2014年04月07日 月曜日
■人がいない件
http://anond.hatelabo.jp/20140406161839
うんまあ。大変だよね、と思います。はい。
人手が足りない件については、消費税駆け込み需要や、消費税後の落ち込みを回避するための公共事業がらみや、為替差益で儲かっちゃった会社は利益が出てるうちに大量採用しちゃおっかな(後で振るい落とし&リストラするの込みの採用)等々で、今が特にややこしいとは思います。
そのへんはさておき、飲食関連小売については、バイトが足りない大きい理由の第一に、コンビニや飲食のチェーン店が出店強化してる、ってのがあります。
出店強化する理由は、コンビニだと店舗当たりの売り上げが落ち込んでるから売上を伸ばすには店を出すしかない、ってのと、あと「余所に出されてシェアを奪われるぐらいならうちが出す」みたいなドミナントの理屈や大量仕入れ・ロジスティックス管理上の理屈の話とかあります。
お店の数は増えてるから人手が必要です。それでバイトの数が足りません。
その結果バイト代が上がるから良いじゃないかって?
残念。セブンイレブンやマクドナルドのような大手フランチャイズチェーンの場合、人件費はチェーン店の本部が払うのではなく個々の店のオーナーが負担します。この手法を使えば、本部は売上さえ立てればマージンで儲かるので、店舗当たりの売上とか人員あたり売上のような費用対効果(この場合は労働生産性に直結しますね)は二の次で出店強化したほうが良いという理屈になり、人件費増はフランチャイズ店主の側に負担しわ寄せされます(ちなみにマクドナルドの原田社長の「経営を立て直した」の中身のかなり大きな部分は「直営店をフランチャイズ店に切り替えることで、負担を個別の店舗のオーナー(元本社社員)に押し付けた」ことで得られたものだったりします)。今話題になってる某牛丼屋の場合は全部直営店ですが、そのかわり各バイトとそれぞれ業務請負契約してるから残業代払わないという理屈、つまり各バイトがそれぞれフランチャイズ店主ですよ、みたいな話をする。構造的には同じです。
どっちにしても人手不足になればバイト代は上がるから良いだろって?
残念。バイト代を経営資源から払わないといけない個人経営レベルの飲食店や小売店は、商品展開力や宣伝力等々で大手にかなわないのみならず、そういう労使契約のスキマを突いて間接的に人件費を削りまくる大手と競争してしまったら、高騰するバイト代を負担することもできないため、先に潰れてくことになります。上記のような大手チェーンの労働問題の構造は温存されたままで。
某牛丼屋が多少業績を落とし時給を数十円上げたところで、まとめサイトが煽り記事を作成してアフィを稼ぐだけに終わり、問題は何も解決せずに先送りされ中間層が削られまくっていわゆる貧富の差が広がりまくり、企業の力関係も広がりまくり、物価は上昇するけど賃金上昇はフッツーにそれに追いつかないね、って話になるでしょう。リンク先の人含め、この先の経営者が現状の展望で本気で生き残るにはっていうと、自分がブラック化するのが最適解、となる気がします。どうせ、あいつらバカだから説明しても理解しようとしないんだ、だったらバカでもできる仕事をバカにあてがってバカを安くこき使うことを考えたほうがバカにも俺にも幸せじゃないか、それが賢い経営ってもんだし、問題解決できる立派な経営者ってもんなんだ、とかなんとか。
そんなギリギリの商売、大手チェーンだろうと他の競合店を潰したところで大して長続きしないだろうって?
そうです。だから大手はスクラップ&ビルドしまくってるじゃないですか。あれは細かい地域レベルで「儲からないから閉店」を繰り返してるんです。ちなみに開店資金も閉店資金もフランチャイズオーナーの稼ぎから差っ引かれたりします。フランチャイズチェーンのヤバいところは、たとえ契約してるうち9割の店舗オーナーが生活できてたとしても、残りの1割の儲からず失敗した損失を個別のオーナーが負担しなきゃいけないことです。その分だけ、大手は失敗を恐れずチャレンジできます。リスクマネジメントレベルで大手と個人店舗ではそんだけ差があります。大手チェーンが閉店するまで地元の個人店主が頑張ればいい、なんて言えるわけがない。
中間で搾取されてるオーナーが使い潰されたらフランチャイズも成り立たないだろって?
