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上杉隆 緊急インタビュー 後編 
日本のジャーナリズムは大丈夫か?

(2011.04.11)

記者クラブメディアの時代はもう終わり
インターネットが報道を変えていく

 
日本にもフェアな記者クラブが必要だ

― 記者クラブの弊害を指摘し、ジャーナリズムのあり方に一石を投じる形で「自由報道協会」を立ちあげました。 設立の経緯を教えてください。

「自由報道協会」は、新しい組織を作りたかったということではなく、必要に迫られて設立したものです。僕は、『THE NEW YORK TIMES』を含めて12年間のジャーナリスト生活をしてきたわけですが、その間、フリーランスゆえに公的な記者会見に入れないという不思議な体験をしてきた。政権交代のときも、今回のこういう大きな地震でも、相変わらず我々は排除されています。

そんな中、1月に小沢一郎さんに会ったときに、民主党政権になってもいまだに記者会見に入れない記者がたくさんいることを話しました。むしろ、それまで入れていたのに、政権交代した瞬間に追い出された部分さえある。また、岩上安身さんや江川紹子さん、僕などは、フリーの中ではある程度、知名度もあり、記者会見に出て質問すれば指されるのですが、フリーの記者の多くは1度も指されない。せめて彼らの話を聞いてやってくれませんかと頼みました。

小沢さんは1993年 から記者会見をオープンにしている政治家です。それなら「飯でも食おうか」って言ってくれて、15人ほど呼んだんです。その会では、けっこう小沢批判も出たし、やりあう場面もあった。でも小沢さんは、「こういうのがいいんだ。毎週やったらどうか」と言う。僕は、「月1回くらいでいいんじゃないですか」と言ったのですが、「いや毎週やろう」と。そうはいっても小沢さん主催ではフェアじゃない。我々は小沢応援団ではありませんから。それで、「自由報道協会」を立ち上げて、こちらの主催で、いろんな政治家を呼ぼうということになったのです。

あらゆる記者会見がフェアに行われていない日本の中で、記者会見に入れないフリーランスやインターネット、海外メディア、雑誌の人たちが自由に参加できる、世界中がやっているスタンダードな会見を行いましょうということで、NPO法人を前提に立ち上げた、というのが設立の直接のいきさつです。背景にはもちろん記者クラブ問題があるわけです。

「自由報道協会」を受け入れたくない旧メディア

― 「自由報道協会」の立ち上げに対して、記者クラブメディアは、どう動きましたか?

無視です。ただ、会見には来ています。私自身は12年 間、一度も記者会見に入れてもらえませんでしたが、だからといって同じことをやっても仕方がない。アパルトヘイトじゃありませんし、やられたらやりかえすでは解決しないので、記者クラブの人間にも開放しているのです。しかも「質問もどうぞ」と言っているのですが、彼らは質問しないのです。ところが驚いたことに、次の日の新聞、テレビは「手をあげても指されなかった」と嘘を書いていたんです。それはないでしょう、批判するのは自由だけど嘘はよくないと、 抗議しているところです。基本的には彼らにはフェアにやってほしいというだけで、別に対立しているわけではありません。対立構図を作っているのはむしろ記者クラブ側です。産経新聞は「あたらなかった」と書きましたが、どうして嘘をつけるのかなと思います。ビデオは残っているし、アーカイブを見ればわかるのに。

菅政権は開いていた記者会見をまた閉じた

― 民主党はもともと記者クラブ解放を約束していたはずです。政権交代して少しはよくなったのではないですか。

いや、基本的には、なにも変わらなかった。それですぐに抗議したところ、岡田克也さんが開けてくれた。彼は原理原則というか、言ったことは守る政治家なので。亀井静香さんも、「そんなひどい話があるか、時代錯誤だ」と言ってくれました。そこから、小沢鋭仁さん、原口一博さん、後に鳩山由紀夫さんなど、志のある政治家が対応してくれた。ところがそれが菅政権になってから閉じ始めたのです。開いていたものがまた閉じた、そこに危機感を覚えました。

それで、入れてもらえないのだったら自分たちで会見の場を作ろうと考えました。逆転の発想です。「自由報道協会」はメディアではなく、あくまでも場を提供するものです。そして「敬意をもって批判する」。きちんと聞いて、終わったら必ず拍手で送り出そうというルールを作りました。これが世界標準の記者会見で、日本のメディアは今までそういう場を提供してこなかった。

日本の報道は、発表をそのまま伝える広報

― 記者クラブの体質っていうのは、上杉さんを始め、繰り返し批判されてますが、全く変わる感じがありません。

自分たちが悪いことをしているという意識がないのです。記者クラブは自分たちの世界しか知らないので、まあ、おままごとなんですけれど、それが報道だと思ってしまっているんです。入社してからずっと同じことを続けていますから。だけど世界から見ると、それは報道ではなくて広報なのです。

