(2014年4月7日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
ジルマ・ルセフ大統領率いるブラジル政府は最近まで、自国のぐらつく成長物語を復活させる経済政策の「新しいマトリックス」について生き生きと語っていた。歴史的な低金利、通貨管理などを通じて誘導された安い為替レート、産業界への一時減税措置から成るこの戦略は、ブラジルを4%の成長率に戻すはずだった。
しかし今月、この新しい経済マトリックスの弔いの鐘が鳴っているように思えた。ブラジルの中央銀行はしつこいインフレ圧力により利上げを余儀なくされ、2012年に7.25%という史上最低水準を記録した金利は先週、11%まで引き上げられた。今後もさらに利上げが行われる可能性がある。
成長が依然脆弱なうえ、スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が先週、ブラジルの信用格付けを引き下げた後、同国政府の信用は危機に瀕している。そうしたなか、ブラジルの投資家が直面する問題は、政策立案者に政治的意思があることを前提として、彼らがいかに速やかに新しい経済マトリックスを打ち切り、よりオーソドックスな経済政策に立ち戻れるか、ということだ。
事態を悪化させた大統領の試み、結果は低成長と高インフレ
「カンピーナス大学(UNICAMP)の連中が長年語ってきたが、1度も採用されることのなかったケインズ主義的なマクロ経済学の開発モデルを実行しようとするルセフ大統領の試みがすべてだった」。野村のエコノミスト、トニー・ボルポン氏は、ルセフ大統領が修士課程の経済学を学んだ(修了はしていない)大学に言及しながら、こう語った。「その試みは奏功しなかった。成長率、インフレ率、経常収支・・・あらゆる点で、事態を悪化させただけだ」
ほとんどのエコノミストは、ルセフ政権はユーロ圏の危機発生後の2012年につまずき始めたと指摘する。
世界経済がまだ弱く、米連邦準備理事会(FRB)がまだ量的緩和策を通じて流動性を市場につぎ込むなか、ルセフ政権はブラジルにとって前例のない低水準にまで金利を引き下げる取り組みに着手した。
同時に、ブラジル政府は低金利戦略を挫折させる恐れがあったインフレの抑制のために型破りな手段に打って出た。最も人目を引いたのは、国営石油大手ペトロブラスに対し、国際価格で輸入した燃料をブラジル国内で助成金付き価格で販売するよう非公式に強要したことだ。
さらに政府は電気料金を引き下げるために介入したほか、市や州政府は、昨年の街頭での抗議デモの後、公共交通料金を引き下げた。しかし、政策立案者らは、通貨レアルの対ドルレート引き下げを支持したり、一時減税を通じて産業と消費需要を刺激するなど、インフレを促す、相反する政策も導入した。
これがもたらした結果が低成長と高インフレだ。ブラジル経済は今年、2%前後のペースで成長する見通しで、1990年代以降でも特に低いレベルの成長率が続く。一方、今年6.3%に達すると予想されているインフレ率は、中央銀行が定めた4.5%プラスマイナス2ポイントの許容範囲の上限に近い。
「冴えない成長は、例外ではなく標準になった」。国際金融協会(IIF)は先月のブラジルに関する報告書でこう指摘した。