゲル1、ゲル2の写真により実証されており、真正なもの(ホンモノの結果)として維持されている。

 申立人が、論文1に掲載するにあたり、画像を見やすいように、このゲル1写真、ゲル2写真に操作を加えたからといって(ポジティブコントロールを見やすいものにする操作を加えたからといって)、この「DNAが短くなった、すなわち、T細胞受容体再構成がおこった細胞が含まれているという結果」自体は、何らの影響も受けない。

 事実は事実として厳然と存在するのである。

 このように、申立人の行為は、「研究活動によって得られた結果等」を虚偽にするわけでも、ニセモノにするわけでもなく、すなわち、「真正でないものに加工する」ものではない。

 発表の仕方が不適切であるからといって、研究活動によって得られた結果が虚偽になるわけではない。

 5 「改ざん」にはあたらない

 このように、申立人の行為は、「改ざん」の本質からしても、また、本規程の定義からしても、「改ざん」にあたるものではない。

 報告書の認定・判断は、本件事案の特殊性を看過するとともに、本規程の「改ざん」の定義を基準に判断したものではなく、誤りである。

 上記のとおり、「改ざん」にあたらないことは疑いないが、さらに、報告書の認定・判断は、下記に述べる点について誤りがあるため、これを指摘しておく。

 6 報告書の調査結果
 (1)問題点

 本報告書3頁21行目以下に、この点についての調査結果が記載されている。

 申立人が、画像を見やすくするために、ゲル1写真のレーン3にゲル2写真のレーン1を挿入し、挿入にあたり両写真の大きさを縦方向に調整し、また、ゲル2写真のレーン1についてコントラスト調整を行った点については、申立人自身が説明したとおりであり、誤りはない(厳密には、本報告書では、ゲル1写真を拡大したと認定するが、申立人は、ゲル2写真を縮小している)。また、申立人による挿入位置の説明についても、誤りはない。

 しかし、レーン3の位置決めについて、調査委員会が検証を行い、その結果、申立人の「説明を裏付けることはできなかった」とする点は、是認できない。

 (2)調査委員会の認定

 本報告書(4頁2行目)では、「検証の結果、ゲル1とゲル2の間には、標準DNAサイズマーカーの対数値と泳動距離について直線性の保持は見られず、説明どおりに標準DNAサイズマーカーの位置情報に基づいてレーン3を配置することが無理である」として、ズレが生じているという評価を行っている。

 (3)申立人の行為

 しかし、当該画像の意味からすれば、注目されるのは、ジャームラインバンドの下方から伸びる再構成DNAバンドの領域である。いいかえると、ジャームラインバンドよりも上方も、また、再構成DNAバンド領域よりも下方(分子量が小さい)も、当該画像においては注目するものではない。

 そのため、申立人が、標準DNAサイズマーカーの位置情報に基づいてレーン3を配置するにあたっては、上記の注目すべき領域(ジャームラインバンドの下方から伸びる再構成DNAバンドの領域)において、ゲル1写真とゲル2の標準DNAサイズマーカーの位置が一致するように配置した(資料2)。

 より具体的には、申立人は、ゲル1写真とゲル2写真の標準DNAサイズマーカーのバンドの位置を一致させるために、ゲル2写真の高さを約80%に縮小した。次に、ゲル2の写真は、左方向に約2度傾いているため、これを修正するために、ゲル2写真を2度右方向に回転した。これにより、ゲル1写真とゲル2写真の標準DNAサイズマーカーのバンドの位置は、ことごとく一致することを確認した。

 この状態からトリミングを行い、Figure1iの画像を作成した。

 このようにして作成した画像は、泳動度やDNAサイズの科学的な関係性を崩すものではない。

 また、ゲル2写真のレーン1画像を、挿入するまえに、申立人は、コントラストを調整した。この画像が示すものは、定量ではなく定性的な事実を示すものなので、コントラストを調整しても、結果に影響はない。

 申立人としては、ゲル1写真では、バンドの様子が見えにくいと感じたので、見やすくするように、上記の操作を行ったのである。

 (4)位置ズレは生じない

 上記のようにして、レーンの挿入をすると、バンドのズレは生じない。

 調査委員会の検証においてズレが生じたのは、2度の傾きの補正を行わなかったことによるものと思料する。

 調査委員会が、申立人に対して、具体的な挿入手順について積極的なヒアリングを行い、弁明の機会を与えたならば、申立人は「2度の傾きの補正」を説明できたにもかかわらず、その機会を与えられないまま、ズレが生じると決めつけられたものである。

