間違って消去したので再録です。 先日書店で谷本真由美なる人物の『日本が世界一「貧しい」国である件について』(祥伝社)なる本が山積みされておりました。なにげに手にとって一読したのですが、めまいがしてきました。 日本が世界一「貧しい」国である件について 祥伝社 谷本真由美(@May_Roma) http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2013070100008.html?iref=webronza 谷本真由美さんのブログ http://eigotoranoana.blog57.fc2.com/ かつて「英国本ブーム」というのがあったですが、そのころでた林望氏やマースス寿子氏らの英国礼賛本と殆ど同じででした。英国本でお勧めは林信吾の一連の著作です。特にこれら英国信者を揶揄した『イギリス・シンドローム―私はいかにして「反・イギリス真理教徒」となったか 』です。 この手の「欧米礼賛、日本けなし本の著者に共通しているのは、欧米のアッパーミドル以上の「仲間に入れてもらった」(あるいはそう思っている)人たちが多いですね。日本の悪口をいうと、その国の仲間との連帯意識を強く感じるのでしょう。 学者などでケンブリッジやオックスフォードの大学のコミュニティで「身内扱い」されると、うれしくなるみたいで、その浮き世離れした学者の世界が英国すべてであるとか、英国であれば犬の糞でも有り難がって口に入れかねない人たちが多いようです。 英国人はこいう自国にすり寄ってくる外国人の取り扱いは巧いですから、いいように転がされるわけです。結果、その国の駄目なところまでよく見えてしまいます。 林望氏なんぞは英国の銀行はいい加減で、預金金額が間違っている、おおらかでいいじゃないかと仰る。でもご自分の1000万円の預金が1円になってもそんなことを言えるでしょうかね。こういう人に限って日本の銀行で一桁間違えても文句をいうのでしょうけど。 女性の書き手の場合、現地のアッパーミドル以上との男性と結婚して、英国という虎の威をかりることが多いようです。ぼくは個人的に英国人と結婚した日本人女性は多数知っていますが、こういう本の内容のようなことを言う人間は一人もいません。 欧米に限らず、祖国のことを口を極めて罵る人は尊敬されません。特に教養ある階級からは尊敬されません。まあ北朝鮮から命かからがら亡命してきたなら話は違いますかね。 『日本が世界一「貧しい」国である件について』の「貧しい」とのうのは精神的、あるいは心の貧しさを指しているように思いますが、英国やら米英その他の国々ってそんなに「豊か」なんでしょうかね。 ぼくはご存じの通り、子供の頃から日本人の規格からは外れていますし、日本には悪しき慣習も多いと思います。ですが、いいところもたくさんあります。日本に住むメリットを棄ててまで外国に永住氏よとは思いません。なんだかんだいってもいい国ですよ。 中にはどうしても日本には住めない人もでしょう。でもそれは自分のキャラクターが祖国であわないけであり、そこが問題なわけです。自分が適合できないから日本がジンバブエやシリアよりも劣った卑しい国だと主張するのであればそれはお門違いというものです。 『日本が世界一「貧しい」国である件について』 P17〜18には自分はネトウヨからも今の生活はつらい、助けてくれと相談される、「『在特会』を支援する人々や,ネット右翼の方々の多くもリストラにおびえるサラリーマンや、月収20万円に満たない収入をやりくりして暮らす非正規雇用の人々かもしれません。そんな人たちが私に助けを求めてくるのです。ネットでは威勢良く『朝鮮人は出て行け!』『竹島を返せ!』といっているのに『仕事がつらいんです。悩んでいます』とは何とも情けないものです」 さて、これってそんなに「日本だけ」のお話でしょうか。フランスでも英国でもドイツでも移民に対する差別で直接行動を起こす人たちは、底辺の労働者階級です。彼ららプアホワイトのよりどころは自分は白人だ、フランス人だ、英国人だというところになります。それしかよりどころがありませんからね。 また移民が多いから仕事がないのだ、貧しいままだという考え方をします。 彼らは極右政党を支持したり、外国人を襲ったりします。 自分たちは社会的な底辺におり、経済的にも恵まれない。唯一のレゾンデートルは白人、あるいは先進国のネイティブである。ということだけです。 「在特会」のデモなんて紳士的ですよ、彼らに比べたら(あたしゃ支持しませんが)。 