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Web記事原稿料「一文字0.1円」ってマジすか……

編集者という仕事柄、ライターの方々とはタッグを組んで、戦友としてコンテンツを作っている。その経験から、「フリーライターになるには」といったシリーズを、本ブログでも時折エントリーとして書き継いできた。

最近、この「ライティング関係」で、ちょっと驚いたエントリーがあった。ブログ主も書いているように、私もグノシー経由で知った記事だが……。

クラウドワークス系のライティング案件の報酬がひどい

まあ驚いたのは、例として挙げられている原稿料単価。「一文字0.1円とか0.2円」だそうですよ。四百字詰め原稿用紙単価に直せば、全部文字で埋まってとして40円ですかそうですか。まあ普通の原稿だと改行も入るし原稿用紙一枚あたり350字程度だろうから、35円だ。0.2円単価としても70円。

私がライターの方にWeb記事を書いていただく原稿料の「数十分の一」とかだよ、よく言っても。ウチだって紙媒体より安く設定してるんだけどねー。

これだからWeb屋さんのビジネスに、出版社系Webサイトはコスト面で対抗できないんだよなあ。nanapiとか、嫌味でなく「お上手」と思うし。もっとドライにならないとダメなのかorz

この「極端にやっすい」単価から見えてくる現象は、いくつかある。

●ライターの方は、絶対に食えない

コンビニでバイトしたほうが、多分時間単価が高いね。それどころか、取材や打ち合わせなどが入ると、それだけで足が出る。単価が単価だけに、まあ当然別途実費精算してくれるとは思うが、もし払ってくれないなら、赤字だ。

それにもちろん参考書籍を買って勉強して……などは、コストだけから判断するなら不可能。

●コピペ氾濫?

となると、仮にこの手の仕事を中心に回すライターが「食おう」としたら、Webで「お題」に似たブログでも拾ってパクるんじゃないですかね。「時間書けずに大量にやるしかない。この値段で責任取れるか、俺知らん」という方向にて。

●CGMとプロコンテンツの境目が消える

職業としては食えないので、こうした案件を請ける方々は、「専業主婦の内職」的パターンか、「原稿を書くことで承認欲求を満たす」趣味のパターン、どちらかが主流になるだろう。

当然、内容や日本語のレベルに関しては、どうしても低質になる方向にバイアスが働く。一部には優れた原稿を書く方ももちろんいるだろうが、総体としてはそうなる。つまりWeb上のコンテンツがCGM化する。「個々の原稿は玉石混交だが、総体としてなんらかのマーケティング的、あるいは客寄せ的な意味合いがある」方向に。

●プロのライターは、営業力がこれまでにも増して重要に

フツーの原稿料を払う、私の媒体のような時代遅れはまだまだあるので、頑張ってそういうところにコネクションを広げる必要性が出てくる。だってそのうち「プロ野球解説コンテンツが必要か。じゃあ誰かクラウドワークスで探しといて」とかなるわけじゃん、コンテンツ屋でないWebで「にぎやかし記事」を作る場合。そうした低額発注から逃げるには、コンテンツの内容自体を差別化として打ち出すコンテンツ屋との繋がりが重要だろう。

蛇足だが、私の経験をひとつ。

プライベートビジネスを創業した際、ロゴイラスト作成の必要性があり、この手のサービスを利用してコンペした。

そのサービスでは発注の最低単価が決まっていて、2万円。その金額で案件を出したところ、十数人の方から応募があって、ひとりお願いした。モノクロイラスト1点で2万円だから、マスコミ相手のイラスト相場から見ても高く、イラストレーターにとっては悪くない仕事だろう。

ただイラストレーターから見ると、コンペに負ければ1円にもならないという大きな欠点がある。その代わり、自分の人脈や営業力では知り合えなかったクライアントと知り合える利点はあるが。

発注者である私から見ての評価だと、多数の参加を望めるので便利。ただ不便な面もある。その方のイラストのテイストが気に入ったので、その後も頼もうと連絡先を聞いたところ、「このサービスを通してください」とのことだった。それが規約なのかもしれないが、いい人が見つかればその後もいろいろ頼みたいのは人情で、その度にサービスを通すのは面倒。

いやつまり、今回は私個人の仕事だったから時間をかけられた。しかし私の本職で発注しようとするなら、連絡から打ち合わせ、発注、納品に到る流れにはスピードが求められる。月刊誌とか、発注から納品まで二週間とか、普通だ。

間にサービスが入ると連絡のスピード感が損なわれる。おまけに当然マージンを抜かれるので、当方もイラストレーターも損する。

こうした継続発注を上手にこなせるようになっていれば、もっと使いやすいのにとは思った。マージン抜いてもいいからさ、直接連絡より話が早いとかさ。たとえば契約書や発注書が定型化されていて、クリエイターも出版社も楽とかね。

このあたりは改良の余地が大きいなあとは思った。

まあいずれにしろ、ライターの方の最低原稿料は、せめて10倍に上げてあげてください。かわいそうです。


tokyo editor
出版社の編集者。出版業界の実態について執筆している。

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