 (5)小括

 以上のとおり、ズレが生じることを前提とした調査委員会の評価は、正確ではないものと思料する。

 申立人としては、再調査において上記の点を確認いただいたうえ、研究不正がなかったとの結論を求める次第である。

 7 科学的見地からの掲載方法について

 申立人は、投稿論文へのゲル写真の適切な掲載法について教育を受ける機会に恵まれず、また、ネイチャーの投稿規定も知らずに、見やすいようにするために、上記レーン3の挿入を行った。(なお、ネイチャーの投稿規定を確認したところ、論文1におけるFigure1iの掲載方法は、必ずしも規定に反していると断定することはできない)

 この点については、申立人は、結果的に表示方法において不適切な面があったが、本来ない解釈や間違った結論を導くものではない。しかし、表示法が不適切だったことを反省し、訂正の原稿をネイチャーに提出している。


第3 (1―5)画像取り違えについて

 笹井、小保方両氏から、以下の修正すべき点が見つかったとの申し出を受け、この点についても調査した。論文1:Figure2d、2eにおいて画像の取り違えがあった点。また、これらの画像が小保方氏の学位論文に掲載された画像と酷似する点。

 1 画像の整理

 本件では、下記の画像が問題となっているところ、以下では、説明の便宜上、次のように表示することとする。

 画像A1 学位論文の画像

 骨髄の造血系細胞から作成したSTAP細胞(当時は、sphereと呼称)を用いた画像。

 画像A2 パワーポイント資料(資料4)に掲載された画像

 学位論文に用いられた画像A1をパワーポイント資料に掲載するにあたり、文字の色や位置関係を調整した画像。

 パワーポイント資料は、2011年11月24日、若山教授、バカンティ教授に報告するための資料として作成した(当時、申立人は、ハーバード大学研究員、理化学研究所客員研究員であった)。この当時は、申立人は、ストレストリートメントという観点から研究を進めていた。そのため、この資料では、酸による刺激、ガラスピペットによる物理的刺激を含め、刺激により幹細胞化することが示されている。また、用いる細胞も、骨髄細胞や、脾臓(ひぞう)由来細胞など様々な細胞からSTAP細胞が作成できることを示している。

 資料4のP6Figure4Cに、画像A2がsphere細胞からの奇形種形成の免疫染色データ画像として掲載されている。当時、STAP細胞は、sphereと呼んでいた。

 その後、共同研究者によるラボミーティングのために、何度も、バージョンアップされている。

 画像B マウス脾臓由来細胞を酸処理により得られたSTAP細胞からの画像

 実験中に撮影したマウス脾臓由来細胞を酸処理することにより得られたSTAP細胞からの奇形種形成の免疫染色データの画像。2012年6月9日に撮影されたが、フォルダの日付は7月となっている。

 画像C 撮り直し画像

 HE染色に使用したサンプルと同じ切片から取り出したサンプルから、2014年2月19日に、再度、画像を撮影した。これは、データの正確性を確保する目的で、念のため撮影したものである。

 画像A1の元データ及び画像Bとともに、調査委員会に提出している。

 2 捏造が疑われる事案ではない

 (1)「捏造」とは

 一般的意味では、「捏造」とは、「事実でない事を事実のようにこしらえていうこと」である(広辞苑 第五版P2068)。

 そして、本規程では、「捏造」とは、「データや研究結果を作り上げ、これを記録または報告すること」と規定されている。ここで、「作り上げ」とは、存在しないものを存在するように作り上げることを意味する。「作り上げる」が単に作成、製作するという意味であるなら、すべての研究活動が「捏造」に該当することになり不当であるからである。

 それゆえ、「捏造」とは、「存在しないデータや研究結果を作り上げ、これを記録または報告すること」と解釈されなければならない。

 なお、平成18年8月8日付け「研究活動の不正行為への対応のガイドラインについて」と題する文書(科学技術・学術審議会 研究不正行為に関する特別委員会)によれば、ガイドラインでは、捏造は「存在しないデータ、研究結果等を作成すること。」となっている(資料3)。

 (2)本件事案

 本件では、論文1のFigure2d、2eの画像について、画像の取り違えがあった。

 すなわち、掲載すべきであった画像B(脾臓の造血系細胞から作製したSTAP細胞を用いた画像)と異なる画像A2(骨髄の造血系細胞から作製したSTAP細胞を用いた画像)が、論文1に掲載された。