彼らは完全に洗脳されてしまっていますから。キャリア5年くらいの若い、学生からあがってきた記者たちは理解しています。でも上の方の人たちは自分たちへの批判だと思ってしまうのです。僕は個人を批判したことはなくて、この制度がおかしいと言っているのに、「あいつはオレたちの敵だ」となる。そうではなくて、このテーマについて話し合おうとしているのに。

政治家も内容のある会見を求めている

― 会社としては情報を一手に握る、メディアの権益を守るみたいな意識があるわけですよね。

それでは、組織としてはいいけど、ジャーナリズムとしては全くだめですね。だから彼らはジャーナリストではなくて、単なる広報、メディアに勤める社員なんです。石原さんには、「君が『自由報道協会』を立ち上げといてくれて、まだよかった」と言われました。これがなかったら、おそらく海外メディアも入ってないし、インターネットも使っていない。ぎりぎりのところで、少しは情報が流れたのかなと。

「自由報道協会」の会見が終わった後に石原さんは、「オレは批判された。だけどいい会見だった」と言ってくれました。「記者クラブのあのばかな連中みたいに、くだらない質問につきあわなくてよかった」と。僕は、「知事はハイパーレスキュー隊に涙を流されました、しかしその前に天罰だと言っています、この矛盾点どうですか」と質問したんですよ。どの記者もみんなそれぞれの得意分野でバンバン質問をぶつけてくる。石原さんも居心地が悪かったと思うんですが、会見の最後に「面白かった、本当に情報が入った、みんな知恵を貸してくれ」と言って頭を下げるんですよ。これが政治家も求めている普通の会見なんですよね。これをやっていくことで国民も情報を得られるわけです。

小沢一郎の発言もそのまま流す

― 政治とカネの問題でも、メディアが政権と一緒になって、小沢潰しを仕掛けているようなところもあります。

「自由報道協会」では小沢さんの会見を4回やっています。小沢さんが個人的に会見を開くことはないんですよ。でもここでだけはやるんです。それはなぜか。我々はきちんと小沢さんの目の前で政治とカネのことを聞くわけです。そして、発言がそのままインターネットで流れる。小沢さんからすれば、この問題について、これまで何回も説明しているのに、テレビや新聞は全く報じてくれない。だから向こうには出ない。

デマを言うテレビ、新聞にはかかわりたくない

― そうした活動をすることで、上杉さん自身の発言の場を狭めてしまっています。

嘘をついて安全デマを流すより、降ろされた方がいい。彼らはこの2週間、僕のことをデマ野郎、ペテン師と言ってきたけれど、結果を見て下さい。実際、どうなったのか。僕は「全部メルトダウンになる可能性がありますよ」と言っただけなんです。「東京に放射能が飛んできますよ」「水道水は大丈夫ですか」と言ったら、本当にそうなった。安心、安全ですと言っておいて、結局、あなたたちが安全デマを流したんじゃないか。だから、デマを言うテレビとか新聞にかかわることがなくて、よかったと思っています。

インターネットはメディアの革命だ

― 記者クラブに属さない、雑誌やインターネットのメディアについては、どう考えていますか?

既存メディア、伝統的なメディアは、これまで情報を独占することによって、自分たちの既得権益を作ってきたわけですが、その王国は崩壊してしまいました。インターネットメディアにとって代わられつつある。小沢さんにしても石原さんにしても、本当の情報、少なくとも反論できる情報の多様性があるインターネットというメディアに気づいている。

メディアはひとつじゃなくて多様なんです。会社も多様で、インターネットのメディア環境も多様、自分たちも多様の中のひとつ。そこで正々堂々とフェアにやろうということです。既存メディアは、あまりにもそういうことに対して不誠実で傲慢だということがバレてしまった。

インターネットはデマばかりという批判もありますが、ツイッターを例にとると、デマも早い段階ですぐに修正されるんです。今回でいえば、コスモ石油の噂がありましたが、すぐに修正されました。あれは、ツイッターが修正したんです。デマ板ができて、これデマです、気をつけましょうって。だから2日で消えました。ところが、残っているのはテレビや新聞。むしろ、デマが広がるのは新聞、テレビなんです。結果として、安心、安全、大丈夫デマを流してしまったのは、既存メディアだったわけです。インターネットメディアを使ってる人は、少なくともそれに気づいたはずです。

雑誌はメディアによって全然違っていて、例えば記者クラブの補完作用をするような雑誌もあるわけです。でもインターネットメディアはまさに革命というか、いろんな動きがあります。エジプト、リビアも、自分たちが今まで信じていた情報に「あ、だまされた」「あれ、違うじゃないか」と気づくようになった。世界中でインターネットを介して革命が起こったわけです。見る人がマスメディアを介して、加工された情報を取るのではなくて、未加工の情報を直接とるようになって結ばれたんです。だからソーシャルメディア革命こそが、社会構造の変革に寄与すると考えています。