金融リッチが憎まれ、IT長者が許されるワケ
根深い世論の「ダブルスタンダード」
グーグル会長の法外な報酬
ウォール街の経営トップの高い給料は、しばしば世間の厳しい目にさらされる。なのにシリコンバレーの経営者だと大目に見てもらえる。なぜこんなダブルスタンダードが生まれたのだろうか?
グーグルのエリック・シュミット会長を例に取ろう。グーグルは1月、シュミットに対し制限株式1億ドル分と現金600万ドルの報酬を払うと明らかにした。シュミット氏には2011年にも1億ドル相当の株式が賞与として支払われている。
グーグルがなぜ、これほど多額の報酬を払うべきだと考えたのかはわからない。
記者がグーグルにコメントを求めたところ、米証券取引委員会(SEC)に提出した報告書を読むように言われた。それによればシュミット氏への報酬は「2013年度のグーグルの業績に対する貢献を評価した結果」、支払われたという。では業績に対する貢献とは、具体的には何を指すのだろう。
シュミット氏は以前からグーグル株を大量に保有しており、フォーブス誌によれば純資産額は80億ドルを超えるという。そんな彼にとって、今回の報酬など大した額ではないだろう。
会長としてシュミット氏は、独占禁止法違反の問題をめぐる欧州連合(EU)との和解交渉に一役買うなど、グーグルに対して相当の貢献をしているのは確かだ。だがその報酬は会長へのものとしては並外れて高額だ。
ブルームバーグが報じたところによれば、スタンダード&プアーズ(S&P)500社株価指数を構成する企業の経営者報酬は通常、25万1000ドル程度(2012年のデータによる)。シュミット氏の報酬はそれより1億ドル以上多い。
それでもシュミット氏への報酬について株主や外野からはほとんど疑問の声も上がらなければ、批判も聞かれない。金融機関の役員報酬に対する批判が続いているのとは対照的だ。