谷本さんは日本のネトウヨも在日や中国人を襲って殺せ、そのくらいの元気を出せとでもいうのでしょうか。 で、日本人は精神的に貧しく、英国やイタリアは豊かだというこの手の人たちのお得意のお話しがPP29あたりから出てきます。 ロンドン郊外は欧州よりも高いが、日本よりも安いといいます。本当でしょうか。例えば西側日本人がよく住んでいるちょっと前まで地区でも普通の一戸建てが一億円ぐらいしました。 (ロンドンの)人口は都内と同じように集中しているはずなのですが、通勤電車には適度な余裕があり(P31) ロンドンの人口はグレーターロンドンでも800万人程度、対して東京は1200万、ですが近隣を含めれば3000万人です。人口の集積度が全くことなります。ロンドンには東京ほど大量輸送が可能な地下鉄や鉄道などの公共機関はありません。 また朝夕の道路のラッシュは半端ではありません。東京よりもひどいと思いますが。 このような現実を無視して、だから英国は余裕があるのだといわれてもねえ。 で、ロンドンの電車が遅れることを自慢げに、ゆとりがあると書いています。 でも乗客も気にしない、これが豊かさだというのでしょう。 でも、それって諦めているだけじゃないですか? 英国人が我慢強いし。「かつてソ連人が商店に行列をつくっていましが、それはソ連人がおおらかだったからでしょうか。 「お金がもったいないので、インフラを新しくしないのです。無理して走らせると事故が起きる可能性があるので、遅れても安全運行です。お金の節約のために新しくしないことは乗客も知っています」 (P33) これも事実ではありません。まさか谷本さんはロンドンの地下鉄が開業当時と同じように蒸気機関車で引っ張っているとでも思っているのでしょうか。 ロンドンの地下鉄も近郊列車でも車輛を新しくしたり、信号機を交換したりしますよ。また駅に冷房を入れたり、日本のように行き先の案内掲示板を入れたり、アナウンスを入れたりもするようになっています。エレベーターも入れ替えたりしています。トテナムコーロードの駅なんぞは大改修しています。 その更新の速度が遅いんです。これは経営の不効率、労働者の生産効率低いのが原因でしょう。 例えばアールズコートの駅のエレベーターは改修に一年かかっています。日本ではあり得ない話です。 かつてキングスクロス駅の旧式エレベーターが火事になって死人がでたことがあります。この旧式エレベーターの階段は木製部品が使用されておりました。このとき市民から地下鉄の 設備の更新を求める声がでたこともあり、駅施設の更新にはそれなりに行われています。谷本さんのお説が正しいならば、ロンドン市民はエレベーターの火災でも誰も文句をいわず、未だに旧式のエレベーターが使用され続けていることでしょう。そんな現実はありませんけど。 仮にお金の節約が本当ならば何であんなに料金が上がっているでしょうかね。かつては初乗りは180円ぐらいだったのが今や500円以上ですよ。 更に言えば、ロンドンの地下鉄は頻繁に行き先を間違えたり、駅と駅の間で止まったりします。これはインフラが古いだけでしょうか。 また発券機もよく故障しています。旧型だけではなく新型も。釣り銭が出ませんなどと表示していることもよくあります。新型なのに壊れる、壊れても直すのに時間がかかる、それってゆとりでしょうかね。 ようは英国では労働者が自分の仕事はカネをとるためだけの苦役であり、仕事をできるだけしないで、同じ給料を取った方が得だと考える人たちが多いわけです(みんながそうではありませんが)。仕事に喜びを感じたり、少しでも利用者が気持ちよく過ごしてもらおうとか、工夫をしようとか思わない人が多い、換言すると自分の仕事に誇りを持っていない人が多いといえます。 自分の仕事に誇りをもたず、嫌々ながら仕事をする人生は楽しいでしょうか。 これは階級が固定されているからです。労働者は子供もその子供も労働者、帰りにパブでビールを飲んでフットボール(サッカー)見るのが唯一の娯楽、てな感じです。非常に閉塞感がある社会です。だから労働者が働かない。いくらがんばっても今よりいい生活にはなれない、なれても「あいつら」の側にいってもいじめられるだけで、いいことはないと思っています。 かつて初めてロンドンに住んだ80年代、多くの公衆電話が故障していました。これで先進国でしょうかね。また公衆電話が壊されないように頑丈に作られていました。釣り銭を取られないためです。余裕がある国民は電話を壊して小銭を盗むんでしょうかね。 