 掲載すべき画像Bは、現に存在しており、調査委員会に提出されている。

 (3)本来的に捏造ではない

 本件では、掲載すべき画像Bが存在している以上、「事実でない事を事実のようにこしらえ」る行為はなく、「存在しないデータや研究結果を作り上げ」た行為も存在しないことは明らかである。

 それゆえ、申立人が、論文掲載にあたり、画像の取り違えがあったことは、本来的に「捏造」にあたるものではない。

 (4)不適切な表現と研究不正は別次元

 論文による公表において、不適切な表現・掲載があったにすぎないものであり、この点は、申立人も深く反省するところであるが、そのことと、研究不正の問題とは次元を異にするものである。

 2 悪意のない間違い

 次に、その画像の取り違えが、悪意によるものか、過失に基づくものかを検討する。(本来的に捏造にあたらないから、悪意によらない間違いであるか否かを検討する必要はない。念のために論じているにすぎない。)

 この点においても、そもそも、掲載すべき画像Bが存在する以上、「掲載した画像が、掲載すべき画像Bと異なる画像A2であること」を知りながら、あえて掲載する必要は全くない。そのようなことをすべき動機が全くないのである。

 申立人の画像取り違えが、悪意によることは経験則上ありえない。

 3 調査報告書の調査結果の誤り

 (1)申立人の勘違いの対象

 本報告書7頁7行目以下には、「小保方氏は、この条件の違いを十分に認識しておらず、単純に間違えて使用してしまったと説明した。」との記載がある。

 しかし、申立人が説明した内容は、論文1に掲載した画像を、酸処理による実験で得られた画像である画像Bと認識して掲載したものであるという説明であり、換言すれば、「異なる画像を誤って掲載した」旨を説明したにすぎない。

 実験条件の違いを勘違いしたのではなく、画像そのものについて勘違いしたのである。

 (2)論文1の画像

 本報告書7頁9行目以下には、「論文1の画像を解析すると学位論文と似た配置の図から画像をコピーして使用したことが認められた。」との記載がある。

 また、本報告書7頁の下から10行目以下には、「また、論文1の画像には、学位論文と似た配置の図から切り取った跡が見えることから、この明らかな実験条件の違いを認識せずに切り貼り操作を経て論文1の図を作成したとの小保方氏の説明に納得することは困難である。」との記載がある。

 このようなことからすれば、本報告書では、論文に掲載された画像が、学位論文の画像A1とは配置等が異なることから、「学位論文から切り貼りしたはずだ」という推論をもとに、申立人の説明を虚偽と認定しているようである。

 しかし、上記推論は、誤りである。

 (3)申立人からの聴取

 申立人代理人が、申立人から聴取したところによれば、論文に掲載された画像は、共同研究者間で行われるラボミーティングに用いられるパワーポイントの資料に掲載した画像A2を使用したものであり、学位論文に用いられた画像Alから切り貼りしたものではないことが確認された。

 そして、パワーポイントの資料には、論文に掲載された画像の元になった画像A2が掲載されていることを確認した(資料4)。

 この画像A2をもとに、ネイチャー仕様のフォントにするためにキャプションを付け直したものが、論文1に用いられている画像である。

 なお、パワーポイントの資料は、2011年11月24日以降、何度もバージョンアップがなされているところ、論文に掲載した画像が、どのバージョンのパワーポイント資料から使用されたかについては、特定できていない。

 (4)調査委員会の調査は不十分

 調査委員会は、独自に論文1の画像を解析し、学位論文の画像A1と論文1の画像が配置や文字の色が異なることを検討している(スライドP14~16)。

 調査委員会が、このような解析をなし、「異なる画像を誤って掲載した」という申立人の説明に疑問を持つに到ったのであれば、改めて、論文の画像は、どのように加工したのか、あるいは、どのような状態で保管していた画像を使用したのかについて、申立人に確認を取るべきであった。

 申立人としても、調査委員会から、そのような質問を受けていたならば、パワーポイントの資料に掲載された画像を使用したことを説明できたのである。

 申立人に対し、反論の機会を与えることもせず、安易に「学位論文から切り貼りしたはずだ」と決めつけたことは、調査委員会の調査が不十分であるとともに手続保証の観点からも問題があると言わざるをえない。

