むしブロ

クマムシ博士のドライ日記

小保方さんに「悪意」が無かったことを立証することは可能か

2014年4月1日、理研はSTAP細胞研究論文にかかっていた疑義に関する調査最終結果報告を行った。この最終結果報告では、小保方晴子さんが行った電気泳動像の切り貼りを「改ざん」、そして博士論文にあったテラトーマ画像の使い回しは悪意のある「捏造」と認定した。


科学研究の世界の常識に照らし合わせれば、この判断は妥当なものに映る。しかしながら、小保方さんはこの調査委員会の報告に対して不服申し立てを行う姿勢であり、4月9日に会見が行われる見通しだ。


小保方氏 8日不服申し立て 9日会見へ


小保方さんによれば、電気泳動像の切り貼りは「画像を見やすくしただけで元データと本質的に変わらない」こと、そして博士論文の画像使い回しについては「本物のデータが存在しているのに意図的に使い回しするはずが無く、単純な画像取り違いによるミス」であるとしている。つまり、「悪意」のある不正ではないという主張だ。


だが残念ながら「悪意」が無かったことを立証するのは難しいだろう。ここでの「悪意」とは「故意」と同義だからだ*1。博士論文からのテラトーマ画像の使い回しは、一つ一つの画像を取り違えたものではなく、ページそのものをスキャンして複数の画像を丸ごとコピーした可能性が極めて高い。これでは、客観的に見ても明らかに「故意」、すなわち「悪意」があったと判断されうる。


この部分については、小保方さんの代理人である弁護士も当然認識しているだろう。よって、小保方さん側は不服申し立ての際にはあくまでも「ケアレスミス」による画像の取り違えであったというきわめて苦しい主張をする以外に方法は無い。博士論文をスキャンした事実は無いと言い張るしか無いのである。


当然、理研はこのような不服申し立ては容認できるはずもなく、棄却することだろう。そして、その次の段階として理研では懲戒委員会が設置され、小保方さんを含めた著者らの措置を検討し、何らかの処分が下されることになる。


小保方さんは、この処分を不服として今度は裁判所を舞台に移した法的措置を検討するかもしれない。しかしながら、本件は法的に考えても小保方さんにとっては非常に不利な状況である。理研の処分が妥当として負ける可能性が濃厚だ。争いを起こすことで、体力的にも精神的にも消耗が増す。時間も金も浪費してしまう。マスコミにも取上げられ続けることになる。


個人的には、もう争うことはやめて、STAP細胞についての情報提供を行うことに専念した方がよいのではないかと思う。それが、科学コミュニティと小保方さん両者にとってベターな選択だろう。


※本記事は有料メルマガ「むしマガ」220号の内容を要約したものです。

*1:本記事では「むしマガ」法務チームの弁護士による見解を取り入れているが、文責はクマムシ博士にある。