最も美しい天体画像を決めるネット競技会が人気

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  • LUCY CRAYMER

[image] NASA ESA / Hubble Heritage

ハッブル望遠鏡がとらえた馬頭星雲

 気象学者Ernie Ostunoさん(51)には最近2つの大きな期待を持っている。1つは、彼が好きなバスケットボールチームが全米大学体育協会主催の「マーチ・マッドネス(3月の熱狂)」大会で勝利すること、もう1つは宇宙を征服することだ。後者の方がはるかに実現可能であることが分かった。

 彼はほぼ毎夜、ミシガン州グランドラピッズの自宅でパソコンにログインして、馬頭星雲を観測している。馬頭星雲は数百万光年のかなたにあるが、今や科学者がつくったオンライン競技会の「ハッブル・マッドネス」で大人気となっている。この競技会はハッブル宇宙望遠鏡がとらえた星、超新星、星雲の中から2つの画像を選び出し、どちらがいいか見た人の投票で決め、勝ち上がり方式で最終勝者を選び出すというもの。今年が第1回目で、7日に終了する。

[image] NASA/ESA/Hubble Heritage

星形成領域S106

 Ostuno氏は「マーチ・マッドネスではミシガン州から出場した2つのチームはすでに敗退したので、もうあまり興味が湧かない」と言う。しかし「馬頭星雲が選ばれるべきだと思う。いつ見ても飽きない。とても美しい」と、今やハッブル・マッドネスに入れ込んでいる様子だ。

 参加者は、ハッブル望遠鏡が映した2007年以降の画像のバックカタログの中から画像を選ぶよう求められる。競技会を共催する宇宙望遠鏡科学協会職員のジョシュ・ソコルさんは当初、合計64枚の画像を提示する計画だったが、32枚に減らして期限を2週間にした。減らさないと、競技会が長くなり過ぎ、投票者が興味を失ってしまうと恐れたからだ。しかし、それは杞憂(きゆう)だった。ハッブル・マッドネスは、フェイスブックでシェアボタンが8万6000回以上押された。

 これまでの投票結果からみると、名を知られていることは、助けになるどころか足を引っ張ることが分かった。火星は、ほとんど名の知られていない星団「NGC3603」に第1ラウンドで敗退した。このほか早々と姿を消したものには、「土星の月」、「雲った海王星」がある。

[image] NASA, ESA, and M. Livio and the Hubble 20th Anniversary Team

2つの渦巻銀河が重なったNGC 3314

 こうした結果は主催者の「ハッブル・マッドネス選考委員会(自称)」を当惑させている。委員会はハッブル・マッドネスのフェイスブック・ページで、「熱狂的な太陽系ファンが、われわれのお気に入りの宇宙画像を脱落させることを危惧している」と述べた。 主催者は海王星の画像が負けてしまった理由が恐らく、投票者への見せ方にあったことも認めている。彼らは「『cloudy(曇った)』という単語が入った名称と、『超新星の名残』というフレーズとを比較したことが最初の一撃となり、その穴が大きく広がってしまったに違いない」と述べた。

 地球の運命を気にかけている人々に朗報だ。地球はそもそもコンテストの対象になっていない。

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