焦点:株式市場歪める「ダークプール」、超高速取引より深刻な脅威に
[ニューヨーク 6日 ロイター] -先週は作家マイケル・ルイス氏の著書発売もあって、超高速取引(ハイフリークエンシー・トレーディング)が米国株式市場を歪めているとの懸念が大きく広がった。しかし、投資家にとってもっと深刻な脅威が存在する。それは取引所の外でやりとりされる取引の増大だ。
元規制当局者や学識者の間には、現在の株式売買の多くが取引所の外で行われ、取引価格は市場のありかを適正に反映していない恐れがあると危惧する声がある。しかもこの問題は、超高速取引に絡む不正行為よりはるかに大きな損害を投資家にもたらす可能性があるというのだ。
平均的な投資家であれ、大物ポートフォリオマネージャーであれ、彼らが今株を買おうとした場合、「ダークプール」と呼ばれる場所か、あるいは取引所の代替機関のディーラーが出す別の注文とマッチングさせることが頻繁に行われている。
こうした取引所を介さない売買は取引所に手数料を払わなくて済むため、ブローカーにとっては取引コストを節約できるメリットがある。大口注文を出す投資家も自分たちの動きを隠蔽できるので、他の投資家が自分たちの注文を聞きつけて便乗しようとするリスクを軽減できる。
しかし、こうした「取引所外取引」の拡大は価格形成の透明性を大きく損なうものであり、市場全体にとってはとんでもない行為だと専門家は指摘する。問題は取引所外取引を行う主体が取引所が公表する価格とは別の値付けを行っている点だ。これらの価格に対する信頼性が欠如しているとしたら、「ダークプール」の提示する価格そのものが歪んでいることになる。
現在、米国株の取引で個人投資家を含む全注文のうち約40%は取引所の外で行われており、その割合は6年前の16%比べて大幅に増えている。
米証券取引委員会(SEC)のトレーディング・市場部門の元責任者、ジョン・ラムゼイ氏は2月にある会合の会場で、この傾向が「非常に気掛かりだ」と語った。ラムゼイ氏は「学会のデータが示すところによると、ダークプールにおける特定の株式の売買が一定水準を超えると市場の質は実際に損なわれる」と指摘した。
2012年に米国株式の売買高が21兆4000億ドルに上ったことを考えると、少額であっても誤った価格設定が数百億ドル規模の影響を与えることはあり得る。 続く...