 なお、申立人代理人らは、調査委員会がどのような調査を行ったのかを確認するため、平成26年4月3日、聴取にあたってなされたヒアリングの報告書等について開示を求めたが、翌4日に、理化学研究所から「開示は差し控えさせていただくことになりました」との回答を受けている。

 4 調査報告書の評価(見解)について

 (1)過失の可能性と悪意の評価について

 本報告書7頁の下から16行目には、「データの管理が極めてずさんに行われていたことがうかがえ、由来の不確実なデータを科学的な検証と追跡ができない状態のまま投稿論文に使用した可能性もある。」との記載がある。科学的な検証と追跡ができないか否かは別にして、調査委員会も「過失」により異なる画像を使用した「可能性」を認めている。

 ところが、主に〈1〉実験条件の違いを認識していたはずであること、〈2〉学位論文と似た配置の図から切り取った跡が見えること、を根拠に「小保方氏によってなされた行為はデータの信頼性を根本から壊すものであり、その危険性を認識しながらなされたものであると言わざるを得ない。よって、捏造に当たる研究不正と判断した(7頁の下から7行目)」としている。

 しかし、〈1〉については、申立人は、実験条件の違いを勘違いしたのではなく、画像そのものについて勘違いしたのであって、勘違いの対象がずれている。

 また、〈2〉については、先に述べたように、申立人は、ラボミーティング用のパワーポイント資料の画像を、誤って、使用したのであり、論文1の掲載にあたり、学位論文の画像を切り貼りしたことはない。

 さらに、結論を導くにあたり、「小保方氏によってなされた行為はデータの信頼性を根本から壊すものであり、その危険性を認識しながらなされたものであると言わざるを得ない。」としているが、画像B及びCが存在する以上、「データの信頼性を根本から壊すもの」でないことは明らかである。

 このように、調査委員会の「捏造に当たる」との判断には、何らの合理的根拠も存しない。

 (2)重要な事実の欠落

 また、観点を変えると、本報告書の判断は、重要な事実が判断の前提とされていない。

 すなわち、〈1〉2012年6月に撮影された画像Bが存在すること、〈2〉この画像取り違えは、申立人自らが発見して、自ら申告したものであるという点、〈3〉共同執筆者全員から、2014年3月9日、ネイチャーに対して、訂正原稿を提出しており、その際、画像Cを提出していることは、極めて重要な事実である。

 これらの事実は、再調査にあたり、重要な事実として、判断の前提とされなければならない。

 〈1〉画像Bが存在する以上、故意に異なる画像を掲載する必要はなく、〈2〉故意に異なる画像を掲載したのであれば、自ら報告するのは不自然であり、〈3〉また、故意に異なる画像を掲載したのであれば、ネイチャーに訂正原稿を提出したりしないはずだからである。

 これらの事実からすれば、「画像を誤って取り違えた。異なる画像を故意に掲載したものではない。」と認定するほかないのである。

 5 再調査において調査されるべき対象

 上記のとおり、本件において、画像Bが存在する以上、本来的に「捏造」が問題となる事案ではない。

 また、画像Bと画像A2とを、どのようにとり違えたのか、その具体的態様を特定することに意味はない。申立人が、過失で誤っているのであれば、どの過程でどのように誤ったかについて明確な認識はないはずであり、特定することは困難であるだけでなく、もともと捏造にあたらないのに、時間と労力をかけてこれを調査する必要もないからである。

 再調査において調査の対象となるべきは、現に存在する画像B、C(調査委員会にも提出されている)が、生後1週齢のマウス脾臓由来の細胞を酸処理することにより得られたSTAP細胞が用いられた分化細胞及びテラトーマの免疫染色データの画像であることの確認である。

 6 最後に

 申立人によるデータ管理が十分に整理されていなかったこと、画像の由来を元データにあたって確認しなかったことが、画像の取り違えにつながったことは事実であり、この点については、申立人も深く反省するところである。

 しかし、上述のとおり、調査委員会が行った調査は不十分であり、そして、その結論は誤りであるものと思料する。

 再調査を求めるとともに、再調査においては、申立人から十分な聞き取りを行ったうえ、反論の機会を与え、証拠に基づいた(推測によるものでない)認定判断がなされることを強く希望する。

