コラム:EUの未来を救う3つの「悪いニュース」
[2日 ロイター] - By John Lloyd
極右政党の躍進が、欧州議会を震撼させようとしている。フランスでは先週の統一地方選で、厳しい移民政策などを訴えるルペン党首率いる国民戦線が議席を伸ばした。同じような右派政党の伸長は、程度の違いこそあれ、欧州各地で起こりつつある。
5月に実施される欧州議会選挙では、仏国民戦線のほか、オーストリアの自由党、英国独立党、オランダの自由党のほか、フィンランド、ベルギー、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、イタリアの極右・右派政党が100人を超える当選者を出すとみられている。
この半世紀で最も厳しい難局の中、欧州連合(EU)の舵取り役を担うブリュッセルの政治家や役人にとって、こうした極右議員らの選出は新たな「悪いニュース」だと言える。ただ、この悪いニュースは、他の2つの打撃となる問題とともに、実際にはEUを救う可能性もある。
EUの目的について無条件に議論を戦わせることは、眠気を誘う欧州議会を活性化させるだろう。極右政党が主張する反EU的な議題が取り上げられることもあるかもしれない。
こうした議題は長年避けられてきたが、次期選挙では避けて通れない争点となる。EUの擁護・推進を議論の中で熱く訴えることは、欧州の人々がEUの意味を理解し始めることにもなるだろう。
2つ目の悪いニュースは今やなじみの問題だ。低成長やマイナス成長が続くイタリア、スペイン、アイルランド、ポルトガル、ギリシャといったユーロ圏諸国が抱える公的債務の現状は、デフォルト(債務不履行)懸念さえもたらしている。ユーロ圏を構成する17加盟国の債務総額は昨年末時点で8兆8400億ユーロ(約1264兆4800億円)で、ユーロ圏諸国の国内総生産(GDP)の約93%に当たる。これは、ユーロ圏が定めた対GDP比60%という上限をはるかに上回っている。
ただし、これは進歩でもある。債務額は過去数カ月でわずかながら減少しており(1年前に比べて上回っているが)、ユーロ圏諸国は輸出額が輸入額を上回っているため、経常収支は現在黒字化している。これはいいニュースだ。欧州危機が起きた1つの理由は、こうした国々が数年前に蓄積した経常赤字だった。 続く...