残念。フランチャイズオーナーになりたい人は、けっこういます。ネットでヤンキーだのDQNだの言われまくってる人たちに開店資金を利息つけて貸しつけして、開店させちゃえばオッケー。開店資金程度ならマージンで回収できます。
そんなん国が取り締まればいいだろって?
本気で言ってる? 法律がそういうふうになってない、ってのも含めて、そっちは一朝一夕でどうにかなる話じゃないです。少なくとも某牛丼屋をネットで嘲笑ってれば解決する話じゃない。高度成長期には今よりもっと人手不足で、っていうコメントがありましたが、今と昔じゃ事情が違いすぎます。大ざっぱに言えば、昔は「もっと成長する、もっと儲かる」という前提で人手不足でしたが、今は「先はない、今のうちにかっぱいどこう、寡占体制を作ろう」という前提の人手不足です。
あとまあ、おまけの話になりますが、「細々と長続きする中小規模の店」は、「経済成長」の観点から歓迎されないんですよね。金の動きがトロいから。
「経済成長」するのに手っ取り早いのは土地から建物から全部新しく取引されて店がどんどん出来ることで。つまり大手がスクラップ&ビルドしてくれるのが短期的にはすごく経済成長してることになります。そうすると、不動産取引が一番金の動きが大きいじゃないですか。今どきだと三井不動産みたいなとこが工場跡地をショッピングモールにするのが錬金術的には良いわけです。モールが中長期的に売れないような立地であっても関係ない。
そういうのは今どきだと、ショッピングモールのハコだけ作って不動産投資信託で証券化して、商用で家賃収益が見込めますよという名目で債権を売っちゃう、という錬金術があります。最初だけ客が入るけど、そのうち次から次に競争でモールを作りまくって前のモールの集客力が余所に奪われ、高い家賃を払ってたテナントも撤退して次に移る。損するのはREITを組み込んだ債権を薦められるままに買っちゃった年寄り、とかそういう。年寄はさておき、テナントが出てって空いてるモールはどうするか。仕方ないから家賃を下げてテナント募集する。そこにチェーン展開の店が入居してく。
そんな感じで、実需と関係なく賃料を稼ぐための不動産物件が開発され続ける仕組みがあります。つまり、住宅にしても店舗スペースにしても過剰感とか関係なく不動産とか土建とか証券業とか諸々の都合でハコが作り続けられる仕組みがあって、その供給過剰のハコが小売の現場の過剰感を後押ししてる。
それでも給与が上がるんだから良いじゃないか、って?
こんなん、ずっと続くと思ってる? 定年退職した老人たちの貯蓄を使い果たしたら、あるいは海外の投資家が興味をなくしたらそれで終わり(つうか、もう終わりつつある)。使われない空き住宅と空きテナントしか残らない。ぶっちゃけ、「移民」は来ないかもだけど、空き家にいつの間にか勝手に住み着いてる、税金払わない人たちだけ、増えるんじゃないかしら。大手はそういう人たちを業者仲介して間接雇用してくんじゃないかなー。昔のドヤ街みたいな感じで。そんときは、彼ら向けの給与ランクがバイト時給の適正、ってことになるんじゃないですかね。そんなシチュに至って役所や組合が雇用を守ってくれると思います?
この与太話には、とくにオチも正解もないです。あえていえば、人間って、身体が成人に成長するだけで最低十数年はかかるわけですし、高度な生産活動を行えるだけの教育を受けるにもやはり最低十数年はかかるわけでして、その十数年の間の生存と教育を保障できないような社会構造や制度の変化の速度というのは、あまり良い結末を迎えないのではないかと思います。
■[twitter]2014年04月07日ログ
@oyomot: 第32週。三隈&卯月キタ。現時点で残るは浜風のみ URL
2014-04-07 04:59:54 via web