 以上

 付属資料

 資料1―1 ゲル1の写真(中間報告時スライド9枚目)=省略

 資料1―2 ゲル2の写真(中間報告時スライド10枚目)=省略

 資料2 ゲル1写真にゲル2写真を挿入するにあたっての手順を示す図=省略

 作成者=申立人 作成日=2014年4月4日

 資料3 平成18年8月8日付け「研究活動の不正行為への対応のガイドラインについて」と題する文書=省略



 作成者=科学技術・学術審議会 研究不正行為に関する特別委員会

10 件のコメント:

  1. "定量ではなく定性的な事実(あるか、ないか)を示したものなのでコントラストを調整しても、結果に影響しない" という記述にはいささか驚いた。実験を行っている研究者ならだれでも知っていると思うが、コントラストの調整でバンドは簡単に見えたり消えたりする。定量か定性かの問題ではない。

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  2. このエントリーでは、ある組織とある個人との対立が主題ですが、そもそも

    1、不正が疑われる論文を投稿し、公表しようとした

    2、虚飾を疑われる報道発表を行った

    事、およびこれらを通じて世間を欺こうとしたのではないか、と言うことが懸念される事です。そのような気持ちは無く、原因は個人も組織も稚拙な業務能力にある、等は十分な説明にはならないと思います。
    これらにより世間は十分騒ぎとなり、世間の多くの資源(人々の時間、労力、その他)を浪費しています。人々の不安や動揺を煽り、世間の平和を乱しています。また、公金の使途にもなっています。

    組織、個人に関わらず、騒動の原因に関わった人達はこれら問題の責任があります。世間に対して社会的な責任があります。
    例えば、こちらのブログで具体的に指摘されているような事柄は応えられなければならないと思います。
    調査委員会が出来ましたが、未だ、問題解消には機能していません。

    しかし、その調査委員会の問題を世間に投掛けて、更に騒動を拡大させようとするのは、世間としては困りものです。世間に対して先ず語るべきは、調査委員会について、ではなく、上記1、2、の問題端緒の論文と報道発表についてです。

    原因当事者の方々も、報道関係の方々もお間違えの無いようにして頂きたいものです。

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  3. 聴取が十分でなく、弁明の機会が与えられなかったという点については、
    今からそれを与えて、これまでの調査結果とあわせて考慮して判断し直せばよい話。
    この種の瑕疵の場合は、再判断の際に従前の結論と同じ結論ではいけない、ということには
    ならないから、弁明を聞いた上でやはり同じように不正と判断するのならそうすればいい。

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    1. O氏の弁護士の読み上げた反論は、研究倫理や学術規範に関しての理研の調査結果を覆すような内容ではありません。

      O氏の弁護士の策略は、再調査に持ち込み、理研外に調査委員会を作る際は、委員には科学者・研究者だけではなく、法律家も大勢呼び込むことで、科学的内容や研究倫理に沿った判断よりも、「悪意」「捏造」といった言葉の法的定義の議論を重視させることで、O氏の有利な方向へ持っていこうとしているのでしょう。

      でも、科学研究論文の不正行為の問題ですから、やはり科学者や研究者のように、研究倫理や学術規範を理解できる人で無いと、判断は難しいと思いますよ。

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    2. 「科学研究上の不正行為の防止等に関する規定」で定められた改ざん・捏造を
      行ったことを理由にして従業員の処分をするには、一般の研究不正ではなく、
      その規定の具体的な定義にあたる行為をしたといわなければなりませんから。

      その点ではどうしてもその規定上の定義が問題にならざるを得ない。

      ただ、法律家を入れた方が規定を正しく解釈できるというような主張は私も疑問です。
      科学研究の研究不正については科学者の間で一定の基準が構成されており、
      それに照らして理研の規定も解釈すべきである、
      そしてそれを適用すればやはり本件の行為は改ざん・捏造にあたる、
      ということももちろん可能だし適当かと。

      今回の異議申立ての主張はイチかバチか的な印象です。
      極論すれば、STAPが本当にありさえすれば捏造でも改ざんでもないという方向に
      もって行きたいようだが、そんな主張が通るのか。

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  4. 改ざん・捏造の認定に反対しているところだけざっと見るとこんな感じかな(修正歓迎)

    1.電気泳動写真の改ざん
    不服申立書3,6,7頁で理研が定める「改ざん」の定義の解釈を展開し、それに当てはめて
    今回の行為が改ざんにあたらないと主張している。多分定義が争点になる。

