従業員の幸せに多額の投資をするグーグルは現実的
【質問】 従業員が幸せであることが、なぜそれほど経営にとって重要なのですか?(クリスティアン・ロジャス)
――ブランソン: 従業員の幸せは、事業の成功にとって重要です。誰もが本能的に分かっていることですが、その理由をはっきりあげることは難しいかもしれません。従業員が悲しんだり虐げられるべきだ、という主張をする人はいません。しかし企業や経営者の中には、惨めな人々を支配することがまるで狙いであるかのように事業をはじめて、それで成功する例もあるようです。
まず科学的な根拠を見てみましょう。英国のウォーリック大学がこの3月に公表した研究によれば、幸福な人々の生産性は平均して12%向上することを裏付けています。
研究者の1人であるアンドリュー・オズワルドは新聞の発表で、「グーグルなどの企業は、従業員支援にさらに多額の投資をした結果、従業員の満足度が向上しました。グーグル1社の場合、満足度は37%向上しています。グーグル社の狙いは現実的なもので、科学的に制御された条件のもと、労働者をいっそう幸せにすることは十分に採算がとれるということなのです」と語っています。
仕事自体で惨めな気持ちになる人がたくさんいる
どうやって従業員を幸福にするのか?
研究者たちは、被験者たちが働きはじめる前に、チョコレートや果物を提供し、短いコメディーのビデオを見る機会も与えています。しかし現場の業務となれば、お菓子に頼るわけにもいきません。その効果は次第に消えてしまいます。ビジネスが提供できる、もっとも一般的な報酬は、ボーナスや昇給ですが、その効果もまた限定的です。つまり、収入は良くても、仕事自体で惨めな気持ちになる人々がたくさんいるのです。
新事業を立ち上げるにせよ、既存の会社の経営に携わるにせよ、人々を幸せにするにはひと工夫が必要です。会社本位のやり方ではうまくいきません。ヒマラヤ山脈東部にあるブータン王国が、GNH(国民総幸福量)委員会を設置し、国民の幸福保護を担当する大臣に監督させたように、あなたも自分自身でその仕事を創造しなければならないのです。
従業員が仕事に打ち込むためには何が必要なのか、そして長期にわたって彼らをやる気にさせるにはどうしたらいいのかを考えなければなりません。
基本的には、陽の光がたっぷりと降り注ぐように上手に設計されたオフィスや刺激的な任務、さらには納得できる報酬でしょう。労働者が健康であれば幸福度は増し、生産性も向上して病欠が少なくなるという研究結果もあります。これらを踏まえた上で、われわれは数年前にヴァージンパルスに出資しました。この会社は、顧客企業が、報酬プログラムを通じて従業員の活性化をさらに促せるように支援しています。・・・・・・・(以下、現代ビジネスブレイブリーダーシップマガジンvol071(2014年4月1日配信)に収録しております)
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