「イギリスの駅は日本のような便利な売店はありません」 (P38)これも事実ではありません。鉄道の駅には売店が結構ありますし、地下鉄のホームでもサークルラインなど一部の駅には売店があります。またホームには自販機も増えています。谷本さんはいったいいつの時代の話をしているのでしょうか。本当にロンドンに住んでいるのでしょうか。 単に非効率や時間にルーズなのが偉いなら、英国よりインドやアラブ世界の方が先進国といますよ。 谷本さんは現在金融機関でIT系のお仕事をされているそうですが、金融機関のサーバがしょっちゅう落ちたり、ATMが何時間も止まったままでもOK、OK、これこそゆとりと笑っていられるのでしょうか。 朝日新聞のWEBROZA+に以下の記事を寄稿しております。防衛省の国会答弁で虚偽の可能性があることを指摘してます。全四回の連載です。 空自のF−35は中国が導入するSu−35に対抗できるか(上) ――ロシアが売却する事情とは? http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2013070400007.html?iref=webronza 東日本大震災で防衛省の無人機はなぜ飛ばなかったか(1)――墜落を恐れた? http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2013061900007.html 東日本大震災で防衛省の無人機はなぜ飛ばなかったか(2)――省内の食い違い http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2013062000004.html 東日本大震災で防衛省の無人機はなぜ飛ばなかったか(3)――難しい新規参入 http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2013062700005.html?iref=webronza 東日本大震災で防衛省の無人機はなぜ飛ばなかったか(4)――「我が国固有の環境」とは何か |
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私も谷本真由美さんの本をざっと読みましたが、大筋では共感しながら読ませてもらいました。 |
名無し 2013/07/09 08:16 |
私としては日本が問題のない素晴らしい国で・・云々とは全然思ってはいません。日本の労働慣行に問題がいろいろあることもまた事実でしょう。また、英国が酷いところであるとも、見習うべき点がない・・などとも全く思ってません(おそらくはブログ主もコメントされた方も)。 |
レッド・バロン 2013/07/11 21:52 |
めいろまは頭のおかしいただの一般人だし、それを自覚してるから真面目な書評は無駄だよ。 |
あ 2013/08/06 21:56 |
日本のいいところが目に入らないのなら、どこの国のいいところが目に入るのですか?中国?ロシア?スイス?コスタリカ?北欧諸国?私以外にも書いてる方がおられますが、数百円で牛丼が食えて80歳まで生きられて、英国のシンクタンクの調査では世界平和度第3位に選ばれるほどまっとうな国のいいところが目に入りませんかwじゃ、どこの国がいいのですか?日本の出羽の守の皆さんが礼賛しているスウェーデンなんか大学がタダらしいんで40歳までダラダラと大学生やって社会人として戦力にならない社会経験の乏しい人が多すぎて問題になっていると聞きますが?しかも若者がやる気がない。手厚すぎる社会保障や生活保護で働かんでもやっていけるから無気力なただ生きてるだけみたいな若者になってしまうんですよ。しかもファミレスやマックで飲み食いするととんでもない金取られたりする。そういう国が日本よりもいいですか。最近はオランダを「格差もワープアも克服した残業ゼロ・授業料ゼロの素晴らしい楽園のような国」と持ち上げる出羽の守が激増しているようだが、オランダがそういう国でないことがバレバレになった時、彼らがどんな言い訳を聞かせてくれるか、どんな退却戦をやってくれるか今からたのしみですよw |
きるすてん 2013/09/02 08:23 |
今更、公認CISAとか古臭い。いんちきくさいコンサルの典型でしょうか。こういう人種は現場をろくに知らず口だけがうまいです。 |
通行人 2014/02/16 18:14 |
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