    彼らの主張だと、理研の「科学研究上の不正行為の防止等に関する規定」によれば、
    「研究活動によって得られた結果等」を「真正でないものに加工する(=虚偽のものにする)」
    ことが改ざんだから、
    「データや研究結果」を加工して出そうとも、虚偽のものに変えようとも、
    それだけでは改ざんにはあたらない(pp.6-7)。
    あくまでも「研究活動で得られた結果等」を「虚偽のものにする」のが改ざんである。

    そして、電気泳動の「研究活動等によって得られた結果」は
    =「DNAが短くなった、すなわち、T細胞受容体再構成が起こった細胞が
    含まれているという結果」 
    だから、それを変更する操作をしたのでない限りは改ざんでない(pp.6-7)。

    結論として、今回の切り張りは、再構成が起こった細胞が含まれているという結果には
    影響がないから改ざんではない。

    曰く「発表の仕方が不適切であるからといって、研究活動によって得られた結果が
    虚偽になるわけではない(p.8)」。

    2.画像の捏造(とりちがえ?)
    これも、捏造とは「存在しないデータや研究結果を作り上げ」る行為、
    「事実でないものを事実であるようにこしらえ」る行為であるという解釈(ソース広辞苑)
    を元に、本来の画像は存在するのだから捏造ではないという主張と思われる(pp.12-13)。

    1、2両方を通して、論点はいろいろあるように見えるが、共通の「肝」は、
    ①真正な結果が存在するのだから、そして、その結果を変更してはいないのだから、
    改ざんではない。
    ②真正なデータや画像が別に存在するのだから捏造ではない。
    というところなんだと思う。

    その他、調査委員会の調査や判断の不適切さについて書いてあるけど省略。

    ざっくりいうと、真正な結果が実際にあって、それを虚偽のものにしていなければ、
    発表方法の不適切(=論文の書き方や掲載したデータに加えた操作)はまったく研究不正に
    あたらないという主張に読めるけれど、これでいいのかなあ。

    また、何を「研究活動で得られた結果(等)」であると特定するかによって具体的な結論は
    変わってきそう。(電気泳動の研究活動で得られた結果は「特定のバンドの発生」か、
    「全てのバンドの状態」か?)

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  5. 生データを元に議論しなければ、
    「ねつ造」や「改ざん」の議論は出来ないのでは?

    そもそも生データが無ければ、論文自体論外。

    生データから得る結果(画像やグラフ等)と、
    そこから導かれる解釈(STAP細胞の存在)のプロセスで、
    恣意的な要素があるか否かを検証するのが、調査委員会や小保方氏が行うべきこと。

    結果の確からしさや、解釈については、学術議論で解決すれば良く、
    そこのエラーやミスは(研究者として恥ずかしいけれど)、解消すべく動けば良い。

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    1. 生データを得るプロセスでの恣意的要素も検証

      削除
    2. 画像やグラフは多数あっても、実験ノートが非常に杜撰だから、どれがどの経由で出来た画像・グラフなのか、第三者が辿ることが難しいのでは?

      小保方氏は「自分が読めば分かる」と言っていますが、それも本当のことかどうかは分かりませんよね。実験は膨大なデータを生み出しますし、綿密に実験ノートを付けておかないと、すぐにどれがどのデータなのか分からなくなる。

      小保方氏が「この画像・グラフはこれこれの実験の時のもので」といった主張を聞いているだけでは、調査にはならないし。

      細胞サンプルにしても、ほとんどマークが無いような事を今井委員長が言ってましたよね。あれも、似たような状況なのかと。

      削除
  6. http://mainichi.jp/graph/obokata/20140408stap/010.html
    で位置ずれが生じないなる主張がありますが、
    http://mainichi.jp/graph/obokata/20140408stap/019.html
    の写真を見ても、wellも300bpの位置も合っていないので、何を言っているのかぜんぜん分からない。そもそも、分子量マーカーがジャームラインバンドより小さいのしかのせていない時点で失格でしょう。。。まあ、合っても線を引かなくてはいけないに決まっています。異なるゲル上のバンドを同じゲル上のバンドであるかのように見えるように編集したという点が改ざんなのは明らかでしょう。
    http://mainichi.jp/graph/obokata/20140408stap/007.html
    パルスフィールド電気泳動と述べているが、このサイズのDNAに対して
    パルスフィールドというのはおよそ信じがたい異常な話で、意味不明ですが、本当にそうなら、機種、温度、電場の強さ、スイッチングタイム、バッファーの種類、ゲル濃度などの条件を示すべきデスネ。

    およそ、分子生物学的研究をする能力がないと語っている文書ですね。

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